1,368 / 1,519
大人の話
しおりを挟む午後になり、窯に火を入れ買い物に出掛ける。ステレオペアの他に、サミイとリアが付いて来て、二人とはママ上殿の所で別行動となった。
「お土産待ってますね!」
串焼きか。どうせネーヴェに強請られて買うんだろうなぁ。
「くしやき~、くっし~、くしやき~」
食う気満々だ。諦めよう。露店街を素通り出来ず、二人に二本と六本、後で買うからと二十本の予約を入れて着いたのは建具屋。久しぶりだけどミズゲルの核、取っといてくれてるかな?
「客だぞー」「客~」「きゃく~」
「いらっしゃいませ。久しぶりですね、カケルさん」
俺の事を覚えていてくれたようで、店の主が笑顔をくれる。
「ミズゲルの核、溜まってたら全部買うよ。それとゲル版を一枚買わせてくれ」
「核はたんまりありますが、ゲル版ですか?」
「今こんなのを作ってるんだ」
そう言って失敗作を見せてやると、手に持ち、眺め、指で弾いて成程と呟いた。
「強度が出なくて既製品を買いに来た訳ですな」
「ああ。コッチでも板からやるつもりだけど、プロの素材で比べないと善し悪しが分からんからね」
「それならずっと当店の商品を使って貰いたいですな」
「納得出来る状態で完成したら代わりに作って欲しいんだ。俺冒険者だし、冒険しなきゃだから」
「…良いでしょう。投資代わりにゲル版は差し上げますよ」
「その時は設備の強化を手伝わせてもらおうかな」
「詳しくお聞きしても?」
「カケルー、それ長いやつ?」
あ、イゼッタが飽きた。ネーヴェは売り物のソファーに寝そべってる。お買い上げ?しませんから。取り敢えず二人は寝具店に帰し、店主と大人の話をした。
串焼きを買って寝具店に戻ると、女達がおやつを食べていた。
「おかえり~」「くしやき~」「旦那さま、おかえりなさ~い」「お帰りなさいませ、貴方様」
一人違う事言ってるな。
「いらっしゃいませ、カケル様」
「お帰りなさい。今お茶を淹れるわ」
メッツくんを抱いて真面目モードのエージャに、ママ上殿。親父殿の気配は無いな。
「親父殿は?」
「パパは仕入れに出てるって」
「ええ、昨日買い付けに」
「護衛は付けてるの?」
「そりゃあもう。命には替えられませんから」
親父殿の分も買って来たのにな。まあ余らせても誰かが食うか。
「それで、カケル様」
「何でしょう?」
真正面に見詰めて来るママ上殿に言葉が丁寧になる。
「今夜、お情けを頂きたいのです」
「こっちこそ、待ってたけど…、サミイ」
「ママに、赤ちゃんください。元気なママに戻って欲しいですっ」
「…そうか。ママ上、ママ上殿の体は充分元気だ。親父殿と致していれば必ず子は成せる。弱ってる心に付け入るのは嫌だが、それでも俺はママ上殿を孕ませたい。それでも良いか?」
「ええ。あの人の子も産むつもり。けど三人目は、カケル様の子種で産みたいの」
ペニスケが震えた。妻達は困った顔で息を吐く。お茶の時間もそこそこに、寝具店は閉店となった。
が、帰ってセックスとはならん。容器の試作をしなければ。「私と仕事どっちが大事!?」なんて言われた事無いが、何方に時間を割くかと問われれば先に仕事を終わらせるのが良いと、俺は思う。作業場は時短してないからな。
買って来たゲル版を型の大きさに切り取り、取り敢えず容器と蓋で十枚ずつ。《結界》を纏い、火を止めた窯の中に入り丸板の型を取り出して試作用に一つだけ蓋を取る。取り出された少し柔らかい丸板を容器の型に嵌め、再び釜へ。切り出したゲル版も容器の型に乗せて窯に入れ、再び火を入れた。
「カケル様、冷たいお茶ですが…此処は随分暑いですね」
お茶を持って来たのはママ上殿であった。お客さんに何させてんだ?
「ママ上殿、ゆっくりしてて良いのに。それとさっき窯を開けてね。熱が漏れてるんだ」
「メッツもお友達と一緒ですし、家事にお邪魔する訳にも行かないので、する事が無いんですよ」
汗吹くママ上に俺は慌てた。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
追放シーフの成り上がり
白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。
前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。
これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。
ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。
ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに……
「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。
ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。
新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。
理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。
そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。
ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。
それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。
自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。
そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」?
戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~
ままるり
ファンタジー
女子高生、美咲瑠璃(みさきるり)は、気がつくと泉の前にたたずんでいた。
あれ? 朝学校に行こうって玄関を出たはずなのに……。
現れた女神は言う。
「あなたは、異世界に飛んできました」
……え? 帰してください。私、勇者とか聖女とか興味ないですから……。
帰還の方法がないことを知り、女神に願う。
……分かりました。私はこの世界で生きていきます。
でも、戦いたくないからチカラとかいらない。
『どうせなら便利に楽させて!』
実はチートな自称普通の少女が、周りを幸せに、いや、巻き込みながら成長していく冒険ストーリー。
便利に生きるためなら自重しない。
令嬢の想いも、王女のわがままも、剣と魔法と、現代知識で無自覚に解決!!
「あなたのお役に立てましたか?」
「そうですわね。……でも、あなたやり過ぎですわ……」
※R15は保険です。
※小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる