上 下
1,304 / 1,519

ホンモノ

しおりを挟む


 此処はハークの寝所、子供の眠りを妨げるのは良くないので場所を変える。《阻害》を掛けてブルランさんの後ろに付いて行き、此方は小会議室っぽい見た目の部屋である。大きな机を椅子が囲み、俺等が入るとメイドが三人頭を下げる。

『静かに』

「「「……」」」

メイド達はピクっとしたが、ブルランさんは動じない。部屋の内外を《感知》と《魔力視》で見渡して…。

『天井に《隠密》とかしてるのが居るんですけど』

今度は全員動じない。ブルランさんが足音を一つ鳴らすと同時にメイド達が動く。部屋の隅へと飛んでナイフを構えた。俺は動揺したそれを強めに《洗脳》し、《結界》を纏わせる。

「もう大丈夫。降りて来い」

「…はい」

天井をすり抜けて来た不審者に、メイド達は武装を解かない。壁をすり抜けるスキル?初めて見たわい。トンデモスキルの持ち主は、俺に対し膝を折って服従の姿勢を取った。

「装備を外せ」

「…はい」

美少女だったら良かったのだが、全裸になったのは残念ながら男である。

「まだ子供の様ですな」

「身軽な方がこう言う仕事に向いてるとか?」

「ご説明します」

メイドの一人が声を出す。説明によると、身寄りの無い子供を飼って鍛えて暗部や暗殺者等、使い替えの出来る駒にする機関があると言う。メイド達の同業者って事か。毒等仕込んであるかも知れんと言うので《感知》で見ると、暗殺者御用達の毒袋が奥歯に、尻穴には暗器が仕込まれていた。《遮断》して《収納》し、《治癒》を掛ける。匂いそうで取り出したくない。

「誰に使われている?」

「…エレデリマ、大司教、様、です」

「大陸を総べる教会の、我が国での頂点ですな」

ブルランさんが注釈を入れてくれる。

「女神信仰ですか?」

「表向きだけで、裏が無ければそうなりますな」

「エレデリマの近くには誰が居る?」

名前が出ても俺には誰か分からない。ブルランさん達は知っているのだろう、渋い顔を更に渋くしていた。

「お前の仕事内容は何だ?」

「…ブルラン、メイドの、動向、調査」

「…だそうですが、此方からは何もしないのでしょう?」

「勿論。我々が何かをして坊っちゃま達に不利を被らせる訳には参りませぬ故」

「良かったな。お前はまだ死なない」

「…ありがとう、ございます」

尻穴に仕込まれていた暗器を再び埋め込むと、子供らしい可愛声を上げた

「んはぁ…」

「気持ち良いのか?」

「…はい」

「エレデリマにされているのか」

「…はい」

男色がこの世界にもある事は、ノーノを筆頭とするメイド等の腐った知識で知っていたが、まさかホンモノを見てしまうとは。

「自分の仕事に戻れ。そして秘密裏にエレデリマ達から得た情報を此方に全て報告しろ。此方の情報は半分も報告するな。ブルランさん達の命令は絶対服従。俺の事は絶対秘密だ」

「…はい」

返事をし、服を着ると飛び上がって天井に溶け込んで行った。

「今居ないのを良い事に…」

「弟くんの一派なのか。何かこのままだと街に来るのを遅らせそうですね」

「二人の決着が着く迄、ですかな?」

「ハークはともかく、アルアや皆が心配だな」

「カケル殿、その心配は…」

「トリントンに微毒が仕込まれてましたよ」

「何と。其方に迄目が行き届かなかったとは」

「ハーク達にも未遂だけど」

「これは…、死んでお詫びをせねばなりませんな…」

「ハークが賢王になってからな」

「心得まして御座います」

「取り敢えず、三人揃う迄は頑張ってください。明日は一オコン程暇を作って貰います。昼食が終わったら全員集めておいてください」

「「「畏まりました」」」

会議室から皆が出て、俺は天井の男を呼ぶ。

「…何なりと」

「お前、何時エレデリマの所に戻るんだ?」

「…直ぐにでも」

「ならば案内しろ」

「…はい」

飛び上がり、天井へ消えた男は薄らと存在感を出しながら移動して行く。外に出て、止まったのを見て《転移》して、再び男は移動する。大司教は教会の宿舎の上の方に住んでいるようだ。そりゃそうか。僧籍だもんな。






しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

西からきた少年について

ねころびた
ファンタジー
西から来た少年は、親切な大人たちと旅をする。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...