女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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陰口

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「売れればな。先ずは施設のレンタル品にしても良い。雨あんまり降らないし、売れにくいとは思ってるんだ」

「そうですね。外に出なければ使わない物ですし」

「カケル様、イゼッタ様、お茶でございます。あの、それで…」

 俺達にお茶を供してくれたアルネスが、意見があるとの事で聞いてみると、雨具以外での用途があれば売れるかも、と。確かにシャリーの言ってた一人用テントみたいに、雨具に代わる使い道があれば多少の売れ行きはあるかも知れない。

「それと、やはり屋根と布は分けても良いかと」

笠だけで使いたいって人も多いだろう。冒険者はマントを着けるし、武器が扱い難くなるのは死活問題である。

「取り外し出来るようにするのもアリか」

「カケル様、寒さや暑さに耐える造りにするのはどうです?此処では難しいと思いますが、ウラシュ島やノースバーなら需要があると思います」

防寒、防暖としての使い方か。シャリーも考えたものだな。布の素材を変えてメッシュや起毛にしたり、風や火の属性魔石を仕込んで冷暖房機能を付ける事も可能か。

「島に戻って試作してみるよ。二人共参考になった」

「恐れ入ります」

「良い物が出来ると願ってます」

二人に礼と別れを告げ、一人島へ戻る。イゼッタはもう少し残ってくってさ。

 ミーネの子達の部屋でお昼寝の付き添いをしながら雨具を作る。笠単品は直ぐに出来るが、外套部との接続に悩む。

「ボタンで留める、か…」

笠側にはボタンホールとなる紐を付け、外套側には丸ボタン。視界を得る解放部以外を留めて、後は軽量化を考える程度だな。
次に外套部。雑木紙を一々手加減しながら伸ばすのは面倒なので型を作ろうと思う。雑木を練り、大まかな円錐を作ると先を丸めて笠を押し付けた。笠を外して一度固め、ほんの少し小さくした。

(…前開きに出来ん)

このままでは最初に作った被りタイプなので型を修正。前身頃をダブルになる様膨らませ、切り取り線が分かり易いように彫り込みを入れたりした。
出来上がった型に雑木紙を被せて《伸縮》。型に張り付き動かなくなったのを切り出して、ボタンやら紐やら取り付けて外套部が完成した。

笠と組んで浮かせてみる。見た目は牧場に建ってるサイロの様だ。服飾デザイナーさんは凄いんだなと改めて感じた。自身の限界に達し、俺は目を瞑る。さっきからナコちゃんに顔を舐られペシペシされて、集中力は飛んでってしまったのだ。勿論魔力も吸われてる。ペシペシ音に目覚めた子等も起き出して、躙り躙りと魔力に向かって寄って来る。腕に二人、脇腹に一人が取り付いて、半分寝ながら魔力をちゅぱる。愛しい我が子に囲まれて、魔力欠乏で死ぬなら本望である。おやすみなさい…zzz


「あ、お目覚めですか?」

 目が覚めて、倦怠感。ラビアンの一人が気付いて声を掛けてくれる。辺りはまだ明るいのでそう時間は経って無さそうだし、周りで寝転がってる我が子達を見るに、日を跨いでも無さそうだ。顔が涎でカピカピだしな。

「だいぶ吸われたから、リームにはそう伝えておいて」

「はーい」

起き上がって《洗浄》すると荷物を仕舞い、あまり使わない魔力回復をして部屋を出る。
そしてやって来たのはバルタリンド。エメラルダスの防具屋だ。午後を過ぎて、休みか早番の冒険者がチラホラと盾や鎧を物色してる。カウンターに座るエメラルダスは早く買えとか思ってそうだ。

「いらっしゃ~、あ、カケルさんいらっしゃ~い。鎧の調子はどう?」

俺を見て声色変えると他の客がコッチ見るからやめて欲しい。

「頗る良いぞ?ちんぽ野郎の陰口が減った気がするよ」

「それ、気にしてたの?」

「言われるなら女に言われたい」

「で、今日は整備するの?」

「否、こんなの試作してみたんだけど、俺には服を作る才能は無さそうでな。ちと見てくれないか?」

「服ぅ?」

取り敢えず取り出して見せてやる。最初に作った被りタイプと、さっき作ったセパレートタイプ。更に単品の笠だ。



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