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目指すボディ
しおりを挟むボコボコ劇を見ていたお手頃価格達の、俺に対する視線が良くも悪くも一目置いた物に変わり四日、近い者と遠い者に二分した。手伝いはそれなりにしてくれるし、敵意が無いだけ良いとする。
「翔っ風呂はよ」
「「「お願いしまーす」」」
今夜は二日に一度の風呂の日だ。俺が決めた訳では無いのだが、夕食の片付けが終わったのを見計らい、弥一の掛け声で女達が媚びて来る。ヤレヤレだが、女の良い匂いは男を健康にさせるので嫌とも言えん。
階段付きの壁と床、浴槽を作って湯張りして、今夜は弥一が一番風呂のようだ。背脂たっぷりの頃であれば女達は決して許さなかったであろう。だが今や弥一も稍細体型。不出来な顔に変わり無いがな。
「翔は入らんのか~?」
「男に見せる体では無いのだよ」
俺を含め、他の男共は水タオルでの清拭で済ませたり、俺の《洗浄》にて洗われる。六組の連中や風呂の日以外の三組はコッチ派だ。
「なら俺も入って良いだろうか?」
遠慮がちに来たのはムームード。黒い森で入ったのが忘れられなくなりチャンスを伺っていたのだろう。女達からの許可を得ると、イケメンスマイルを振り撒きながら階段を上がって行った。
「お風呂の時間が無くなるじゃない。もう一つ作りなさいよ」
イケメンが壁の向こうに消え、《結界》の中に入る。音の往来が無くなると、忖度にボヤく女が一人。
「無くなるのは寝る時間だろ?」
「揚げ足取らないで。で、作る気は無いのね?」
「先に入れば良かったんだよ。起こしてやるから車の中で休んで来なされ」
「言われなくても起きるわよっ」
「起きなかったら、覚悟しろよ?」
尻を振り振り行ってしまった。明日の飯でも作って待つか…。
「翔よ、目指すボディがそこにあったぜ」
?。一オコン程して弥一とムームードが湯上り。どうやらムームードの体を見て、目覚めてしまったようだ。
「カケル、良い湯に感謝するよ」
感謝はお湯にで無く俺に頼む。自前の風の属性魔石から出る風でバサバサと髪を吹き上げ乾かすムームードは戦闘民族みたいだ。
風呂が空いたので三号車で休む女達を呼びに行くと、俺の足音を聞き付けたのか、ヘンプシャーが勢いよく飛び出して来た。
「あ、貴方…」
「風呂が空いたぞ?汗だくで何やってんだ」
「突然で驚いただけよ」
「皆、風呂だぞ~。早く入れ~」
「「「はーーーい」」」
お風呂セットを持ってキャッキャしながら通り過ぎる女達。残るは俺とヘンプシャー。
「顔色悪いな」
「目の前に原因があるんじゃない?」
俺はフツメン。きっとヘンプシャーにしか見えない何かがあるのだろう。
「魔法で治らない病気か。どれどれ…」
「何するの!?」
答えず《感知》で診る。
「…お前、焼いたのか」
「貴方には関係無いわ」
「依頼が終わる迄は関係者だ。Aランクなんだから治す金あるだろ。何故治さない」
「関係無い」
「男が怖いんだろ、お前」
「止めてっ」
「まあ、行かなくて正解かもな。治療院で眠らされて犯される、なんて話もあるし」
「…初耳よ」
「娼婦の中では有名な話だよ。しかし、他にも治療法あっただろ?俺の知る元苗床達は皆キレイなまんこしてたってのに…」
「……おかげで、二度と抉られなくなったわ。それで良いじゃない」
「だが毒素は残ったままだ。分かるだろ?」
「暫くしたら、治まるわ」
「そうか。周りに迷惑掛けても良いなら放置で良いが、相談なり、苦情を受けたら問答無用で処す。それで良いな?」
「嫌よ」
「なら今処すか」
「腕ずくで?」
「スキルでな」
身構えるヘンプシャーに《結界》を纏わせ固めると、身動き取れぬ只の案山子に成り果てる。口を動かし何やら喚いている声も、外には漏れず、野営地に居る誰の耳にも届かない。
『お前の声は誰にも聞こえん。《結界》張ってるからな』
驚いて、怒りの形相に変わる。《念話》が帰って来ないのは、スキルが使えないからだろうか。
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