上 下
1,383 / 1,519

光ってる

しおりを挟む


 牢屋自体、基本は同じ大きさで同じ造り。十人くらいが横になれそうな広さで、これが四部屋。奥に二部屋独房が向かい合わせであり、厚い木の扉が付いていた。

「こんなに部屋要るのか?」

「要らんが、かと言って無い訳にもいかんだろう」

「ナバルの一も休む時間だ。俺は此処で大丈夫だよ」

「そうか。報告を上げたら私も休む。決して無益な争いだけはしないで欲しい。お前を失うのも、友を傷付けられるのも嫌なのだ」

「そうだな」

塞いでいた煉瓦を消してやると、ナバルの一は上へと帰って行く。階段も掃除したかったが仕方無い。再び煉瓦で階段を塞ぐと、部屋の模様替えに取り掛かった。
先ずはフロアの物を全て《収納》。独房も取っ払い、百三十平方ハーン程の空間となった。次に、歪んで削られた壁を平に切り取り、キレイに面出し。壁を切ったら光が消えるのかと思ったが、切った方が明るくなった。コレ、岩盤が光ってるのか。放射線とかじゃ無いよな?切り取った壁を取り出して練り練りしても光は失われなかった。初めて見るファンタジー鉱石に少し感動。
階段から直接部屋なのはどうかと思うので、階段と部屋の間を二ハーン程開けて壁で区切る。煉瓦だと暗くなっちゃうのでフロアの奥から切り出して壁とした。倒れる事は無いけど目地止めしとこう。出入り口を開けて、門扉は蝶番作るのが面倒なので引き戸にした。待合室には椅子代わりの硬めマットを並べとく。

さて、中の模様替えだ。奥行×十三程の部屋なのであまり区切りたくないな。入って左を浴室にする為一段削り、浴槽と脱衣場、脱衣棚を造り、排水用の浅穴を開ける。浅穴の中に《浄化》のクリスタルもどきを設置したら水を注いで湯を沸かす。これで牢屋一つ分使ってしまった。入って反対側にはトイレを設置。穴掘った分だけでは光る岩石が足りないので奥から少し持って来て、洋式トイレの個室を五つ作った。此方も《浄化》のクリスタルもどきを設置。手持ちが後二つしか無い。手洗い場を右の壁沿いに五つ設置したが、《浄化》のクリスタルもどきを使いたくなかったので配管をトイレに伸ばして済ませる。

水周りが終わったので次はベッドだ。奥の五×十三ハーンに分厚いマットを敷いて、枕と掛け布団を沢山作って終了。空いた場所には雑木ソファーとテーブルを設置し、天井に空調用の《浄化》のクリスタルもどきを貼り付けて部屋が完成した。
手馴れたもので、一オコン掛からなかった。流石俺。階段を閉ざす煉瓦を回収して寝た。

「おいっ!起きろ!?」

 俺の眠りを妨げたのは、俺の知らない女だった。起こした女の他に二人、奥にもう一人居て、起こした女はフレイルを突き付けて声を張る。

「貴様っ、コレはどう言う事だ!?」

「ん…」

「寝惚けて無いで答えろ!」

「暗くて臭くて埃塗れの部屋を、キレイにリフォームしたんだが」

「此処は牢屋だぞ!我々の部屋よりキレイにっ、では無くっ、勝手な事は許さん!」

「キレイな湯の風呂と臭わないトイレ作ったのに」

「そう言う問題では…」

「所で、俺に用があって来たのだろう?先ずは話をしようか。トイレと風呂の確認が先でも良いな」

起き上がり、ベッドから出るとフレイル女は警戒するが、弱い《威圧》で制すると、背中を押してトイレへ誘う。

「何だ、この恐ろしさは…隊長殿…」

「皆も来てくれ。俺はカケルだ。君の名は?」

「あ、あ、アルシュの、二…」

「コレがトイレだ。入ってみろ」

「は、はい……わ、ドアが勝手にっ何故勝手に閉まるのだ!?」

「少し傾斜を付けてるだけだ。中はどうだ?皆も見てくれ。用を足してくれても良いぞ。尻は勝手にキレイになるから拭かなくても良い」

「そんな馬鹿な」「隊長殿、コレは罠です」

「閉じ込めて足止めでもするつもりか?」

「隊長殿、内鍵も外鍵もありません」

中に居たアルシュの二が声を上げ、中から出て来た。ズボン半分脱いでいて、致すつもりだったようだ。









しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

アレキサンドライトの憂鬱。

雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。 アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。 どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい! 更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!? これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。 ★表紙イラスト……rin.rin様より。

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

【前編完結】50のおっさん 精霊の使い魔になったけど 死んで自分の子供に生まれ変わる!?

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
リストラされ、再就職先を見つけた帰りに、迷子の子供たちを見つけたので声をかけた。  これが全ての始まりだった。 声をかけた子供たち。実は、覚醒する前の精霊の王と女王。  なぜか真名を教えられ、知らない内に精霊王と精霊女王の加護を受けてしまう。 加護を受けたせいで、精霊の使い魔《エレメンタルファミリア》と為った50のおっさんこと芳乃《よしの》。  平凡な表の人間社会から、国から最重要危険人物に認定されてしまう。 果たして、芳乃の運命は如何に?

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...