上 下
1,399 / 1,519

歯応え大好きシルケ人

しおりを挟む


 三人の検診は異常無し。体に歪みは出ているがこれは産後に治すモノだ。検診を終えて、ラビアン達が淹れてくれたお茶を頂く為、テーブルを囲んで席に着く。ソファーみたいに深く座る物は楽な分立ち上がり難いそうで、近頃は専ら椅子に掛けるそうだ。雑木で低反発座布団を作ってあげたら喜んでくれた。

「それにしても、羽振りが良く見えますね」

「加工が良かったんだろうな。すっかりビカビカになっちゃって」

シャリーの一言で俺の鎧の話になった。

「貴族だって此処迄気振った装備を纏った者は見た事が無い」

「殆ど金銀ミスリルですからね」

  「コレがあのグリーン氏リザルトですか」
隣の国の方には居るのだから素材として出回っていてもおかしくないのだが、フラーラ達この国のメイドは見た事が無いと口にした。であればこのビカビカはエメラルダスの加工に依る所が大きいのだろう。因みに大陸の違うシャリーはイゼッタの家での経験が粗全てなので、布と金属、それと普通の革しか見た事無かったそうだ。
日々の話や愚痴を聞き、女達の話に混ざっていたが、カロ邸の夕食は少し遅い為、準備が始まるのを見て島へ戻る事にした。案の定、此方では既に配膳が始まっていて、お盆を提げたテイカが一番に寄って来る。

「お帰りなさいませ…クンクン、女の匂いが知ってる方のしかありませんね」

「仕事の後はメイド達の検診して来ただけだもん」

「もしかして体の具合が?」

「話に混ぜてもらってただけだもん」

「女の匂い付けたげるの!」「私もー」「カケルさまー」

カラクレナイと兎少女達が四方から抱き着いて、マーキングされる。抱き返してなでなでなでなで。

「服がやーらかいの」「あったかいですねー」

この柔らかさだと服扱いだよなやっぱ。背中に顔をグリグリする子を浮かせ座椅子に掛けると、左右に二人、膝に二人が自分の場所を確保する。

「食べ難いんだけど」

「食べさせたげるの!」「「「です」」」

そう言われたら自由にさせるしか無い。今日は薄切り肉とレッグルートの炒めに豆のスープ、温野菜サラダにソーサー。スープ以外は女子等に給餌された。

「カケルー、あ~ん」

「カケルさま~、ギギンですよ~」

肉は殆ど来なかった。皆自分が食いたくない物を俺にあ~んしよる。途中リアに窘められて改めていたが、ギギンなるオレンジ色の根菜はラビアン達なら好物では無いのか?味も似てるし。

「歯応えが無いので…」「ポリポリが良いんです」

兎も人も、歯応え大好きシルケ人。好きな物でも煮たのは嫌な訳か。軽く湯掻く程度なら良いかも知れんね。
夜の部の仕事に行き、女将連中と仕事終わりの冒険者にカナブン鎧の事を色々聞かれた。女将連中は商材の匂いを感じ取ったのだろう。冒険者は基本的にオンリーワンを求めるから、他者との差別化を計りたい意思を感じた。上手く折り合い付けて欲しいものだ。
そんな二つの勢力を感じさせるのも俺の仕事だ。身体中から生えたアイツと一つになって喘ぐ女達は皆一心同体。事実、入浴施設が出来た前後で冒険者と住民の仲はかなり良くなったと家政婦組合の上役である肉屋の女将は言う。
冒険者と店屋がこの施設を通して顔見知りになると、此処を使ってない冒険者連中とも同調が生まれたらしい。値引きだなんだのゴタゴタも減り、何れ加入する家政婦組合の話を聞いたりして仲良くなってったんだと。
男の方は知らん。公共浴場で筋肉ピクピクしながらコミュニケーション取ってるんだろう。


 翌日、翌々日。三日も経つと緑皮の噂も広まりエメラルダスが嬉しい悲鳴を俺の職場へ聞かせに来た。

「あの皮出せるだけ出して!もう手持ちじゃ紐しか作れないよー」

そんな事言われてもなぁ。だがエメラルダスには友恋フレンズ少年隊も世話になってるし、忖度してもバチは当たるまい。取り敢えず落ち着いてもらい、飼育係に話を通すと伝えた。飼育係の名を出したら大人しくなったよ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。 どんなスキルかというと…? 本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。 パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。 だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。 テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。 勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。 そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。 ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。 テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を… 8月5日0:30… HOTランキング3位に浮上しました。 8月5日5:00… HOTランキング2位になりました! 8月5日13:00… HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ ) 皆様の応援のおかげです(つД`)ノ

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第六部完結】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

処理中です...