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熱々おでん

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「主様よ、その凹みは何の為にあるのだ?」

 溝を掘り終えたリームが飛んで帰って来た。パないぜ。

「もう終わったのか、凄いな。この溝は普段は少ない水を流しながら、水位が上がり過ぎた時には溢れさせる事で大きな氾濫を防ぐ為の物で河川敷って言うんだ。雨の少ないシルケだけど、溢れちゃうと困るからね」

「ふむ、成程。端を斜めにしたのは昇り降りの為だな?」

「トカゲ飛べないからな」

リームと合流し、施行を手伝ってもらう。溝を切って貰うだけで施行がとても捗る。

「カーケールさぁ~~ん」

仕事が早いな。一つ目の水路の中程迄進んだ所でリュネが飛んで来た。

「ソッチはもう終わったの?」

「はぁい。バッチリガッチリツルツルでぇす」

下ばかり見て気が付かなかったが、丘の彼方を見ると白く輝く壁があった。…どんだけ高いの作ったんだ?振り返り、近い方を見る。ツルツルにしなくても無理だろコレ。

「高さ増し増しだな。どれくらいあるんだ?」

「上から見て作ったんで分かりませぇん」

盆地化して熱が篭もりそうだが、そうなったらスリットでも開けてもらうか。

手伝いが増えたので更に施行速度が増す。リームは先行し、反対側からやってくれるそうで飛んでった。彼奴め、気を使ったな?リュネに仕様を説明し、ガリガリドバドバ河川敷を作ってく。

「…お、終わっ…た…」

「お疲れ様でぇす」

「こんなに魔力を吐いたのは久々だな」

 リームはケロッとしているが、俺は魔力を使い過ぎたのと疲労でヘトヘトだ。魔力はまだ良い。スキルで回復出来る。疲労は腕に乳酸溜まり過ぎて微動だにせん。休憩無しの四オコン、死にそうです。

「と、取り敢えずミーネと合流して昼飯にしようか」

「うむ」「はぁい」

リームの背に乗り山へと向かう…山?

「あれ、あの山って」

「トカゲの巣だな」

「龍も住めそうですねぇ」

何も無かった筈の台地に、見た目岩山が出来ていた。近付く毎に細かく見えて来る岩山は、亀裂の様な穴が沢山空いていて離着陸用の踊り場迄付いている。《感知》で中を覗き見ると、通路の先は空間になってるワンルーム。灯りは無いが、配管っぽいのが走ってて、山頂の窪みに属性魔石を仕込めば水が流れそうな雰囲気になっている。その窪みにミーネは居た。

「ミーネー、首尾はどうだー」

「此方は粗方。皆は終わったのか?」

「後は水を張るだけだよ」

「此方も水が要る」

「コッチの排水路も作らなきゃならんね」

「…私とした事が見落としていたか」

「それと、水浴び用の水だろうけど上から掛け流しにした方が良いね。何処で糞するか分からんから汚れた水を飲む事になっちゃうよ」

「むう、見様見真似でやってみたが、難しいモノだな」

「人ならコレでも充分だね」

「人の子は糞を垂れる場所が決まっておるからな」

うんこの話もそこそこに、竈を組んで肉を焼く。腕が上がらぬ俺の代わりに皆が料理をしてくれた。

「カケルさぁん、あ~ん」

「切って!それ熱いからっ」

姉龍二人は焼いたのを丸のまま齧り付く。介抱してくれてるリュネもそのままあ~んして来る。熱々おでん芸はもっと人の多い所でやりたいので抗って切り分けてもらった。…ギリギリミディアムレアでした。《解毒》掛けとこ…。

食事が終わり、休憩したらトカゲの巣の手直し。一を聞いて十以上を知るミーネは上水と下水の二ルートの配管を作り、上水は水圧を均す為の貯水タンク、下水にはP字トラップや浄化槽迄設置された。動力を使わない曝気槽のアイデアが凄い。
俺は山頂で属性魔石作り。トカゲの魔石は皆が渋い顔したのでドーンドゥールで拾って来た魔石から大きいのを使った。ピンポン球程の大きさに縮んだ魔石に水を付与して出来た十個の属性魔石に魔力を込めると、ドバドバと水が湧き出した。

「ちょっと溢れてるけど、大丈夫かなあ」

「その内苔でも生えて、らしくなるでしょう」

作業が終わったミーネにも聞いてみたが同じ意見だった。最後に池の水を満たすのは、三龍が一気に満たしてくれたので一つ目の池に魔力を込めた属性魔石を放り込んで終了だ。これは距離があるから後日様子を見ねばならんね。




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