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ヒッヒッフー
しおりを挟む夕飯食べて、仲直りのエッチをしたら朝。姦しい中朝食を摂って仕事に向かい、朝から洗濯物を抱えて並ぶ客の中に見慣れぬ人を見付けた。明らかに平民では無い出で立ちのその人は、簡単に言うと光っている。白く光るマントの中は、これまた白く光る革の鎧を纏い、腰に提げた剣は柄から鞘迄白く輝き、金を配した鍔を一層輝かせていた。
「誰だ貴様は」
そう言って上から目線の女に、前に並んでいた主婦が振り返り、俺が此処の店主である事を説明してくれる。
「店主のカケルだ。凄いなソレ。よく貴族に召し上げられなかったモンだ」
「ふぅん、貴様も一応は同業、と言う事か。召し上げたければそれ相応の覚悟が要るだろうな」
欲しければ殺して奪い取れって事か。成程納得。
「当店は公共浴場より少しだけ値が張りますが、それだけの価値があると自負しております。たっぷりとお寛ぎください」
そう言い残し後ろに並ぶ主婦へと進む。あれ?
「パーティーメンバーは皆男なのか?」
「む、それを聞いてどうする。一人なら奪えると思ってか?」
「客の物盗ってどーすんだ。他のお客さん迄来なくなっちゃうだろ。同性の仲間がいるならお誘い合わせくださいねって事だよ。それに俺はコイツが気に入ってんだ」
冒険者は舐められたら終い。なので高飛車な態度は解る。だがこの鎧の価値が分からないのだろうか。
「良い皮なんだがなぁ」
「我が魔装には劣るだろう?」
「綺麗だよな。似合ってると思うよ」
「世辞か?」
「本心だ。それに魔装に認められなきゃ怖くて触れないもんな」
少ない露出箇所である口元が歪に歪む。嬉しいのを我慢してるんだな。
「ふん、詳しいじゃないか」
「俺だって魔剣くらいは持ってるからな。魔装は売りにくいから捨てちゃうし」
「ふはっ、面白い事を言う男だな貴様は。売りにくいから捨てる?面白い冗談だ」
ウケたみたい。事実なんだがなぁ。そして持ってるならば見せてみろって話になってしまった。
「持ってなくとも笑いはせんよ」
「まあ待て…」
『白い鎧の女以外は怖がらせないでくれ』
《念話》を飛ばし、形見を二振り取り出す。抜き身なので刃はこちら向きだ。
「ひっ!ななな何だそそれは!?やっやめ止めろっ!」
「止めてやれ。大事なお客なんだ」
形見の二振りに声を掛けると女は荒く呼吸する。
「認められないとこうなる。面倒だよな」
「あンた、ヒッヒッフーだよ?」「それ嘘だから普通に息吸いな」
背後に居た主婦達に支えられ、何とか立っている女は大きく深呼吸して落ち着いたようだ。
「し、信じられん…」
「これは大事な物だが、もっとヤバいのなんてコレの比じゃ無いぞ?知り合いがドロップしたヤツなんてその場で遠くに投げ捨てたからな」
「信じられんのは何故貴様がそんな恐ろしい物を持っているか…もそうだが、街の女が一人も怖がって無い事だ」
「意思が通るからな。他のお客さんを怖がらせないようお願いしたんだ。大事にすればする程、此方の事も察してくれる」
《念話》の事を言っても理解してもらえそうに無さそうなのでそう言い繕った。多分コレでも分かり合えるとは思うし。だが女は信じられないみたい。
「魔装の使い方は頭の中に入って来たよな?」
「何だそれは?そんなの貴様の魔剣だけだろう?」
やはり知らないみたい。知らずに守り通せてるのなら、腕は確かなのだろうな。
「多分だが、その剣や鎧も効果を持ってる筈だ。試してみるか?」
「試す、だと?」
殺気を当てるだけと言うが、討伐依頼をこなすような冒険者なら殺気を浴びない筈が無い訳で、この女も「そんな事で」と懐疑的。
「そこの原っぱに来てくれ。場所は空けといてもらうから」
「お!久しぶりに旦那の手合わせが見れるってんだね?」「最近は冒険者も行儀良いからねー」「勝てないもん、したくないよ」
「手合わせじゃ無いからな?」
「ふふん、負けるのが怖いか?」
そりゃあどんな効果があるか分からん武器と戦うのは怖かろうよ。
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