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切った張ったの世界

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 実家の護衛をするとなってもおいそれ直ぐにとは行かぬもの。寝具店に場所を変え、親父殿に威圧的交渉をする悪徳冒険者が母親に窘められてる。

「サミイ、商人の移動は準備が掛かるものよ?分かるわよね?」

「けど、ママ。カララさまが…」

「サミイ。カララ、我慢出来る子なの」

「カララちゃんは良い子ですね~。旅の支度が終わったら呼びに行きますから、カララちゃんもしっかり準備するのですよ?」

ママ上殿の膝に乗せられたカラクレナイがママみに落ちた。よしよしなでなでされて溶けておる。渋い顔のサミイだが、準備が要るのは冒険者も然り。双方準備万端で出発する、と言う事で一先ず解散。サミイとカラクレナイ、そして付き添いのミーネは買い物に行くと出て行った。

「サミイが冒険者…、親としては危ない事はして欲しく無いのですがね」

「大丈夫。死んでも生き返せる程の魔力に、近付くだけで悪意が滅ぶ程の過剰戦力ですよ」

「それは、そうですが…」

「うふ、やらせませんよぉ~」

男親は心配になるモノなのだろうな。俺も娘達が切った張ったの世界に生きるとなれば心配になると思うし。一方、女親は元冒険者な事もあって努めて冷静だ。カラクレナイの居なくなった膝にメッツ君を乗せて、後頭部におっぱいをムニムニ押し当てていた。目視すると鋭い者にチクチクされかねんので《感知》で見る。良いなぁ。
さりとて羨んでばかりも居られない。サミイ達は出て行ってしまったが、本来予定を詰める為の話し合いに来たのだ。サミイは家の通例行事だと思って居るが、冒険者としての行動はまた違う。依頼人の親父殿に、五龍とサミイで七人が、リアから下賜されたホルストの曳く荷車に乗り切れるのか。普通の冒険者ならその辺りも話し合うべきなのだ。
まあ、普通じゃないけどな。
詳しくはまた後日と言う事で、セカンドハウス経由で島へと戻った。

「カケル、ランクあげよ」

 食堂で豆乳練乳黒蜜豆腐のプルプル食感を楽しむネーヴェがいきなりな事を言い出した。因みに豆乳練乳は煮詰めてしまった豆乳に加糖する事で自然発生した甘味ソースである。

「それってサミイ達より先にランク上げしたいって事か?」

「んーん、リュネ達くらいにしたい」

成程。ネーヴェも負けず嫌いなのか。

「それなら護衛依頼が終わったら何処かで貢献度を上げようか」

「ん」

「しかしさ、何でランク上げしたくなったんだ?普段サミイ達の仕事に一緒しないだろ」

「ん。みんなに自慢する…んふ~」

想像して鼻息荒くしているが、あンた、存在自体がマウントの塊だよ。

「ジョンのトコ行ってトカゲでも狩れば直ぐだろうな。それに、護衛依頼が終わればCになれるだろ」

「わかった。終わったら一緒にいこ」

チケットを束で貰っておかないとな。

「カケルさぁん、美味しそうな物食べてますねぇ~」

俺は食ってないのだが、リュネが子供達を浮かせてやって来た。お散歩の最中のようだ。

「リュネもおいで。代わるから豆乳練乳黒蜜豆腐食べなされ」

「はぁ~い。それにしても長い名前ですね~」

「しろくろトーフ」

白蜜は別にあるから白だとよろしくないんだが、白蜜あんまり作らんし、良いか。リュネにしろくろトーフを献上し、赤ちゃん達の世話を代わって癒される。皆魔力を練るのが上手いな。俺から吸い上げた魔力を体の中でこねこねしてる。すぅーっとする感覚、これが、母性か。

「魔力、吸われすぎ」

「美味しいんでしょうねぇ。これもプルプルで美味しいです」

「ああそうだ、リュネは聞いてると思うけど、Cランクからはギルドからの強制依頼が来る事がある。特に重要な事が無ければ断れないから、受ける前は事前に打ち合わせしような」

「そうですね、碌な事にならなそうですし」「ん」

「皆様、お昼の支度に入ります」「「「失礼しまーす」」」

ラビアン達が昼の支度をすると言う。邪魔にならんよう静かにお世話した。





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