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ガチギレ
しおりを挟む蒸し立てを《収納》し、更に増産。十リット待たねばならんのでロビーに戻ると女達の視線が刺さる。
「風呂、行くか?」
「「「…………」」」
違うっぽい。
「皆、お代わりが欲しいのだろうさ」
「コレ頼まれ物なんだよな…」
「はぁ、見損なっちまったよ…」「女王様、良いのかい?こんな旦那で」
酷い言われようである。ミーネも困り眉なので仕方無い。お代わりを出してやった。
「ふむ。中に《収縮》した空気を…、で、《散開》させてムすと…」
「生地に満遍無く行き渡った空気の泡が熱で膨らむ事で、生地が膨らんでふわふわになるんだ」
「理解した。家の分は私が作っておこう」
「助かるよ」
ミーネに作り方を伝授すると、出来上がりの形と照らし合わせて構造を理解したようだ。一先ず怪獣大戦争は回避出来たか。
「カケル様、全て滞り…甘い香り…」
買い付けから戻ったトリントンと女達がハスハスしてる。また在庫を出さねばならんのか。
「ご褒美を用意してあるよ。こっちにおいで」
「「「はぁ~~い」」」
十二個持ってかれた。もう一度増産せねば…。
なんやかんやと長居して、黒い森に戻って来たのは昼飯食って午後となる。…が、何か雰囲気悪いな。
「何だどうした」
「おう、おか」
「越前?」
「お奉行、聞いて下さりませ」
「…うむ」
……茶番である。
「で?どうしたね?」
「飯が不味いとか量が足んねぇとか。関係無ぇ事で一部が騒ぎ出してさぁ」
「成程。俺に喧嘩を売ってるのだな。成敗してやろう」
「それはもう終わった。ガチギレのムームードさんによる蹂躙劇で皆ドン引き。で、いまここ」
「なる」
育ちが良いだけに、そう言うのは余計に許せないのだろうな。
「カケルっ、済まないっ」
駆けて来て、頭を下げるムームード。
「随分と暴れ回ってくれたみたいだな。おかげで怒る気持ちも萎えちゃったよ。ムームードには暴れん坊将軍の二つ名を授けよう」
「そうか…。だが将軍はち、否、それは良い。二つ名も要らないからな?とにかく済まなかった」
「で、コテンパンにされたボロ雑巾達は?」
「グリオーソとヤイチに回復されて、今は部屋で反省させている」
「俺、頑張ったぜ?」
「そうかそうか、よちよち。では皆を集めてくれ。おやつにしようや」
「良いのか?それで」
「出掛ける用があって弁当にしたが、肉の塊渡して勝手に焼かせても良かったんだしな」
「それはそれで文句が出そうだが…」
回復を受けたボロ雑巾を含めて全員食堂に集まると、皆にふわふわを投げて寄越す。
「カケル、コレは食い物か?」
「蒸しパンじゃん!作ったのか!?」
「これが…」「ムシパン…」「あまひかほりぃ~」
「甘いのが苦手な者も居るとは思うが、疲れた時は甘い物、と言う。数は出せんが味わってくれ」
「「「わあーっ」」」
女達が一斉に食らい付く。ヘンプシャーまでもが躊躇いも恥じらいも無く齧り付いた。
「んっまああっ!」「はぐっ!はぐっ!」
アヘ顔晒す女達を見て、男達も口にし始める。
「ん、甘いな」
「不思議な作りだな…。粉物なのだろうが、この柔らかさは何だ?」
「この粒が特に甘いですね。種にも見えますが」
「んぐ、婆ちゃんのには劣るが、シルケ風ならコレはコレで、はむっ」
馭者の分含めて一人二つ。大変だったんだぞ?女は姦しく、男もそれなりに元気になったようで笑顔が増えて来た。女の笑顔は武器である。
「俺達は、食いもんなんかじゃ釣られねぇぞ」
「おいお前っ」
甘いもん食って元気が出たか、ボロ雑巾にされていた四組の奴等が愚痴を零す。
「しっかり食って何言ってやがる。元気になったんなら揉んでやっぞ?」
「カケルよ、回復する身にもなってくれんか」
ムームードがお手軽装備達を制し、グリオーソが俺を抑えるが問題無い。要は死ななきゃ良いのだから。
「夕飯は分厚い焼肉だ。腹ごなしに鍛えてやんよ」
バットを取り出し広い場所へと移動した。
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