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ブーメランが刺さる
しおりを挟む静かにしていろと言われた手前、デュセルに目配せして感触を得る。
「うむ。この者はカケル・カリバ。冒険者の成りをしているが、陛下とも親交のある貴族である」
「カケル・カリバ様、ですね。承知しました。手配を済ませます故、今暫くお待ちください」
「うむ」
デュセルは応えると門の隅へ向かう。待ってる間に後続が来たら困るからであろう。来る者は見えないが、予防線と言うヤツなのだろうな。それから暫し経ち、兵士?騎士寄りの格好をしたのを引き連れブルランさんがやって来た。
「デュセル殿に、なんと、カケル殿ではございませぬか。お二人を門前に待たせるとは何たる非礼。どうか、どうかこの命一つでご容赦願いましてございます」
膝を折り、持ち上げ過ぎな挨拶をして来るブルランさんに、デュセルもグイグイ引っ張り上げる挨拶で応える。貴族!面倒臭ぇ!
「ブルランさん、命が幾つあっても足りませんね」
城の中へ入り三人となると漸く俺も口を聞ける。
「爵位を出さずカケル殿を持ち上げたのだ」
「命の落とし先は弁えてございます故。ふふ」
門番程度に爵位や偉さをひけらかすのは無作法って事か。
「カケル殿なら直接王の間へ《転移》なされても良かったのでは?」
「それは流石に失礼だろう?」
「お喜びになられますかと」
「僕もーって、拉致させられる未来が見えます」
「確かに」
ブルランさんに連れられて、着いたのは謁見の間では無く直接王の間、ハークの自室である。デュセルは若干緊張してるな。きっと謁見の間より奥には立ち入った事が無いのだろう。
重厚なドアを守る二人の騎士の間に立ち、ブルランさんがノックをすると、ドアが部屋側から開けられた。
「陛下、ブルランが戻りましたぞ。お喜び下さい」
「何で喜ぶのさー」
「俺が来たからだぜ?」
「えっ!?カケル!?カケルーーッ!!」
書類積まれる執務デスクを飛び越えて、十ハーン程の距離を飛び、ブルランさんを避けて俺の胸に飛び込んだ。倒れる社長椅子に舞い上がる書類。傍付きのメイドがワタワタして紙ペラを追い掛けとる。
「王たる者、常に周りに気を掛けろ。メイドさんが困っているだろう?」
ブーメランが刺さるが気にしてはいけない。
「う、うん。二人共ごめんね。僕が片付けるから」
「陛下、お言葉を」
「う、うむ。私が片付ける」
俺の胸から降り立って、散らばった紙ペラを束にすると再び胸に飛び込むハーク王陛下。とんだ困ったちゃんだぜ、なでなで…。
「ふむ、卵ですか」
「カケルが欲しいなら、僕鳥焼き我慢するよ?」
ソファーに着いて、要望を述べるとブルランさんは考える素振りを見せる。ハークのご飯を我慢させるのは心が痛むな。
「陛下、卵を提供するとなりますと、成長し、親鳥となる鳥の数が減ります。食卓に鳥を上げる事が出来無くなると同時に、元の状態に戻す迄の時間、我慢なさらねばなりません。如何に?」
ハークはぐぬぬと目を伏せる。島の住民とその近辺が満足出来る量となると、その数最低七十個。結構な数が欲しいのである。城で飼育している鳥は約十日で一個の卵を産むので、その数を確保するのに大体三日は掛かると言う。失った分が新たに産まれる迄は繁殖に専念させる事となるので、それ迄親鳥を食べる事は出来無い訳だ。何より雌雄の判別が出来てないので、産んでタグを着けられる迄締められない。飼育のノウハウ、品種改良、鑑定士不在。これが地球との違いである。
「気になったんだけど、飼ってる鳥って飛べるよね?」
「はい。飛ばれぬよう、羽を切っております」
俺の問いにメイドさんが答える。
「以前鳥の飼育施設を見た時、小さい家で集団生活させてたけど、コレは空からの襲撃に備えての事かな?」
「はい。空からの肉食鳥に襲われます。カケル様は物知りですね」「何処で見たのやら」
「これ」
「「失礼致しました」」
嫌味を咎めるブルランさんを手で制し、質問を続ける。
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