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怖い

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 島の女達が作った解毒剤入りスープの素は、我が家の食卓に並べても遜色無い程の味であった。だが問題はそれだけでは無い。解毒剤の効果が残っているかが一番の問題だ。
今回用意したと言う解毒草はバルタリンドの雑貨屋でサミイが買って来た。煎じて飲んだり、解毒ポーションを精製するのにも使われる素材なので効果は期待出来る。
腹を痛めて効果を確認するのは時間が掛かり過ぎるだけなので、《鑑定》で見て薬効を確認する。作り立てのペーストは勿論、スープにも解毒の効果は確認出来た。

「どうでした?」

「熱には強いみたいだな。薬効はあるみたいだよ」

わあっと喜ぶ制作陣。だがまだ終わらんのだよ。ペーストの皿とスープの入ったお椀を持って厨房横の倉庫へ向かう。

「何するのです?」「ご褒美ですか?」「一列になりましょう!」

倉庫の入口に整列するが、俺はスルーし荷物に隠れた箱を取り出す。

「ネーヴェ様が作られた箱でしたっけ?」

惜しいな。俺が作ってネーヴェが付与した箱だ。

「以前氷砂糖や甘納豆を作った時に使った、時短箱だ」

「日持ちするかを確かめるのです?」

「その通りだ」

細かい時間は分からないが、数ピル入れとくだけで一日経っちゃう凄い箱だ。これに入れて二リット程したら取り出して、薬効が確認出来れば大丈夫だ。

皿とお椀を箱に入れて二リット。取り出された物の内、スープはダメになっていた。白い膜が張ってしまい、お椀毎処分する事に決まった。皿に盛られたペーストの方はと言うと、水分を減らしてあるからだろうか、腐敗せず、薬効も確認出来た。

「薬効はあるが、飲むのが怖いぜ…」

「「「お願いしまーーす」」」

入口に並んでいた兎共がサーッと離れ、残るは俺とサミイのみ。

「…旦那さまぁ」

抱き締めて撫で回し、チュッチュする程俺の妻は可愛い。兎共が羨ましそうな目で此方を見ている。

時間が経ちまくったペーストを新しいお椀によそい、お湯を注ぐ。良い香りなのが怖いが、俺の体ならスキルで直ぐに治せる。お湯も熱々に沸かし直してもらったし、雑菌は滅んでいる筈だと心の中で言い聞かせる。
熱々スープを啜り、嚥下され、香りが鼻に抜けた。

「…美味いと思う」

「良かったぁー」

近くで喜ぶサミイに、遠くで喜ぶラビアン達。

「獣人の鼻でも違和感無いか?」

「大丈夫でーす」

今一信じられんが嘘は言って無いようだ。

「旦那さま、売り方はやっぱり量り売りですか?」

「それが良いな。冒険者用に小瓶?小さい壺みたいなので小売しても良いな」

「最初は入れ物持ってないでしょうから、それも売ったら良いですね!」

商魂逞しいが、ソレ作るの俺だよな?

一家四人と想定し、三日分の量を割り出してもらう。それに合わせてツルツル煉瓦で容器を作る。が、陶器で無く、磁器で容器を作りたいので少し待って貰う事にした。
《収縮》すれば煉瓦も磁器の密度になる。が、ツルツル感は釉薬には敵わないのだ。リュネやネーヴェに頼めばテュンルテュンルの白磁になるだろう。だが白磁は人の力で出来る物だし、頼る訳にはいかんのである。

で、普段の生活の合間を縫って、草木灰を掻き集める。火をよく使うノースバーで集めたのだが、樵の女将に灰なんて何に使うのかと聞かれた。ガラスの原料だと言っても腑に落ちない様子だったが、撒いて捨てるだけの物なので譲ってもらえた。そして女将の紹介で何件かの酒場や宿を回って灰を集め、ヤリ部屋でお礼する。

「カケル様ぁ、偶には私等も相手しとくれよね」

「何時もこの家の前で立ち止まっちまいますよ」

「今迄の詫びも兼ねてたっぷり楽しもうな」

もっと頻繁に来ないと女達に悪いよな。ジョンはともかく、ハークには世話になるし、そろそろコッチに家を建てても良いのかも知れない。

女達を楽しませ、玄関から帰りを見送る。ママ様達が来ているのだろう。雪の街を歩く者は少ない。




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