上 下
1,361 / 1,519

全然違う

しおりを挟む


「名前忘れちゃったけど、コレ珍しかったのか」

「こっちには全然居ないからねー。知る限り、公都の北側の国に少し居るかな」

 生息域を離れないタイプなんだな。雑談を挟みながら、採寸したり服の仕様を話し合い、買って来た串焼きをくれてやって寝具屋に戻って来た。

「奥様、只今戻りました」

「カケル様と居たのね」

「露店街で鉢合わせてね。そろそろ昼飯の時間だし、島に帰ろうか」

「カケル~、串焼きのにおい~」

「ホイットニーさんの所ですね!」

「済まない。串焼きはエメラルダスへのお土産にしちゃったんだ」

「ぐえ~」「ぐえー」

龍語が上手くなったな。次は買ってやると言う事で諦めてもらい、島へと帰る。エージャは寝具店に置いて来た。

「あ、カケル様ちょっと良いですか?」

「なんぞ?」

食堂に着いて、昼飯迄茶でもとした所、厨房で作業中なラビアンが寄って来た。聞くと、蓋の閉まる容器が欲しいと言う。先日作ったスープの元を施設で売り出したいのだそうだ。

「売りたい気持ちは買いたいが、アレって《収納》してないと直ぐに腐っちゃうぞ?さっきママ上殿に持ってった分も大体一回か二回分だし」

「ですよね~」

「食事として提供するのが精々だろうな」

シルケでの長期保存の方法は、乾燥と塩蔵のみだ。庶民の手には届かない糖蜜漬けや、酢や酒みたいな発酵もあるが長持ちとは言い難い。広口のガラス瓶に磨りガラスの栓をして、水を垂らして煮沸消毒を施せば多少は持つだろうが、開けたら最後、使い切りとなる。そんな状態で売り出したら腹を壊して怒鳴り込んで来る未来しか見えない。

「カケル様、お茶なのです」

ニトがお茶を持って来た。お茶っ葉みたいにカサカサカリカリになる迄脱水しても良いが、それをやるのは俺の仕事になりそうだし、やはり売り出すのは無理だ。

 午後の部の仕事に行って、主婦や非番の冒険者達に需要の程を聞いてみる。

「お湯入れて飲むんならさ、水入れても飲めるんだろ?オレは欲しいけどな」

冒険者達は一食ずつの小分けでなら欲しいと言う。ポーションを買う感覚だな。

「ウチは頭数が居るからねぇ。味は良いから毎日使っても良いくらいだよ。けど小分けだと入れ物代が嵩みそうだね」

主婦達は家族の分も必要だ。四人家族で三日は使えないと買い辛い。量り売りなら喜んで買いたいそうだ。

保存箱を作って売れば。

考えて消える。家にはあるけどコイツは人の子の作れる技術を逸脱してる。龍が作ってるし、普通に国宝になるレベルだな。

女達を楽しませ、島に帰ってラビアン達に無理な事を説明した。結果、施設にて食事として提供するのみで確定した。

「残念でしたねー。お金儲けできそうだっのに」

サミイは言うが、彼女自身売り出しにならんと踏んでいたようだ。安全に提供出来無い事は予想していたみたいだ。

「カケル、解毒薬、いれたら?」

「腹壊す前提かよ。野菜と煮込んで薬効残るのか?」

「んー、どーだろ」

「味が良くなるなら薬効関係無く入れるのも良いが、効果無いのに添加物を入れるのは良くないな」

「旦那さまっ、それなら試してみましょうよ!」

サミイの商魂に火が着いたか?

「ならやってみるか。取り敢えず先ずは味見からだな」

作るのは女達に任せ、《鑑定》等は俺やリュネ達がする事となった。

「カケル様、スープの素が出来ました」

 それから数日、試作が完成した。味見しながら作っていたので味に問題無いだろう事は食べる前から分かる。食堂へ向かい席に着くと、兎達がお皿に盛られたペーストを持って来た。

「旦那さま、これなら売れますよ!」

「味は良いって事だな?」

鼻息荒いサミイがペーストをお椀によそい、お湯を注ぐ。湯気と共にスープの良い香りが立ち上がる。味もサミイの自信を裏切らなかった。

「俺が作ったのとは全然違う味だけど、美味いね」

「同じにならなかったです!」

俺もあの時と同じのを作れと言われても怪しいし、仕方無いよな。








しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄生物の飼育員ってマジっすか!?~

白那 又太
ファンタジー
とあるアパートの一室に住む安楽 喜一郎は仕事に忙殺されるあまり、癒しを求めてペットを購入した。ところがそのペットの様子がどうもおかしい。 日々成長していくペットに少し違和感を感じながらも(比較的)平和な毎日を過ごしていた喜一郎。 ところがある日その平和は地獄からの使者、魔王デボラ様によって粉々に打ち砕かれるのであった。 目指すは地獄の楽園ってなんじゃそりゃ! 大したスキルも無い! チートも無い! あるのは理不尽と不条理だけ! 箱庭から始まる俺の地獄(ヘル)どうぞお楽しみください。 【本作は小説家になろう様、カクヨム様でも同時更新中です】

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD
ファンタジー
【転生者モチ編あらすじ】 異世界を再現したテーマパーク・プルミエタウンで働いていた兼業漫画家の俺。 原稿を仕上げた後、床で寝落ちた相方をベッドに引きずり上げて一緒に眠っていたら、本物の異世界に転移してしまった。 初めての異世界転移で容姿が変わり、日本での名前と姿は記憶から消えている。 転移先は前世で暮らした世界で、俺と相方の前世は双子だった。 前世の記憶は無いのに、時折感じる不安と哀しみ。 相方は眠っているだけなのに、何故か毎晩生存確認してしまう。 その原因は、相方の前世にあるような? 「ニンゲン」によって一度滅びた世界。 二足歩行の猫たちが文明を築いている時代。 それを見守る千年の寿命をもつ「世界樹の民」。 双子の勇者の転生者たちの物語です。 現世は親友、前世は双子の兄弟、2人の関係の変化と、異世界生活を書きました。 画像は作者が遊んでいるネトゲで作成したキャラや、石垣島の風景を使ったりしています。 AI生成した画像も合成に使うことがあります。 編集ソフトは全てフォトショップ使用です。 得られるスコア収益は「島猫たちのエピソード」と同じく、保護猫たちのために使わせて頂きます。 2024.4.19 モチ編スタート 5.14 モチ編完結。 5.15 イオ編スタート。 5.31 イオ編完結。 8.1 ファンタジー大賞エントリーに伴い、加筆開始 8.21 前世編開始 9.14 前世編完結 9.15 イオ視点のエピソード開始 9.20 イオ視点のエピソード完結 9.21 翔が書いた物語開始

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

お兄様のためならば、手段を選んでいられません!

山下真響
ファンタジー
伯爵令嬢のティラミスは実兄で病弱の美青年カカオを愛している。「お兄様のお相手(男性)は私が探します。お兄様を幸せするのはこの私!」暴走する妹を止められる人は誰もいない。 ★魔力が出てきます。 ★よくある中世ヨーロッパ風の世界観で冒険者や魔物も出てきます。 ★BL要素はライトすぎるのでタグはつけていません。 ★いずれまともな恋愛も出てくる予定です。どうぞ気長にお待ちください。

処理中です...