上 下
1,325 / 1,519

泣くな

しおりを挟む


 「カケル様、ハーク様達は如何なされましたか?」

 見守りを解いてお茶を一服。息を吐いた俺にメイドが声を掛ける。只管歩いて行くよりは遥かに短い時間だが、結構な時間を俺はソファーで微動だにせずに居たのだ。皆も声を掛けるタイミングを計っていたに違い無い。

「大アトールの手前に着いて、夜を待つようだ」

「すんなりと待ちますでしょうか…」「私も同意見です」「お茶のお代わりは如何ですか?」

「…貰おうか。で、すんなり待たない理由は?」

「はい。夜は警戒度が増します故、敵が気を抜く時を見計らうかと」

「寝込みよりも前に仕掛ける可能性が高く感じられます」

「皆は計画を聞かなかったのか」

「拷問に掛けられても口を割る事はありませんが、同行せぬ者に情報を流す必要はありませんからね。ささ、温かい内にどうぞ」

お茶を頂き、皆もどうぞと茶菓子を出す。伸した団子にあんこを挟んで半月形に畳んだ柏の無い柏餅だ。朝食に団子スープを作ってくれたので、少しくすねて作った物だ。茹でたてを《収納》したので熱々だぜ。

「あふ、あ、あふっ」

「温かい甘味は初めて食べます」

「こも、むちゅむちゅひた、んぐ。食感も初めてですね」

「外側はそれ程味が無いから甘味以外にもスープに入れたり出来るんだ。ソーサーの代わりにもなるし」

「面白い食べ物ですね。して、この後はどうなされますか?」

「どうと言われても、俺は今回見守るだけだからなぁ。明るい内に少しクリューエルシュタルトに行って来ようかと」

「ギルドですか?」

「ああ。知り合いで協力してくれそうなの彼処しか無いからな」

  「ジョン様しか居ない…」「俺だけのジョン…」
何やら聞こえて来たがスルーする。お茶を飲み干し出掛ける。


 《転移》した先はギルドの屋上。雪降る地なのに屋根が尖って無いのが不思議だが、外壁とくっ付いてる建物だから、移動経路や待機スペースとなっているのだろうな。壁を守る衛兵達に誰何されん内に飛び降りた。

「ジョーンくーん」

閉ざされた俺専用入口を叩き部屋主を呼ぶと、見知った顔の美人が開けてくれた。名前は忘れたがサブマスの誰かだ。

「カケル様…ですね?」

何処見て俺と判断したの?ライデンの服だから顔は晒しているが、下を見て、顔を見て、浮いてるのを確認して俺だと判断したらしい。

「居ないの?今忙しいとか?」

「ええ、マスターはシューンシューンズデーゲンに出張しております」

「国葬関連かな?」

「お耳が早いですね。公言はなされないように」

《感知》を飛ばして婆ちゃんの居るギルドを見遣ると、ジジババに混じって確かに居た。

「俺も渦中の人だからね。情報交換して来るよ」

「あまり迷惑を掛けませんように」

俺はトラブルメーカーじゃ無い筈だが、大人なので了承して《転移》…の前にジョンに《威圧》を放っとこ。ジョンがビクッとなったのでシューンシューンズデーゲンへと《転移》した。

「来たな!?面倒事か?」

「お前もそんな扱いか」

窓を開けたジョンの第一声がコレである。中に入れてもらい窓を閉めると四人のローブが魔法を唱え、部屋を囲う結界が張られた。これくらいの結界ならカロ一人でも張れるよな。そう考えるとカロって凄いのでは?

「で、カケルよ。話があんだろ?」

「だな。情報交換に来たんだ。此方からとしては…」

ハークに王座が渡る事、少数で大アトール要塞を落としに行ってる事、城内の敵対勢力の一部を懐柔した事、等の情報を提供した。

「此処からではどうあっても馳せ参じられんでは無いか!」

「そう言う事は早く言え!嗚呼、ワシが居ればあんな要塞、瞬く間に灰燼に帰そうと言う物をぉぉ」

「およし。彼処を壊したらそれこそ出入り自由じゃないか。それと、出来無い事を言うんじゃ無いよ」

「ぬぁにうぉーっ!」

「待て待て。心は熱く、頭は冷静に、だ。そんなではハーク王が呆れてしまうぞ?」

「「「ハーク、王……」」」

泣くなジジババ。情報寄越せ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

俺の性癖は間違っていない!~巨乳エルフに挟まれて俺はもう我慢の限界です!~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
ある日突然、見知らぬ世界へと転移してしまった主人公。 元の世界に戻る方法を探していると、とある森で偶然にも美女なエルフと出会う。 だが彼女はとんでもない爆弾を抱えていた……そう、それは彼女の胸だ。 どうやらこの世界では大きな胸に魅力を感じる人間が 少ないらしく(主人公は大好物)彼女達はコンプレックスを抱えている様子だった。 果たして主人公の運命とは!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写などが苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...