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お尻ペンペン
しおりを挟む「政変した所で下の者の生活は差程も変わらんよ。他国に支配されたからって生産を減らしては盗った意味が無いし」
「奴隷化や凌辱も有り得ます」
俺の持論に対面に座っているお前が反論を上げる。そしてリュネが乗っかった。
「カケラントみたいですねぇ」
「成程。ネーヴェ~リュネがいぢめるぅ~」
「よしよし」「んもー!」
「もう着きます」
茶番は終わりか。門が開いた音が聞こえ、ゾーイ車は直接玄関迄乗り付けるようだ。そしてボコボコと踏み鳴らしていたゾーイの足音が止まると、馭者が降りて来て客車のドアを開ける。
お前と貴様が降りて、リュネを降ろす。
「カーケんぎゅ」
多分ハークが捕まった。ネーヴェを抱いて俺も降りる。
「んっ!んーっ!」
「奥様、ハーク様は多感な年頃。お戯れは程々にお願い申し上げます。それに旦那様も見て居られます」
「んもぅ、奥様なんてぇ」
ブルランさんの名アシストがリュネのホールドを緩ませる。
「ぶっは!助けて~」
「羨ましい奴め。成人してたらお尻ペンペンしてた所だぞ」
ブルランさんが長い挨拶をして俺達を屋敷に迎え入れる。客間にはお茶と茶菓子が用意されていた。
「其方があの青き息吹…」
ボリボリと焼き菓子に齧り付く小さい子に、ブルランさんは声を漏らす。客間に入るなりお菓子に飛び付いた無作法者を、誰も何も咎めなかったのは偉いと思う。紹介された名を聞いて、解る者は固まった。
「ネーヴェの事は置いといて。何で葬儀に行かないんだ?父親だろ?」
「行きたくても動けないって、爺やが」
「迂闊に街を離れますと…」
「何処かの手先に襲われるってか」
「ミソプファンティアに元々居を構えるテンテリオン様を除き、誰も旧王都へ行けぬ状況でございます。アルア様も同様の筈」
「アルアか…」
目を瞑り、《白昼夢》を起動する。一瞬で切り替わったアルア邸は俄に騒がしく思えた。メイド達は鞄に服等詰め込んで、外にはゾーイ車を並べてる。これ、まさか行くのか?
「見て来た。何処かに出掛けそうな感じだったぞ?」
「なんと」「危ないよ。どーすんのさ」
「此方に来そうですねぇ~」
「旧王都には行かずにってか?」
「カケル様はお兄様の所に行く筈です~ですって。慕われてますねぇ~」
「人質に取られても厄介だし、回収して来るか…」
「ソレが狙いしょうね、うふふ」
引き際を心得ているアルアとは思えぬ短絡的な行動に、裏がある事は流石の俺でも分かった。コレはお尻ペンペンだな。
「アルア達を連れて来るよ」
「部屋を用意してお待ち申しておりますとお伝え下さい」
「《転移》するの?いーなー」
「カケル、いってら」
アルア邸へと《転移》すると、直ぐにメイドが飛び掛って来た。
「え?」「貴方様はっ」
「お勤めご苦労。アルアのお尻ペンペンしに来たぞ」
二本のナイフが鎧に食い込む寸前で止められた。ナイフは良い。仕事だからな。どうしてペニスケを握り込んでんだ?なんならペニスケ握ってからナイフ突き出してたろ。一体ナニをするつもりだったのか。
「カケル様、一先ず中へ」
「私の中…なんて言える状況ではありません。申し訳ございません」
「収まったらパンパンしてやる」
「「御意」」
暗部だったか。ハークの所にも居るしそりゃそうだよな。屋敷の中へ通されて、客間には向かわずアルアの部屋へ通させる。
「このじゃじゃ馬娘ぇ~!」
「ひゃっ!カ、カケル様」
「兄妹危ないって時に変な策を弄じるなっ」
アルアを浮かせて身動き出来無いようにすると、スカートを捲って平手を叩き込む。
ベチッ!
「あきゃっ」
「俺は二人の味方だが、矢面に立つと傀儡だのと思われるだろうが」
ベチンッ!
「ひぎっ」
「どれ程腕を上げたか知らんが政敵に捕まってもお前は《転移》で逃げられる。お前だけは逃げられる。だが他の者はどうだ。お前は捨て置くのか」
「い、いだい…」
「カケル様、お嬢様をお止め出来無かった責は私共に御座います。お咎めは私共に下さいませ」
メイド長が慌てた様子で駆け込んで来た。
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