上 下
1,194 / 1,519

気化熱

しおりを挟む


 時短箱に入れていたペーストを取り出したら、火に掛けて、掻き混ぜたり白糖を入れたりして一度冷ます為時短箱へ。コレのお陰でだいぶ作業が捗るな。

「折角だしクリームも作るか」

「それなら私達でも出来ますね」

「なら、とろとろな感じで頼むよ」

「はあーい」

豆乳貰って少し休憩。ラビアン達は俺の搾ったサンの実を細かく刻んで白糖と一緒に豆乳に投入。泡立て器を使い混ぜだした。豆乳の、仄かな甘味が染み渡る。

「カケル、はよ」「はよはよ」「はよなのっ」

待ち切れない妻と龍が俺を急かすが、生地が焼ける迄は待つしか無い。生地の焼ける甘い香りが空腹中枢を刺激して、暴動が起きるかも知れない。休憩は、終わりだ。

「カケル様ー、多分焼けたのですよー」

時間的にもそろそろだろう。良い匂いしてたしな。焼き鍋からスポンジを浮かせて摘出し、横から串を刺してみる。…問題無さそうだ。薄紙を慎重に剥がし、浮かせて冷ましとく。
冷ましていたジャムを取り出して、再び火に掛け搾りサンの実を添加して、再び箱に入れてジャムは完成。

「カケル様、クリームはこれで良いですか?」

今度はクリームか。とろとろより少しだけぽってりだが大丈夫だ、味も問題無い。
味見すると女達の視線が痛い。一部本当にチクチクするが、味見しないでする料理に真面な物は無いんだぞ?視線に急かされジャムを取り出し、手の甲に乗せてペロリング…痛いっ!

「リューネー…」

「うふ、私じゃありませぇ~ん」

宙に浮かせて冷ましていたスポンジはまだ温かく、もう少し冷ます必要があるな。

「リーム、乾かないように冷ませられるか?」

「我に頼むとなると、凍らせない程度だな?良し」

薄い水の壁がスポンジの上下に並び、更にその上下から優しい風が当たる。気化熱で冷ますのか。魔力で冷ますと食べられない子も出ちゃうからな。良く気の回る良い女だ。

「こんな物でどうか」

「ありがとう。後で乗ってやろう」

「カーケルさぁーん」「旦那様よ」

皆乗るからっ!

冷めたスポンジを二分割する前に、上の膨らみ過ぎた所を切除する。捨てるなんてとんでもないので粉末にして取っておく。スポンジを二分割し、上側の両面と下側の上面にジャムを塗る。残らせても戦争が起きるので全部使うぞ。そしてクリームを塗って挟み、上からもクリームをナッテする。上から粉末スポンジを振り掛けるので多少ザラ付いてても平気だ。最後に糖蜜漬けのスライスを足りるよう、且つ余らせないよう、慎重に並べ、完成した。

「ミーネ、此処に居る分と、カロ邸に居る分、セカンドハウスに居る分で切り分けてくれるか?」

「それは旦那様の仕事であろう?」

面倒事を避けたな?諦めて八×八分割で切り分けた。確実に余るので戦争不可避だが、もう諦めた。切り分けられた悪魔の食い物の内、二十一個を《収納》すると、女達の視線が飛んで来る。セカンドハウスとカロ邸に持ってくんだってば。残りは全てこの場に居る者で消費してもらい、バルタリンドへの直通で移動した。

「カケル様?ん~~、これはまた、素晴らしい香りで…」

「あっちで無理矢理作らされたからさ、持って来ないとな」

「お茶を用意しましょうか?」

偶々カロの部屋を整えていたアルネスに鉢合わせ、俺から香る匂いで此処に来た理由を察せられる。

「否、カロが帰ったら皆で食べてくれ。シンクも悔しがるからな。それより体は平気か?ラビアン達は皆島に居たが」

「まだ膨らみもありませんし、無理はしておりません。シャリーさん達のお陰でもありますね」

シャリー達も働いているか。何もしないと暇だろうし、無理はするなと告げてセカンドハウスに向かった。

「カケル様」「甘いです」

「「甘い匂いですっ」」

「島で作らされてな。お前達の分を持って来たんだ」

「「ありがとうございます、ありがとうございますっ」」

抱き着いてぺろぺろして来るので友恋達が帰って来る迄お風呂にインしてしまった。
ケーキ、美味しかったです。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...