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トムヤムクン

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「お前がヘルメットを外せる場所は此処くらいでな、許して欲しい」

 ナバルの一は詫びるが、混乱を避ける為には仕方の無い事だ。メットを《収納》し、引かれた椅子に腰掛けた。

「い、今お食事をおも、お持ちしますね」

「私の分も頼む。後は先に休んでくれ」

「えー」「まさか」

「取調室で一人にさせる訳にもいかんだろう」

「ナバルの一、俺は大丈夫だよ。牢屋みたいな所があるなら、そっちに移動した方が俺的には楽で良い」

「汚いからダメですっ」

三アタリアの四が強く主張する。が、俺はそれを笑顔で制す。

「なら掃除しといてやるよ。住みやすくしても良いな」

「あ…」「確かに…な」

水場での現状回帰の様を思い出し、皆納得したようだ。

三人が取調室を出て暫し。パトトルの二が朝食を乗せたカートを押してやって来る。

「あ、また。こんなと、所で」

「私は断った、の、だがな」

「おっぱいを揉みたくなるのは男の性なんだ」

密室に、男女が二人、何も起きない筈も無く、机を挟んで向かい合わせに座っているとナバルの一のおっぱいに目が行くのは自明の理。ナバルの一の後ろに回り込み、服の上から揉み上げれば自然と服が肌けて生揉みしてしまうものなのだ。皮製でなければな。実際には《収納》で脱がしたよ。

「カケル。私も空腹なのだ。出来れば、その」

「お前は良い女だな。食事にしよう」

言いたい事を理解するのが良い男と言う物だ。服を着せると席に着いて、並べられた朝食を頂く。
先ず目を引くのは、皮を剥いたタベルクサを筒切りにして茹でた物が皿に山盛り。これは主食だろうな。続いて葉っぱのスープ謎肉入り。この二皿がこの国での一般的な朝食と言う。茹でタベルクサはほんのりと甘く、サクサクとした歯応えで水分を含む。甘味の乏しいシルケでは有難い食材だろう。そしてスープはタベルクサの葉と、細切れの謎肉。塩味ベースの此方はタベルクサの仄かな甘さに酸味が加わり、謎肉の脂肪が豚肉っぽく、クセの無いアッサリしたトムヤムクンって感じ。クンが海老だからトムヤム謎肉か。

「口に合ったようだな」

「初めての食材だが、これは美味いな。此処に永住を決めた理由も頷ける」

水場から帰る時に畑を見たのだが、苗を植えてから何度も収穫された形跡があった。刈り取っても脇芽で増えるのは農業的に楽であり、成長も早いのだろう。そして、シルケ人には知る由も無いが、栄養価も高い筈だ。

 食事を終えて、牢屋へ移動。取調室を出ると、さっきより女の数が増えている。食事を終えた連中なのだろう。

「あまりジロジロ見ない事だ。そこの階段を降りろ」

メット被ってるのに何故バレるのか。頭が動いてたか?階段前には二人の守衛。同じ背格好で革鎧。双子か?

「上官殿、その者は?」

「咎は無いが報告を終える迄一時的に入ってもらう予定だ」

「構いませんが、良いのですか?」

「お召し物が、汚れてしまいますが」

声が違うので双子では無さそうだ。やはり青鎧は一目置かれているみたいで、二人は俺の事をお偉方と勘違いしているように見える。

「普段からしないのが運の尽き、だな。さあ、入れ」

促され、階段を降りる。薄暗いが何とか見えるのは外のと同じ仕組みだろうか。埃が端に寄せられただけの階段を降り切ると、埃舞うフロア。これは体に悪いぜ。

「中に人は?」

「今は私達以外は誰も」

「先ずは掃除する」

階段の入口を煉瓦で塞ぎ、二人に《結界》を纏わせると部屋全体に《洗浄》を強めに掛ける。一瞬、フロア全体を水が満たし、次の瞬間には塵一つ無いフロアに生まれ変わった。

「…なんと言う事だ」

「埃が舞い、振り積もった埃が長年掛けて積み重なって居たフロアが、まるで新築の様。薄暗かった外観も、心做しか明るくなった様に感じます。澱んでいた空気も一変し、そこはもう、以前の牢屋とは別次元になりました」

「あ、ああ。正にそうだな…。匂い迄消えた」

牢屋の廊下を歩いて各部屋見て回る。






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