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白湯

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 夕飯に鳥肉が出た事に、家主であるエルシド・ゴモランは大いに驚いた。それが義弟デュセルが命を賭して持ち込んだ事にも。

「ち、義父殿は…知らんのだろうなぁ」

「義兄殿、友の為の試練に親を出す程、私は子供ではありませんぞ?鳥舎にはしっかりと理由を述べて、真っ当な取り引きにて購入した物であります」

「後ろに義父殿の顔があればこそではないか。大事な客?確かに大事ではあるが…」

「相手がそう思い込んでいただけであります。王が平伏すお方で在らせられるグリューネワルター様にお召し上がり頂くには些か豪華さに欠けますがな」

「デュセル~?」

「味は勿論この国一番でありますからな!ご満足頂けると信じております!」「うむ!我が妻の飯は美味い!」

男は弱い生き物なのは、貴族も龍も変わらない。説教を諦めた家主が料理に手を付けて、皆も食事に手を伸ばす。

「夫人、柔らかくて、味が染みて美味しいですよ」

「お褒め頂き有難う御座います。厨房の者達も喜ぶ事でしょう」

リュネの賛辞にメイド達から安堵の息が漏れる。香草のタレに漬け込んでから焼いたのか、焼き上げて、切り分けられた腿肉と胸肉はジューシーな旨味が詰まっていた。スープも鳥出汁で美味い白湯ぱいたんだ。この辺り特有の香草を練り込んだソーサーが口の中を爽やかにしてくれる。おべっか無しに美味かった。

「カケル。我が約束は果たした。呉々も我が友の事、頼んだぞ」

「承知しました。男の約束は違えません」

 食事が終わり、家主夫妻と俺とリュネは玄関迄デュセルを見送りに出る。迎えのゾーイ車に乗るデュセルは何度も念を押して帰って行った。

「我等は中立で在らねばならん。中立で在るからこそ、平和裏に済んで欲しい物である」

「多少の処分はされるでしょうな。成る可く早く終わるよう祈るしか無い」

「皆そう願っている事だろう。では儂は寝る。明日も早い故にな」

「あ、そうだ。お土産と言う程では無いのだが疲れに効くからコレ食べてみてくれ」

「何だ?…果実だな」

「ダンジョン産の果物で疲労回復の効果があるんだ。甘いのが苦手でなければだが」

「ふむ。ワシを毒殺して何が変わる訳で無し。遠慮無く頂くとしよう。…がぶちゅ」

俺からダンジョンフルーツを受け取ると、その場で皮毎齧り付き、溢れた果汁で手を汚してしまった。

「ん、んまい。ぐちゅ、甘い。はぶっ、んまい」

食って喋って四口で平らげたエルシドは、果汁滴る手を振って部屋に戻って行った。

「では私も、休みますね」

「お休み」「お休みなさぁい。カケルさんも~」

俺はまだ寝ないんだが、リュネに連れられ離れへ向かった。

「ちょっと出掛けて来るよ」

「浮気ですかぁ?」

「トリントンの延命願いだよ」

「こっちに呼んだら良いのに」

「場合によっては連れて来るさ。じゃあ、良い子にしててくれ」

リュネの頭をぽふぽふして、ハークの部屋へと《転移》する。そして瞬く間に背後からナイフが突き刺され、纏った《結界》に阻まれた。

「せめて一声お掛け下さい…」

背中にくっ付いて来て《結界》チクチク刺して来る。

「仕事ご苦労。ブルランさんは…」

「今参りますね。私は警備に戻ります」

「そうみたいだな。終わったらエッチしような?」

「今から濡れてしまいます。ではっ」

「失礼致します」

メイドが消えるとノックがあり、ドアを開けるのはブルランさん。

「お疲れ様です」

「此方は変わり無く。其方は何か御座いましたか?」

「ああ、延命願いが来た。トリントンの友、デュセルからだ」

「確かに、私共も拍子抜けする程の御仁でありました。坊っちゃまが王となるなら自分は名乗りを取り消すと、貴族共の前で宣われました」

「それに黙ってられない者が居る…と」

「左様で。それに、王妃様が中立のお立場を取るとは思いもよりませなんだ」

「賢い選択ですね」

「まだ幼子ですから」

ハークにとっては可愛い弟だ。尊敬出来るお兄ちゃんになってもらわねばな。






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