1,183 / 1,519
ハンバーグ
しおりを挟む今夜の風呂は屋根付きとなり、階段以外の場所に煉瓦の板が乗せられた。屋根に乗って飛び降りる馬鹿が居るかも知れんが、そこはまあ自己責任で。
「翔~、ゴーラ獲ったどー」
六組の面々は森に入って一狩りして来たようだ。刃物で腹を突かれて血の滴るゴーラを五人で抱えてやって来る。
「血抜きと臟抜きやってから来いよ」
「俺達がやるより飯作る側がやった方が納得出来るべ?」
「せめて血痕を残すな。デストロイヤーとかなら追跡されっぞ」
「誰よそれ」
「熊っぽい奴だ」
取り敢えず今夜の主品は確保した。《収納》して精肉しておこう。
「風呂作ったって事は、長居するんか?」
「ああ。ホルストの休養で二泊する。皆もしっかり休んどけよ」
「それよりさ、風呂入らせてくれよ」
「女子が先な。夜更かししたくないし」
「ヤイチってさ、何でそんなに風呂好きなんだ?」
「汗っかきなんだよ」
痩せても汗をかくのか。他の皆も多少なりと汗をかくが、元デブのかく汗の量はかなりの物だ。一先ず五人を《洗浄》し、返り血と汗を消してやる。
「それ、便利だけどやっぱ風呂だな」
「お前は覚えとけよ?移動中に風呂なんて入れんのだから」
「まあ、そうだよな」
「ヤイチ、お前覚えられんのかよ」
「それすげー便利だろ」「武器の脂が取れるしな」
「努力と根性で覚えるさ」
メモって破くだけだろうが。暇になった男達は、水辺でキャッキャしてる女子を見に行った。俺も見に行こ。
水に足を浸けてキャッキャする女達、畔に座ってそれを眺める男達。自由時間の使い方は自由だ。
「あの、カケルさん。コレって…」
キャッキャしてた女の一人が石ころを持って寄って来る。石の中に、青い塊が見えている。
「宝石の原石だな。売れば幾許かにはなるかもね」
キャッキャしていた声が止まった。そこからは女の欲を眺める事になる。
「あんまり深い所行くなよ~」
「「「……」」」
返事は無い。此処、俺ん家。家主の許可無く採るのは勘弁して欲しいが、そんな事言ったら女のコミュニティに干されそうなので言えん。
「ごばっ!げっほっ!?」
着衣で淡水に潜るとそうなるわな。溺れ切る迄放置して人工呼吸…は流石に可哀想なので、浮かせて畔に上げてやる。
「大丈夫か?」
「ズギル…ゲホッ!ぎまじた…」
目と口と、鼻から水を出した女が酷い声を上げる。
「それは、良かったな」
「ばい…。ゴホッゴホッ、…簡易、鑑定です」
ほう。この短時間で…、否、これ迄の上澄みがあったのだろうな。小さく呟いたその女は、命懸けで握りしめていた石をじっと見詰め、その殆どを投げ捨てた。そして無言で一つの石を懐へ仕舞った。悪い笑顔である。
「さて、飯の支度をするぞ~」
女達は必死に素潜りしているが、飯の時間は待ってはくれない。有志を募って飯の支度に取り掛かる。
「翔、ハンバーグ食いたい」
「玉葱も卵も無いぜ。ケチャップにソースもな」
「とにかくソレっぽいのが食いたいっ」
痩せても食に貪欲な男である。焼肉ばっかで飽き気味だし、何か考えるかな。
薄ソーサーとスープを有志達に任せ、俺は肉料理に集中する。安酒場のステーキ程の厚みで肉を切り出し、食べ難い筋等残った部位をミンチにして、塩と香辛料を練り混ぜる。で、鉄を練って棒にして、肉とミンチを交互に重ねて形を整え、煉瓦と火の鉄板を組み合わせた窯で火を通す。熱を帯び、回る肉塊から肉汁と良い匂いの煙が立ち込めるのを周りの皆が注視する。
「カケル、今日のは偉く手間が込んでるな」
「美味いんだが手間なんだ」
ムームードの問いに答えると、剣鉈を取り出し《洗浄》し、焼けた側から薄切りにして皿に盛る。皆が肉食獣の目をしているのが分かる。
「翔!ケバブかっ!?」
「知っているのかヤイチ!?」
「ああ、回して焼いてるのでドネルケバブですね。ソーサーに挟んで食べるのも美味い、異国の料理です」
「そんな物晩餐会でも見た事無いっ」
そりゃあ無いだろうな。アンデリーでもカケラントでも、出たのは焼肉だったし。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる