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白い視線

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「マスター、マスター宛に魔法伝文が届いております。公国からです」

「分かりました。カケル様、少し外します」

 カロが仕事を始めたので愛娘に簡単に説明してやる。

『生活の場をカケラントに移すのが良いんじゃない?パパの国なんでしょ?』

体は幼児、頭はJK。至極真面な意見である。カロを寿退社させて、一家総出で引越しすべきとも言われた。

「カケル様、お伝えしたい事が。上へ参りましょう」

『私も行くわ』

「分かった」

シンクレイアを肩車して、カロの後ろを付いて行く。当然だが、部屋に入って気付かれる。

「何故シンクを?」

「偶には抱っこくらいしないと嫌われちゃいそうでな。それで?」

『甘い物くれて臭くないパパは好きよ』

シンクレイアはパパが好き、シンクレイアはパパが好き…。

「はい。公国のギルドからです。高貴な方より、申し訳無い、と」

「え、うん、事後だがまあ仕方無し、か」

「公后様でしょうか?」

「だろうな。貴族全般を指す名詞っぽいけど」

「いえ、高位貴族の何方かですね。私等ですと、さる貴族の…となりますから」

一先ずは、捕まえた雑魚共を城に返してやろう。職員が集めて来た糞漏らし共は腹の中をスッカラカンにしても尚、ぶちゅぶちゅと汚らしい音を鳴らし匂いを撒き散らす。門の外に投げ捨てられ、門兵からの白い視線を浴びていた。そこへ建屋内で無力化したのを連れて来て、一つの塊にして《収納》した。

『ミーネ、来敵は無いか?』

『無いな』

『リュネ、ミーネ。ゴミを捨てに行こう』

『うむ』「はぁ~い」

ピルで来たな。たわわで背中を圧迫されて白い視線を浴びる。リームが飛んで来るのを待ち、アフマクシア城へと視界が切り替わった。

「一言言ってくれ。目がクラクラするから…」

「うふ、ごめんなさぁい。支えてあげますね~」

「おのれ不埒もっ!」「誰だきっ」「こっ」

口を開いた者から真っ二つになって行く。コレ、リームか?どうやってんの?スプラッタ過ぎて見てられん。背中を向けて跪き、此方を振り返る男達は突然の血祭りに言葉を失い、彼等の対面でふんぞり返っていた老人は腰が抜けたようで脚をバタ付かせる事しか出来無いでいるようだ。騒いだ者、逃げた者、魔法や武器を使おうとした者が左右二分割にされて、謁見の間は静かになった。

「お前達、もうコレ相手に膝を着く必要は無いぞ。一度戻って、改めて訪れると良い」

「は…はい…」「し、失礼致しますっ」

頭を低くしたまま立ち上がり、数歩後退してから踵を返し、部屋を出て、更に頭を下げる。流れる様な所作で部屋を出て行く二人はそれなりの貴族なのだろうか。

「…お前のせいで沢山死んだな」

義父の前に廃人になった男共を山にする。リュネとリームは更にトカゲを投げ捨てて、広い部屋が酷い有様となった。部屋の端にトカゲが堆く積まれ、容易には出入り出来無いだろう。

「此奴等は、生きてはるが、それだけだ。リュネ達は殺っちまったようだがな」

「人の子はポコポコ増えますから。ふふっ」

「動けない者を生かし続ける方が大変なんだぜ?」

「主様は容赦無い。と言う事か」

「俺は寛容だよ。では、行こうか」

二人の手を取り《転移》する。

「カケル王…」「来たか」

 サロンには義母を中心に家族全員揃っていた。義兄と義姉が呟くように吐き出すと、姪っ子達がおずおずと歩み寄る。

「カケル、お父様は…?」

「生きてるよ。だが、生きて謁見の間から出る事は無いだろうな」

「ごめんなさい。お父様の代わりに謝るからっ」

「私もごめんなさいっ」

「エル、クラス。これは罰なのです。受け入れねばなりません」

「「母様…」」

「皆には下に降りてもらうよ。此処に居ると食事も摂れんだろうからね」

サロンや王達の居室へは、謁見の間を通らなければならず、放っておくと此奴等迄餓死してしまい兼ねん。
謁見の間の外に居る者を、リュネが《転移》で外に出すと、突然の事に衛兵やメイドは戸惑っていた。此処は練兵場だな。





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