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私腹を肥やす
しおりを挟むハシュラに色目でも使おうとしてるように見えるのか、カロが睨みを利かすのをスルーして話を続ける。
「後で水と火の属性魔石持って来るから、風呂の湯を沸かすのに使ってくれ」
「え?良いのですか?」
「属性魔石が使えるように改修したしな。これでぼったくりとは言えなくなるぞ。呉々も盗られないようにな」
「承りました。では後程」
部屋を出るハシュラを見送ったカロが俺の隣に座る。
「カケルしゃまぁ~ん」
「カロォ~」
イチャイチャからチュッチュしてヌプヌプ。時間が無いから手短に致した。
島に帰って属性魔石を作る。トカゲの魔石だと本当に盗られるかもなのでもう少し小さいヤツ。何時ぞや拾ったゴーレムの魔石を加工して、リアとイゼッタに魔法を込めてもらった。
「湯の質が良くなりますと、此方の施設の客が減ってしまいそうですね」
「気にしなくても良いさ。男は客として見てないし、女も安い方が良いならそれで構わん。それより公共の湯が一つしか無いのが問題だ。ぼったり賂を肥やしたりしても文句言えないんだからな」
「自由競争で御座いますね」
「仲良くしたら良いのに」
「仲良く私腹を肥やすのか」
「ん~~」
「そう言う不正を正す団体を作るのが良いんだが、それもまた飲み込まれたりしてな」
「政を司る者が正しくなければなりませんね」
是非そう在りたいモノだ。
出来立ての属性魔石をカロに渡しに行った帰り、さっき凹ませた土地に水を満たしてやろうと外に出る。ブフリムがちょこっと歩いているが、此方を見付ける前に《威圧》を当てて逃がしてく。金にならん殺生しても面白くないもんな。そして一オコンしない内に元アジトであった凹みに辿り着く。
水の棒で注ぐのは時間が掛かり過ぎるので、偶には魔法で注いでやろう。魔力を練り練り掌に集め、ダムの放水をイメージして水を出した。
「うぶっ!」
普通に立ってたモンだから、水の勢いに負けてぶっ飛んだ。転げる瞬間《逃げる》が発動したので地面や立木に激突するのは逃れたが、安定する迄の間に辺り一面水塗れ。落ち葉や下草を根こそぎ洗ってしまった。
「ぶひー、飛んでやれば良かったぜ…」
池になった凹みには泥や草がたっぷりで、何だか見栄えがよろしくない。こんな所に人等居ない筈なので、空に上がって更にドバドバ水を注いで周りに溢れさせて行く。動物が溺れたら可哀想なので周囲に《結界》も張っとくか。
《結界》に堰き止められた水が《結界》の中に満ちる。後は地面が勝手に吸収してくれるだろう。《結界》を解いて流れ出す水の中に何か混ざっているが、もう死んでるし今更だな。人じゃ無いので捨ておいて、《転移》で島へと帰った。
「お帰りなさいませ、お風呂にしますか?」
「只今。ヘマやらかしてビタビタになったった」
「お茶目さんですね。お背中流します」
出迎えたテイカと二人で風呂に入ったら、また他所の女と致した扱いを受ける。
「泥臭いだけでした。無罪です」
「テイカ、ずるい」
「あたしも致していませんよ?」
本当に体を擦ってもらっただけで、おっぱいしか揉んでない。俺は潔白だ。ズルくない。
何とか疑いが晴れて夕飯。今夜は野菜が多い気がした。
「くっさ!」
翌日、海竜の鎧を《収納》から直接装着し、吐きそうになる。ちゃんと《洗浄》したのだが、臭いのを吸ってしまったようだ。直ぐに仕舞って《洗浄》《消臭》。イゼッタが抱き着いてくれる迄続ける。
「ツチムシの匂いしてた」
「聞かない名前ですね。虫ですか?」
「ん。箱の下とかにいるヤツ」
「落ち葉を引っくり返すといる虫ですか?」
大陸が違うと名前が違うのか、イゼッタが手振り多めに力説するが、地球の生き物で予想するにワラジムシみたいな感じだろうか。シデムシの幼虫かも知れない。とにかく俺は、虫の匂いがしたそうだ。
天を衝くアイツを下方修正し、ライデンの服を着て過ごす事となった。
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