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ヒラウオ養殖

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「旦那様よ」

「何かな?」

「増やすとは言うが我等はやった事がない」

 挙手するミーネはそう言って目を閉じる。そりゃあそうだろうなぁ。

「その点は人の子の力が役に立つだろう。カロ、アルネス」

「は、はい」

「はい。では奥様に変わりまして私から…」

カロの代わりに席を立つアルネスへ皆の目が集まると、アフマクシア公国とメリクヒャー家でなされているトカゲの繁殖と育成、そして調教の説明がなされた。

「捕まえ育て、飼い慣らす、か」

「はい。実績は有ります。問題は繋養する場所と、そこで働く人材でしょう」

「場所はだが、ウラシュ島でどうだ?」

「戦争で荒らされた土地を龍の皆様が緑に変えて下さった事迄は聞き及んで居ります」

「ミーネはどう思う?」

「餌さえあれば人等襲わんだろうよ。人を餌だと思わなければな」

「では細かい場所は追々決めるとして、餌の確保を考えよう」

「カケルさぁん」

「何だい?」

「トカゲの餌なんて石でも食べさせとけば良いんじゃないですかあ?」

「地面が凹んじゃうのは困る。溜池作る時だけにしたいな。以前ウラシュ島にはタマゲルしか居ないって聞いたけど、その後増えたりしてないか?」

「海から少し来ているが、元々砂浜や海岸に住んでいた者だろう」

リームは述べるが俺には初耳だった。取るに足らぬ数なので言う程の事では無いと判断したそうな。ミネストパレス周辺にはミズゲル避けの《結界》があり入って来れない上に、女王の威光が効いてるそうだ。それでも寄って来るゲル種は肝が据わっていると言える。内臓無いけど。

「その特徴だとトーピード辺りか。数に入れなくても大丈夫なら放置で良いや。トカゲ以外に飼育生産してる生き物ってホルストと鳥くらい何だっけ?」

  「発言よろしいでしょうか?」
「大きい声で…辛かったら良いからな?」

「お手伝いしまぁす。…はい《拡大》」

耳がでっかくなっちゃった…りはしてないか。ノーノの前の空気を調整し、声を大きくするスキルらしい…。《伸縮》《散開》に続き似たようなスキルが出たなぁ。

「あ、あの、よろしいでしょうか…」

「おお、普通に聞こえる。リュネも助かるよ」

ノーノ曰く、食用鳥、騎乗用ホルストとドラゴンの他にも食用淡水魚や伝書鳥の飼育生産がされていると言う。そう言えばノースバーでもヒラウオ養殖されてたか。

「年に数頭増えて大きく育つ者ってどんなのが居るんだ?」

「えっと、カケル様は名前を知らないと思うので省きますが、飛べず、ブレスも吐けないトカゲ種の肉を食用にしようとした実験に、我が国は失敗しております。理由は肉食で、共食いし、人をも食べたからだそうです」

「騎龍が出来るからコレでもって感じがするな」

「はい。まさしくですね。で、そのトカゲの近似種に草食の種が居ます。肉食の者より一回り小さく、群れを成し、人は食べませんが他種族には凶暴です。此方は試験飼育の時点で諦めていますが、人が給餌しなくても良いのなら充分かと思われます」

「放牧したら良いんだもんな。因みに大きさは如何程なんだ?」

「雌は全長五ハーン、雄は三ハーンと半分程です。肉食のトカゲば雄が五ハーン程あり、雌は更に大きいです」

「精肉した時の歩留まりは大きい方が良さそうだが、トカゲは丸食いするから関係無いな」

「先ずはグリーン氏リザルト…草食トカゲを捕獲繋養する事になりますね」

「面白い名前だな」

「発見者の名前が付けられています。公都にある商会ですね。それにリザルト種、です」

住処と餌は決まった。餌の餌は雑草で良いとの事なので後はインフラ整備だけだな。今夜はもう遅いので解散とし、島に帰って紙に纏めれば良いや。

「皆、遅く迄付き合ってくれて感謝するよ。皆の貴重な意見のお陰でトカゲを絶やさずに済みそうだ。今夜はこれ迄としよう」

「お役に立てず済みません…」

言いたい事を全てアルネスやノーノに言われてしまったカロがシュンとしてた。撫でとこ。








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