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淑女の嗜み
しおりを挟む「どうなさったの?」
料理が配膳されるのを待つ夫人はにこやかに問うて来る。
「毒を盛られましたね」
「え!?それはいけないわ。貴女達、厨房へ。直ぐに作り直しなさい」
「待ってくれ、此処の料理じゃ無いんだ」
俺の答えに慌ててしまった夫人を慌てて止める。言葉が足りなかったのは狙った訳じゃない。だから俺のスープを持って行くなっ!
「え、違う?違うのね?ふぅ……ではまさか」
「ハーク達の食事に盛られたようだが、これもう治したって事だよな?トリントンには薄らと残ってるが」
「今から治しまぁ~す」
トリントンの微毒が消えて、貴族の食事は恙無く進んで行く。微毒とは言え気付かんモンなんだな。
「ハーラデー派と思わせたトリントン派の貴族達ね」
当たり前だが、夫人は貴族が分かっている。その手の学も学んでいるのだろう。淑女の嗜みと言うヤツか。
「居ない者のせいにするとか無理あるよな」
「歴史は書いた者が正義なのよ」
「確かに」
両者に毒を盛り、方やハークは口封じ。方やトリントンは毒に気付けば弟を疑える。気付かなければ覚悟を決めて弟と対峙する事になるだろう。貴族のやる事は気持ち悪いぜ。
そしてリュネ曰く、毒を盛ろうとした者はハーク達の鍋と間違えて使用人用の鍋に毒をぶち込んだそうだ。主人達より先に食事をする使用人は居ない訳で、毒入りスープは誰も口を付ける事無くコトコト煮られていたのだが、料理人が味見と称して口にして、その場で泡吹いて倒れたと言う。リュネはその料理人と、トリントンの微毒を治したんだとさ。
「流石は魔装だな」
「ハーク君の首飾りって、そんな効果があったのですねぇ」
「どんな効果は聞けないけれど、貴重な物なのね」
「そうだね。魔装自身がハークを守りたいと思っているので、色んな効果が出るかも知れない」
「お嫁さんが嫉妬してしまうわね。ふふっ」
「その時は仲を取り持ってください」
此方の食事も恙無く進み、サロンでお茶の時間となる。此処にもあったよサロン!
「ほう…。このタイプのサロンは初めてお見受けします。極軽く、それで居て金属を縁取る扉を通り抜けると一面に敷かれた絨毯が足元を柔らかく包み込んでくれます。そしてその柔らかさは壁へと続き…、ほう、これは毛足の長い布を壁紙にしているのでしょうか。外気を遮断する為の工夫と見て取れます。窓はサロンの天井付近をぐるりと囲み、寒冷地であるが故に窓を作りにくいこの土地で、明かりを得る手段として鏡を利用する知恵。甚だ感服致しました。椅子は布張りで丁寧で且つ温かみのある造り、上品に纏められた調度品の数々と見事な調和は正に眼福と言った所でしょう」
「カケルさん?」
「褒めてくれたのね、嬉しいわ」
「建物が好きなモノで」
「けれどあの鏡、明り取りだけの物では無いのよ?」
「なんと」
「此処に来て見上げてご覧なさい」
「これは…。見上げた先には外の景色。正直な所、全周を囲むのは意匠を凝らした物かと思っておりましたが大間違い。コレは防犯の物見としても使われていたとは。無知蒙昧な自分を恥じるばかりです」
「カケル様、貴方方がいらした時も、私この場に居たの。それで直ぐに駆け付けられたのよ?うふ」
「タジタジですねぇ~」
「そうですわリュネ様。よろしければなので御座いますが…、カケル様との約束を果たさせては頂けませんでしょうか。長らくお会い出来ませんでしたので、次の機会がありますでしょうか…」
「…………仕方無いですね。その代わり、カケルさんの力になりなさい」
「畏まりました。お誓い致します」
「…ふぅ。カケルさん、夕飯迄ですからね?」
「お、おう…」
何となく、察しが付いた。これリュネ妬いてるヤツだ。
「リュネ」
「はぁい」
抱き締めてキスをする。舌を絡めてねっとりと。夫人の願いを聞いたのは、夫人が俺の為になると考えたからだろう。感謝して口内を犯した。
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