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人の事言えない

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「なら何故最初からそれをしない。誰か一人でも死んだらアルアが傷付くだろう事、理解している筈だ」

「本当に、申し訳御座いません」

 深く腰を曲げて謝意を表すメイド長に、俺は強く息を吐いてアルアを解放した。

「支度を済ませたら一ヶ所へ集めろ。ハークの所に移動する」

「はい。承りまして御座います」

「カケル様…、申し訳ございませんでした…」

「お前に何かあったら俺は悲しい。分かるか?」

「…はい」

短い言葉を返すと短い返事が返って来た。

 荷物を纏めて総員乗り込みを終えたゾーイ車をハーク邸へと《転移》させる。庭にぎっしり並べられ、ゾーイ達も窮屈そうだ。

「アルア!」

「お兄様っ」

感動の再会よりも荷物の搬入が先だ。両家のメイドが束になり、荷物をどんどん運び出す。空荷になったゾーイ車は、浮かせて玄関前に移動させ、逐次街の西側にある厩舎に移動してもらった。

 搬入は終わり、ルームメイキングが終わるのは深夜になると言う。それ迄は家令であるブルランさんにメイド長もバタバタしてるので俺達は暇を持て余すしか無い。

「カケル、女の子泣かしちゃ、メッ」

「ダメなモノはダメって、言っても分からんならな。…とは言え、自分の娘にやれるかどうかは分からんが」

「あの子は一度痛い目を見てますからねぇ。ソレを繰り返す様な真似をして欲しくなかったのでしょう」

「カケルがたすける。ばんじかいけつ」

「助けられるタイミングで俺が気付ければな」

「がんばる」

「善処するよ」

お茶を飲み飲みまったりしていると、ノックをしてメイドとハークにアルアがやって来た。

「お部屋の用意が整いましたので、後は休んでよろしいと、婆やが…」

「そうか、お疲れ様」

「あのっ、あの、先程は本当に申し訳ございませんでした」

「うふふ、叱られちゃいましたねぇ」

「うきゅ」

リュネがアルアを胸に挟み、窒息させようとしている。

「カケル、アルアを怒らないであげて」

「怒ってなんて無いよ。所で、旧王都には行くべきだよな?」

出来ればブルランさん達を交えて話したかったが、居ないのでは仕方無い。

「うん。葬儀にも出たいし、王としての名乗りも上げないと、テンテリオンが王になっちゃう」

「テンテリオンは、良き王になれそうな男か?」

「あまり外には出歩かない人だけど、悪人では無いと思う。勉強は凄く出来るよ。公爵家の跡継ぎだしね」

「では、その弟は?」

「ハーラデーは家を出るからって、反対に外に出てる事が多かったよ。集まりにも中々顔を出さなかったし、あまり話をした事も無いんだ。
二人の事を言えた義理じゃ無いけど、僕だってまだまだ勉強不足だよ。僕も含めて皆苦労するんじゃないかな」

「そりゃそうか。俺も人の事言えないからなぁ」

「一緒に勉強する?」

「十日に三日くらいなら…」

「ぷはっ!わ、私もっ、もっと勉強しますっ」

「一杯勉強しましょうねぇ~」

「んん~っ」

夜もだいぶ更けて、子供達はそろそろ寝る時間だ。大人なネーヴェは寝ちゃってるし、今夜は一旦島に帰る事にする。リュネはアルアと寝るみたいでハーク邸に残ると言う。また何か教え込むつもりなのだろうか…。

 ネーヴェを抱いて島へ帰り、翌日は朝食を摂って直ぐにハーク邸へ向かう。まだハーク達の朝食が終わってなかったみたいで、食卓へお邪魔してお茶だけ頂いた。そして食卓が終わり、食器が片付けられた食堂でそのまま今後の話し合いをする。

「《転移》にて、私共をミソプファンティアへ送り届けて頂けると、お嬢様から聞き及んでおります」

「誰が行くのか。そしてその後の動き、ですな?」

「自衛出来る者が絶対条件で、後はご自由に」

ハーク側からはブルランさんにメイドが三人、アルア側はメイド八人が同行する事になった。メイド長は自衛的に役不足であると感じた為、ハーク邸の留守を預かる事にしたそうだ。

「全員行っちゃえば良いのにぃ」

それは流石に数が多過ぎるだろー。





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