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聞こえなかった
しおりを挟む『「俺の騎龍に喧嘩売るのは何処の雑兵かーっ!」』
《念話》と怒声を張り上げて、ミーネの背中に立ち上がる。落っこちちゃうので浮いてるが。此奴直接脳内に!?をされた竜騎兵共はビクリと震え、慌てて旋回行動を取った。その内の三騎が寄って来る。
「喧嘩も何も!貴様が我が国に攻めて来たのだろうが!」
鉄仮面で顔は分からんが、叫ぶ声はオッサンのようだ。
「夜の散歩してただけじゃ!間合い取って飛んでただろうがっ!」
こっちも大声出さないとならん。喉痛い。
「そんなデカいドラゴンに人が乗ってるなんて思わんだろうがーっ!」
「撃つ前に確認しろやーっ!」
「勝手した事は詫びる!だが兵士の務めでもあるっ!」
「分かった!せめて丁重に弔えーっ!」
死体を浮かせて叫んでる奴に乗せてやる。死体が飛んで来てめっちゃ驚いてる。
「何じゃごりゃーっ!貴様!死霊使いかーっ!?」
「浮かせただけじゃ!喉痛いからもう行くぞーっ!」
「逃げるなっ!名を名乗れーっ!」
「逃っげーんっ!俺は!キネイアッセンの、カケラント国国王!カケルッ!カリバッ!カケラント!この龍はっ!ウラシュ島、ミネストパレス国女王!ミネストパーレであるっ!」
「王たる者が逢い引きかっ!」
「デートしたって良いだろうがっ!」
「副長、そこ迄です」
叫ぶオッサンの後ろに居た騎竜から、聞き易い声が飛んで来る。あ、これイゼッタも使ってた風魔法だ。
「カケラント王、ミネストパレス王。初めてお目に掛かります。私は当、アンメスベルク国騎兵団、竜騎隊第二隊長、ヒューリケ・ダンクアトロと申します」
「名乗りご苦労」
「……」
「名乗りご苦労っ!」
聞こえなかったか。
「高貴な方と知らず無礼を働き、申し訳無く思います。ですがこれも国防故、どうかお許し願いたく存じます」
「其方も犠牲を出した!戦没者は丁重に弔って欲しい!」
「寛大なお言葉、痛み入ります。もしお時間にご都合付きますれば、我が国王ともお会い頂きたく思います。当方の無礼をお詫びしたくも存じます」
「…だとさ。どうする?」
「どうせ場所も知らぬ国だ。任せる」
「だな。挨拶だけでもしとこうか」
「承知した!」
「それでは我等に続いて下さいませ」
三騎が回転し、街へと向かうのに付いて行く。他の騎竜はサイドを固める感じで付いて来た。
遠目ではよく見えなかったが、街全体が白い漆喰で固められ、属性魔石の灯りを反射してとても明るく見える。石灰が多く採れる土地なのだろうな。
街の中央に城らしき高い建物。その麓に降りて行く三騎。騎竜から降りてスペースが取られるとミーネは光を纏って降りて行く。俺は落っこちる。
「あの高さから落ちて着地出来るとは…」
「うっ、浮いておりましたぞ!?それにドラゴンがっ!人の姿にーっ!?」
「聞こえています」
あのオッサン、常に大声なのか。俺達が城の中へと案内されて場所を空けると、続々にサイドを固めていた騎竜達が降りて来る。
「静かに降りるモンだな」
「普段よりは静かです」
多分ミーネが居るからだろうな。
「騒がしくしていたら寝ている人の子を起こしてしまうからな」
やっぱり何かしたようだ。してなくても萎縮してそうだが。
「ご配慮痛み入ります。昼間の来訪されていたら大変な騒ぎになっていた事でしょう」
「騒ぎにならないようにはしてたんだがな」
連れて来られたのは謁見の間では無く客間に近い。間取りは広く、一人掛けのソファーが並んだ机。会議室の様でもある。
「この部屋は?」
「はい。公式な謁見では御座いませんので、談話室を用意させて頂いております」
部屋に詰めていたメイド?が答える。メイド服じゃないからメイドかどうか分からない。
「君はメイド?」
「名乗る程の身分では御座いませんので申し遅れました。私、この部屋の支度を仰せつかりました、サトーと申します。それと、この国と周辺では使用人と呼ばれております」
金髪ポニテで欧米顔した佐藤さんだ。
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