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男の子
しおりを挟む夜景の時間になると、見張りと眠気覚ましを兼ねてか三組の女達が焚き火でソーサーを焼く。焼くなら直火焼きの方が美味いと言うのだ。薪の匂いにパリパリになった表面は確かに美味い。だが時間的余裕が無い場では魔法での調理も仕方無かろう。
昨日より少し大きめに作られた焚き火を囲むように煉瓦の板が立てられ、何枚ものソーサーが流れ作業で焼かれて行くのを眺めながら、夜の空きっ腹を耐え忍んだ。
日が登り始め、朝食の時間になると、今日も稼ぎに出る友恋フレンズ少年隊が湖を渡り陸に上がって来る。
「おはよー」「「はよー」」
「お早う。皆は今日も仕事か」
「家に居てもつまんねーし」「またジョンのトコ連れてってくれよー」「ハークにもー」
此奴等だけでも行けなくは無いが、保護者としては危険は避けたい。
「ブチ達の生活もあるだろうし行きたいなら話しておくんだな」
「「「はーーい」」」
「お前さぁん、オレもダンジョン行きたいぜぇ」
「アタシも行きたいかも」
「予定組んどけ」
獣人五人はダンジョンが好きなようだが、人種な慎重だ。
「ね、ねえカケルさん。また変な爆発する敵なんて出ないよね?」
「クリューエルシュタルトでは見た事無いな」
「私ドラゴンは無理よ?」
「支援に集中するんだな。アズの指示なら皆聞くだろ?」
妾達に抱き着かれ、弟分にはソーサーを二枚奪われて、騒がしい連中は魔動車唸らせ出て行った。
「翔よう、俺もドラゴン殺れっかな?」
「無理だな。お前飛べねーじゃん」
弥一も男の子、ドラゴンと聞いて危険な思想に陥るが、線引きしてやるのも先輩冒険者の務めであろう。他の男の子共も俺達の会話を聞いて苦笑い、無謀な冒険は弁える事だろう。
「カケルよ、お前のように飛ぶ事が出来れば倒せるのか?」
「飛ぶ以前に装備が必須だよ。魔剣が無いと鱗が斬り難い」
魔剣と聞いたダミヤン君の顔が曇る。買うに買えない代物だからな。とは言えダンジョンドロップされる頃には直ぐ近くにドラゴンが居る訳で、遠征費用や継戦能力の問題もあり入手難易度が高いのだ…とジョンは愚痴ってた。
「勿論彼奴等飛ぶからな。こっちも飛んだり跳ねたり出来なきゃブレスでイチコロよ。もし見付かって逃げるなら、バラバラに逃げるのが良いだろうね」
「それ、誰かが死ぬのよね?」
「生き残れたら良いな」
「走る目的が、分かって来た気がします…」
「ドラゴンなんて一生に一度見ないんだ。気負わなくて良いぞ」
自分達がトカゲ相手に何とか出来ると思っている内は何にも出来ずに食われるぞ?食われる前に飯を食え。朝食を済ませ、片付けと準備を整えたらバルタリンドに向けて出発した。この辺りは魔動車が蹂躙してるので禄な獲物が居ない。なのでホルストを《強化》し回復掛けて、車両を少し浮かせて速度を上げさせる。乗り心地が良くなって、皆に睡魔が寄り添った。俺も少し寝る。
昼休憩を挟んで野営地に着く迄敵の姿も無く、治安が良過ぎて午後は三組と合同で走った。走ってないと寝るしか無いからな。久しぶりのランニングで良い汗かいたぜ。《洗浄》が久しぶりに気持ち良い。
「翔ぅ、頼むよぉ~」「「「カケルさぁ~ん」」」
俺や他の男共が《洗浄》で済ませていると言うのにこの元デブと女共は…。夕飯の片付けが終わると直ぐに徒党を組んでやって来る。手伝いしたとか何とか言うが、それは皆やってるからな?
「明日迄ダ~メ。それに他の人も居るでしょうが」
今日の野営地には珍しく野営者が居る。バルタリンドから来た商隊と、その護衛のテントが俺達のサイトの対角側に陣取られ、焚き火を囲んで夜警の支度を始めてた。野営地が狭いのもあるが、知らない顔の商人だし、下手にイザコザしたく無いのだ。
「弥一、俺、何かやっちゃいましたか?だぞ?」
「ぬ、そう言われると…」
弥一が折れて憤慨する女子達だったが、スイーツで手を打ってくれた。弥一よ、まさかそれを狙って居たのか!?
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