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運が良かった
しおりを挟む「畏まりました。それでは…」
畏まった職員に場所と大きさを聞いて穴を切り、煉瓦の枠を嵌めて後は職員に任せる。明かりが入るようになった内部へ入り、雪の積もる床を削り、巣棚を三面に取り付けた。
「孤児院と言うより別棟に見えるな」
「はい」
「これからは早目に用意致します」
作業が終わり、卵を一つもらって鳥舍を離れる。
「その卵、如何するのですか?」
「如何と言われても、食うのだが」
「はぁ…」
「育てて我が国で…とでも思ったか?」
「流石に一羽から始めるのはどうかと」
「鳥の養殖をするならその土地に居る鳥が良いよ。寒い所の鳥を温かい所で育てても良い事無さそうじゃん?」
「私には分かり兼ねますね」
雪積もる原っぱに小型UFOを出して乗り込むと、調理道具を取り出して試作を行う。とは言え鶏卵と変わらぬサイズの卵が一個。大した物は作れない。
《洗浄》した鳥卵をボウルに割り入れる。白身のある卵だ。産みたてだからか黄身が鳥の形をしていない。良かった。
「お上手ですね」
「さて、何作るかな…」
一先ず焼き鍋を温めて、その間に卵の処理。黄身と白身を別にして、黄身は塩と香辛料で溶き混ぜる。白身は泡立ててメレンゲにした。メレンゲに黄身を何回かに分けて入れて混ぜ、油を敷いた焼き鍋にボテボテッと注ぐ。焼けたら浮かせて引っくり返し、薄黄色のフワフワが出来た。皿に乗せ、フォークとナイフで頂きます。
「おおお毒味をっ!」
「俺が作ったモンに毒味も無いだろ」
仕方無く、取り皿出して分けてやる。何でスプーンを用意してんだ?
「コレは毒味の嗜みです」
銀製だし、分からなくもない。
「…はむ…おほ、口の中で消えましたっ」
「殆ど空気食ってるようなモンだからな。あむ…」
少し塩味が薄い。生の状態で味見出来なかったからだな。お塩パラパラ。お前も要るのね。
「大変美味しゅう御座いました」
「お粗末様でした」
卵自体の味は鶏卵と比べても差を見出す事が出来無かった。あくまで俺の舌レベルでだが。きっとサイズによる物だと思う。ダチョウくらいに大きければ味も変わるだろうし、白身の色も関係あるだろう。ペンギンみたいに透けてたらどんな味かも想像出来ん。運が良かったと言うしか無いな。
「カケルさぁ~ん。お楽しみでしたねぇ~」
ハークの自室に戻って来ると、リュネがニコニコ《威圧》して来る。
「鳥舍の増設して来ただけだよ?」
「美味しそうなモノ、食べてましたねぇ」
「見てたら来たら良かったのに…」
因みにメイドは部屋に戻って直ぐ逃げた。流石暗部だ。
「所で一人なのか?」
「何人か見てますが…まあ一人ですねぇ」
「畏れ多くて近寄れないんだろ」
「…そう言う事にしておきまぁす」
ハークと少年隊はブルランさんと練兵場へ。アルアは親子の語らいだとさ。空気の読める龍はぼっちなうだった訳か。よしよしなでなで練兵場に行こうねー。
「うわーん兄貴いいい!」「やられたーっ!」「大人気ねーよー!」
少年隊の姿を探して《転移》すると、俺の気配を感じた三人が泣き付いて来た。ハークもボコボコにされてるし、ハークが強くなったのでは無さそうだ。
「流石ハーク王、ボコボコにされて泣かないとは立派になられましたな」
「う、うん…僕、泣かな、ひっく」
泣いとるがな。四人にササッと回復掛けて、おやつの干し芋くれてやる。蒸したレッグルートを干しただけの物だが、ねっとりしていて美味いのだ。
「ハークとバトってたら騎士が来てよお」
「ハークの仇ーって」「俺らボコボコ~」
「騎士?貸切状態じゃん?居ないぞ?」
「爺やが怒って追い掛けてった」
「珍しい事もあるモンだ」
「子供相手に真剣使うなーってなー」「しっかしタイマンじゃ敵わなかったぜ」「手足が足りな~い」
「真剣相手にボコボコで済んで良かったよ。お前等は木剣か?」
「そりゃーハークとヤってたかんな」「俺なんて木の棒だぜ?」「枝~」
それ枝じゃ無くて木っ端。そりゃあブルランさんも怒るわな。
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