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だいぶ増し増し

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 人手を割いて無力化した敵兵を部屋に搬入する男達とメイド。そんな事してる間に外の敵はジワジワと、街の敵兵に至っては完全に配置に着いてしまった。砦の死角を突くように、二列に並んで壁に着く。死角も何も、見張り等居ないのだから笊警備所の話では無い。実際には居るのだが、多勢に無勢。手を出せる状況でも無い。
敵兵の一人が壁に何かをセットして、窓のある二階へ攀じ登る。だいぶ前からこの砦は落とされていたようだな。しかし攀じ登っていた敵兵は途中で動きを止め、藻掻きながら落下した。屋上から投げ落としたナイフに殺られたと思われる。初の人死にだ。

死者を出した隊が松明を着けると、他の隊も松明を掲げ、本格的な戦いが始まった。

「敵襲ーっ!敵襲ーっ!」

「砦内に賊だーっ!」「総員抜剣っ!直ちに殲滅しろーっ!」

「「「おおおーーーっ!!」」」

大声を張り上げる男達。聞かせているのは中の賊にでは無い。外の増援に対してだ。
要するに、挟み撃ちされている状況である。隠密行動する必要の無くなった森側の隊は、大アトールに協力し、砦の平穏と両国の平和を守る等とあからさまな戯言を声高に宣い、入口へと突撃する。砦を盗った時も同じ手口だったのかも知れんな。
入口を破壊せんと突撃する森側に対し、入口を固めて中の者を出さないようにする街側。良い連携だな。こんな隣国と付き合わなければならないハークが不憫に思えて来るぜ。

まあ、中には誰も居ないのだが。

アルアの連続《転移》で空に出ると、ハークの飛行魔法が全員を浮かせ、敵の死角へ回り込む。入口を破られ敵兵の雪崩込んだ砦に、ジジババとアルアの魔法が放たれる。
アルアが使ってるのは龍魔法?メテオだろそれ。ジジババの魔法は各々が内包してる魔力よりだいぶ増し増しな魔力で作られた巨大魔法だ。ハスカンダは巨大な火球、デルトローは大量の巨岩を空に発生させ、メテオの着弾に合わせる。残るビビエルは二人のMPタンクの様な役割か?否、違う。敵の足止めしてやがる。
砦に居た笊三十人と、侵入したギッツ兵三百人が燃え盛る瓦礫の中に取り残され、輪廻の輪に向け旅立った。街側を固めていた百四十九人も、残るは六人となって、メイドに刺されて全員死んだ。

 魔法巧者のコントロールで、破壊したのは砦だけ。集落への被害は無さそうだ。ツケ払いの踏み倒しとかはありそうだし、逃げ惑ってて転んだり、略奪されてたりはしてそうだが、少なくとも彼等はノータッチだ。
留守番の待つ前線基地へ飛んで戻った一行は、静かに客車へ乗り込むと、空に上がって移動して、消えた。アルアが《転移》したようだ。ハークもアルアも、だいぶ無理をしたようで、小アトールを過ぎた先の野営地で停泊するようだ。
お節介、焼きに行くかな。

「お節介を焼きに来たぞー」

流石に暗部も刺しに来ないか。並んだ客車の前に《転移》するが、メイドは姿を現しただけであった。

「カケル様」「今ハーク様をお呼びします」

「俺が行く。どうせ動けなくなってんだろ」

「カケル様、お迎えに上がれず申し訳無く」

メイドに促されハークの車両に赴くと、中にはハークを膝枕するブルランさんが居て、静かに出迎え頭を下げた。

「だいぶ魔力を使ったね」

「戦いに参加させなくて正解でございました」

「適材適所、だよ」

ハークの頭を撫でながら、そっと魔力を流してく。

「う…、カケル……」

「頑張ったな。明日迄寝ていろ」

俺の言葉を聞いたハークは、気絶に近い眠りに付いた。ジジババ達は寝ながら自己解決してるみたいだし、アルアの顔を見て帰るか。

「しー、ですよぉ?」

「…居たのか」

アルアの客車の中に、リュネが居た。ハークの膝枕より柔らかそうだな。声を出さず、二人の頭を撫でると外に出て、メイド達用の雑木毛布とマットを出してやると城へと戻った。
こっちのメイドはしっかり刺して来やがる。





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