上 下
1,289 / 1,519

食べ過ぎ

しおりを挟む


「カケルさぁ~~ん」

 施設での業務に復帰し、職場と子育てを両立しながら妻と妾と性奴隷を可愛がる四日後の午後の事。間延びした声を発してポテポテと歩くような速さで駆けて来るリュネに違和感を覚えた。

「な~あ~に~?」

「少し困った事がありましてぇ。聞いてくださぁい」

多分だが、だいぶ困った事では無かろうか。体に張り付いてる妻達に退いてもらい、マットに胡座をかいた。

「リュネ様、どしたの?」

腕に絡み直したイゼッタが問う。

「それがですねぇ、お肉が獲り難くなりましたぁ」

「お肉って、トカゲの事か?」

「ええ。大きいのを狙って獲ってたのですが、食べ過ぎちゃいましたかねぇ」

由々しき事態である。これは一生に一度見ないドラゴンが、絶滅の危機に瀕していると言う事で間違いないだろう。

「今日からトカゲ肉の捕獲は禁止だ。期限は大人の個体数が増える迄とする」

「「「えええーーーっ」」」

女達が声を上げる。だが俺は怯まない。

「リュネは十年に一度個体数を確認して、大人と子供、雌雄の各個体数を記録する事。それと皆、これからの食肉はトカゲ以外の物、四足や鳥、魚をメインとする」

「カケル…、トカゲ、美味しいの」

「完全に絶えてしまったら美味しいも何も言えないだろ。それに他の龍に俺達が減らし過ぎたのがバレて見ろ。末代迄恨まれるぞ?」

「獲り過ぎちゃいました、かねぇ」

「俺も遠慮無しに頼み過ぎたんだ。人のエゴで絶滅させるのだけは何としても避けたい」

考えてみたらママ様の所だってトカゲを食わせたりはして無かった。

「なあリュネや」

「はぃ…」

「トカゲの生態について教えてくれないか」

「ええ、分かる限りでしたら」

今夜の出勤は急遽お休みにしてもらい、対策を練る事とした。


 夕食後、場所を移して会議を行う。場所は賢者ノーノの居るカロ邸だ。集まったのはミーネ達三姉妹に賢者ノーノ、騎龍の家系にしてバルタリンドギルドマスターであるカロとサポート兼お茶汲みのアルネス、そして議長の俺。

「皆、急に場を設けてもらい感謝する。では、レッサードラゴンの個体数減少を抑制、及び回復させる為の対策会議を始めようと思う」

向かい合わせの長ソファーに各三人、龍と人が向き合って、俺はお誕生日席だ。

「一先ずの対策はリュネには話したが皆にはまだなので初めにそこから説明しよう」

一先ずの対策とは獲らない事だ。それを聞いてカロは挙手をする。

「カロどうぞ」

「確かにその通りですが、現状人種でトカゲを狩れる者はカケル様の他にはジョンさん、機会次第で少年隊の三人くらいかと」

「何方も機会が無いから実質俺と龍が対策を守れば問題無い訳だな」

「はい」

「では次に、回復についてだ。獲らなければ増えるのは当たり前だが、増えない可能性もある」

  「出会いが無いと言う事ですね?」
ノーノが挙手して口を開く。偶には声張ってこ?

「その通りだ。飛べると言っても自分の縄張りからは中々出たがらないのだそうだ」

「龍もトカゲも変わりませんねぇ」

「妹よ、手を挙げてから話せ。では旦那様…」

ミーネが手を挙げる。

「どうぞ」

「個体数の回復と言っていたが一つ所に集めて飼い慣らし、数を増やすと言うつもりなのだな?」

「出来ればそうしたい。だが問題もあるだろう。石から肉迄何でも食べるトカゲだが、一ヶ所に集めて食料を賄い切れるか。それと肥育が出来るのかと言う問題がある」

「主様よ」

「どうぞ」

「食う物に餌を与えて肥やして喰らう…。餌が肉なら我等が餌となる肉を食っても変わらんのでは無いか?」

「その通りだ。だがトカゲにとって一番の捕食者は龍だよな?」

「そうだな」

「他の龍に文句を言われたら困るだろ?」

「…そう、だな」

実際、龍の食欲はそこ迄では無い。仔龍の時にある程度は食べるが、大人になると世界に広がる魔素を吸ったり小さな獣を捕食するだけで事足りる。けど偶に物凄く食べたくなる。それが龍にとってのトカゲなのだそうだ。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

アレキサンドライトの憂鬱。

雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。 アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。 どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい! 更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!? これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。 ★表紙イラスト……rin.rin様より。

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

処理中です...