上 下
1,213 / 1,519

危険なヤツ

しおりを挟む


 午後は丸々空いたので、長々と放置されてた作業に勤しむ。貯まりに貯まった金属精錬だ。箱の中でごっちゃになった金属粒やナゲットを同じ種類で分けて行き、スキルで出来るだけ不純物を取り除いてギュッと練り固め、一つのインゴットにして行く。
箱詰めされた雑金属は保存箱から出す時に箱の状態で出る。それを開けて中身を《収納》するのが少し面倒だ。そしてインゴットは全て同じ大きさと言う風には出来無い。不思議な事に、微妙に大きさと重さが違うのだ。地球だと僅かに大きく作り、端を削って調整するんだっけかな?コレはもう一度加工した方が良いだろうな。
残った不純物も迂闊に扱えない。まだ《収納》から取り出しては無いのだが、危険なヤツが混ざってる。取り出したら体が穴だらけになっちゃうヤツなので、濃縮させないようにしながら不純物の鉛を集めてる。捨てるのは何時になるのやら。
 保存箱から箱入り金属を回収したら、残った空箱は再び保存箱に戻す。空箱に気付いたプリキオーネが再利用するからだ。

「カケル様、お腹が空いてるのでしたら何か作りましょうか?」

俺が厨房でゴソゴソと作業していると、久しぶりにシャリーが島に戻って来た。

「お帰り。送られた金属を固めてたんだ。フラノノも戻ってるのか?」

「はい。お二方も戻られて、今はリア様の所に居ますね」

「なら、アルネス一人?」

「ラビアン達がお手伝いに来てますから。経験者ですし、心強いですね」

慢心はするなと念を押し、黒糖黄粉豆腐を供して厨房を後にする。ラビアン達が羨ましそうに見ているが、お前等洋菓子食ったろが。


 俺にはまだやる事がある。これも延び延びになっていた魔道具作りである。そしてラビアン達の内職により完成した製品の発送だ。弥一を送ってく時に一緒に持って行けば良かったぜ。さりとて過ぎた事。箱に書かれた数量と送り先を見て、先ずはバルタリンドに《転移》した。

「こんにちはー」

「いらっしゃいませ?カケル殿、今日は何故此方から?」

「バックヤードに近いからだね。注文の魔道具を持って来たよ」

「おお、それなら此方も。以前頼まれていたシルクワーム、全て糸と布に変えられましたぞ」

繭殻を糸や布に加工したのでは無く、糸と布の下取りとして売り捌いたそうだ。此方の為だけに工場を占拠出来無いし、買った方が早いのだ。
ワーム製品と魔道具を交換し、柱の影から覗くエージャをチラ見して店を出た。

 次に来たのはエディアルタ。俺の話は通ってるようだが、相対した受付嬢に下から上へと舐めるように見られる。

「どうした?」

「いえ、聞いていたのと姿形が違うので…」

「今鎧、洗ってるんだ。臭くなっちゃってな」

「はぁ。取り敢えず上に聞いてきます。一旦離れてお待ちください」

腑に落ちぬ様相で階段を上がって行ったが、何を不審がる事があるのだろうか?暫くして階段を降りて来たのは先程の受付嬢とギルマス。

「お?おお、確かにカケルだ。女達は元気か?」

「久しぶり。亭主元気で留守が良いってな。商材持って来たぞ」

「ガハハッ!お前のソイツも店仕舞いしたってか」

ああそうか。アイツが萎えてるからか。本人確認は顔でしてもらいたいが、鎧の時はメット被ってたしな。買取りカウンター奥の会議室に移動して商材の確認と受け渡し、金を振り込んでもらって業務終了。

「大量に持って来るのも良いが、小分けで持って来ても良いんだぞ?」

「多忙にかまけてついつい忘れがちになっちゃうんだ」

「コッチはともかく、アッチはコレが生命線だからな?コイツ等が行き渡る迄忘れんなよ?じゃあな」

用が終わるとさっさと出て行く角刈り髭マッチョ。残務に残された受付嬢の尻を揉み、剥き出しになったアイツをスカートの下から押し付けた。

「コレが店仕舞いに見えるか?」

「見っ、見えてませんっ。それとっ、好きな人、居るんで…ソレだけは…」

舐らせるだけで許してやった。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

アレキサンドライトの憂鬱。

雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。 アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。 どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい! 更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!? これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。 ★表紙イラスト……rin.rin様より。

RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。 それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。 特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。 そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。 間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。 そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。 【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】 そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。 しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。 起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。 右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。 魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。 記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...