上 下
1,330 / 1,519

早寝早起き

しおりを挟む


 農業改革の説明はしたが、やるかどうかは皆に任せる。明らかに少ない訳でも無いしな。魔物に関しても普通の冒険者で事足りる。間引きを怠けなければ大物が湧く事も無いだろうし、デカいのが出たら呼んでくれれば良いだけだ。

 女達に福利厚生を施し、島に帰ると夕方過ぎ。夕飯食べて湯に浸かり、朝迄ぐっすり寝たいのを、少し我慢しハーク達の動きを見守る。メイド達は夜迄に動きがあると予想していたが、彼等が動き出したのは、しっかり真夜中になってからであった。早寝早起きと言う点で言うならば、彼女等の言い分も当て嵌っているのかも知れない。
早過ぎる朝食をほんの少し口にした様子の戦士達は、砦の外壁に向かって森の中を進んで行く。だがその先は平民等が勝手に作った街と言う名の集落だ。彼等もそれは理解しているのか、迂回しながら砦の端、壁の下へと取り付いた。

 一方、メイド達は散り散りに分かれる。ハーク一行の周囲に三人、五人は集落の中に入って俺の《感知》から消えた。残る二人は客車の警護に当たるようで、その場に留まっていた。
《感知》から消えた五人は砦の中に侵入していると踏んで、砦の内部を覗いて行く。内部の警備は笊であったが、その理由は部屋を隈無く見て判る。頭になりそうな者が居ないのだ。
ハーラデーに逃げられた時点でこの場を捨てる選択をしたのか?それとも何処かに隠れているか…。念の為に地下を見て、何も無いのを確認すると《感知》の視野を広げ、人間に絞って見て回る。集落の中で寝ているのは平民か?歩いているのは見回りだろう。酒場らしき所で動いている集団は男が殆ど。盛んに盛っている男女が空中に並んでいるのは娼館だな…。深夜である筈なのに意外と起きている者が多い印象を受ける。

 一旦視界を集落の外に移す。大小アトール間には人の姿は無い。大アトールのギッツ側は…居た。三十人の塊が砦から百ハーン程離れた所で点々と、且つ整然と並べられていた。砦が襲撃される迄その場で待機するつもりか?そう考えるとだいぶ士気や練度は高そうだ。少なくとも魔装を横取りしようと集められていたミソプファンティアの兵隊共より強い事は予想に難くない。

コレ、大丈夫か?不安を余所にハーク達が行動を起こす。誰かが隠密系スキルか魔法を使ったか。皆の気配が薄くなると、アルアが笊警備な砦の屋上に皆を《転移》させ、多分ジジババ何れかの魔法なりスキルなりで近くに居た見回りを無力化させた。微動だにしなくなったが、立ったまま寝てるのか?魔法には疎いので何をしているのか分からない。そこから体勢を下げたまま、砦の中心へと移動した一行は屋上の笊共を全て無力化して行った。
砦の中へ入ってブルランさんが気付いたか。手近な空き部屋に避難して、皆に何かを進言してる。メイドの一人も合流し、現状把握を進める模様。
暫くしてハークが口を開き、何かを決定したようだ。メイドも使って各階を無力化しながら階を下がって行くみたい。相手の土俵の中ではあるが、取り敢えずは順調に進めているな。

 砦の占領は終えた。だがまだ何一つ解決していない事に、彼等は気付いているだろうか。ハーク達が砦の中で頑張って居る頃、敵は気付いてしまったようだ。多分定時で連絡をしていたのだろう。それが無い事に異常を感じ、森の中の兵は動き出す。あくまで静かにゆっくりと。
街に居る男達にも動きが出る。此方も定時連絡でやり合って居たのか、寝ていた者が起き上がり、酒場や娼館へ繋を付けて行く。娼館の客の動きが早くなり、どうやら果てたようだ。
暫く後、砦から死角になる場所へと集まった男達。多分ギッツの兵隊だろう。武装してるし間違い無い。

ギッツ兵の動きに最初に気付いたのは監視のメイド。如何にして連絡してるのかは分からんが、ブルランさんが口を開くと、その場の皆で無力化した敵を部屋の一つへ集めだした。何の為だ?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。 ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。 下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。 幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない! 「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」 「兵士の武器の質を向上させる!」 「まだ勝てません!」 「ならば兵士に薬物投与するしか」 「いけません! 他の案を!」 くっ、貴族には制約が多すぎる! 貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ! 「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」 「勝てば正義。死ななきゃ安い」 これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。

黒ハット
ファンタジー
 前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。

アンバランサー・ユウと世界の均衡 第三部「時の大伽藍」

かつエッグ
ファンタジー
「司るもの」の召命に応え、剣と魔法の世界に転移した篠崎裕一郎は、超絶の能力を持つ存在「アンバランサー」となる。920歳のエルフの大魔導師ルシア先生、その弟子の魔法使いの少女ライラ、魔剣を使う獣人少女ジーナとともに、世界を破滅から救う冒険に旅立つ。  第三部の本編では、150年まえルシア先生に瀕死の傷を負わせた魔獣が復活の胎動をはじめ、世界の「時」が乱れ始めます。「時」をめぐるアンバランサーの冒険をお楽しみください。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。 十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。 スキルによって、今後の人生が決まる。 当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。 聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。 少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。 一話辺りは約三千文字前後にしております。 更新は、毎週日曜日の十六時予定です。 『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

処理中です...