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井の中の蛙

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 気の無い振りしてこっそり《感知》で外を見る。初め城の正面に見えていたのは実は裏口だったようで、狭い跳ね橋の前でコーラーを外すと、綱が着けられ跳ね橋を牽引される。コーラーは人の食料にされるらしいし、トカゲ共も食欲中枢を刺激されてしまうのだろうか。

「中の者、外へ」

綱を巻き終え、跳ね橋が上げられると革鎧を着込んだ兵士から声があり、名を知らぬ女がドアを開けて外に出る。

「カケル、行くのだ」

二キャンバルの四からの合図で外に出ると、革鎧十人程が先端がトゲトゲした棒を構えて待っていた。この国にそんなに早く届けられる伝達手段なんてあるのだろうか。

「俺何かやっちゃいました?」

「この入口を通る者は何かしらの咎を負っているのだ」

成程。

「我が同胞を殺しておいてよくそんな口が利ける」

棘々棒を割って入って来たトカゲ顔が減らず口を叩く。

「力量差があり過ぎたからだな。それに、敵対しなければ此方も敵対しないんだぜ?しかしよく俺が殺したと知っていたな。覗き趣味でもあるのか?」

「達者な口だな。同胞の動向を察せられるのが竜人の力だ」

「井の中の蛙だかわず な」

「かわず?よく分からん事を。連れて行け」

トカゲ顔は背を向けて歩き出す。俺が敵なら命は無いぞ?棘々棒でツンツンされて城の中へと移動する。二キャンバルの四達とは此処迄だ。

明るく、それなりに清潔感のあった一階とは違い、長い螺旋階段を下った先は地獄の様だ。暗く、ジメッとしているのは置いといて、とにかく臭い。排泄物と血肉の腐った様な匂いが下に行くにつれて濃度を増し、棘々棒を構える女達が噎せる。俺は《結界》を纏って匂いを遮断したが、健康に悪そうな空気が少し肺に入ってしまった。回復掛けとこ。

「お前等、無理はするなよ?」

「ならば仕事を増やすな…ゴホッ」

汚いドアを棒でノックし、ノックして、ガンガンと突きを連打しやっとドアの鍵が開かれる。

「我等は此処迄だ。後は中の者に従え」

「ご苦労さん。早く上に戻るが良いよ」

入室し、ドアの鍵が締まると女達は足早に逃げて行く。

「ふ、ふへっ…よく来「《洗浄》《洗浄》《洗浄》」ひやっ!ひっ、あばっ!」

臭い部屋より臭くて汚い生き物が、俺の直ぐ横で臭い息と謎の音を発して来たので《洗浄》三連。が、泥々の少年隊をキレイな天使にした《洗浄》三連も此奴の年季の入った汚れには分が悪いと見える。匂いの消えぬ衣類を《散開》で消し、蹲る肉塊に容赦無く《洗浄》しまくった。

《洗浄》された残りカスが怯えた目で俺を見る。それは蛙の様な顔をした餓鬼であった。鱗は無く、肌色は人の物なので多分人なのだろうが、見目麗しく無さ過ぎる。蛙の顔に、歯抜けで白髪も疎らになって、体は痩せて腹だけが出っ張り、胸は干し柿状態だ。流石にコレは孕ませたくない。《結界》に閉じ込めると《威圧》の棒を二つの穴に突き刺して、最大刺激を与えた。

「あの邪神がこんな者の存在を許すとは思えんがな…」

イゼッタ曰くフツメンの俺を、不細工と罵って処分されたアレは、人の子も魔物も隔て無く愛していた筈だ。ブフリムやゴーラですら、イケメンとは言わない迄も味のある顔をしてるのだ。アレの目は地下に迄届かなかったのか?それとも臭くて目を背けていたのか?

 考えても仕方が無いので、静かになった通路を進む。数ハーンも進まぬ内にドアがあり、中は此処より地獄であった。
生き物の体組織が付着して固まった床に壁。そして尖っていたり棘の付いた器具には生死不明の二本足が設置されている。四肢をデカい釣針で貫かれて吊り上げられているモノも動く気配は無い。
二キャンバルの四達は知らないのだろうな。城に連行された者の末路を。

痛々しい姿のモノ達を浮かせ、器具を外すと《洗浄》して回復を掛ける。切れた手足が生えて来る俺の《治癒》が効かない者が居る。つまりそう言う事だ。ダメだった者を《散開》し、部屋と一緒に《洗浄》した。何度も、何度も…。




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