1,173 / 1,519
ランクマウント
しおりを挟む商隊のホルスト車も、助太刀が来た事で安心したのか、俺達と擦れ違うと減速し、冒険者を寄越して来た。
「助太刀助かるっ」「降りられりゃコッチのもんだぜ!」
商隊から来た四人に分け前を持って行かれるのは嫌だな。
「野盗を殺った時と同じ状況だ。今度はヤイチ抜きで殺ってみろ!あんた等は見ていてくれ」
「「「おおおっ!」」」
俺の心を読んだのか、ダミヤンが代弁してくれた。
「ちょ!お前ぇ俺達の獲物だっ!」「横取りすんじゃねぇ!」
「逃げの一手が偉そうに。お前等のランク言ってみろ。俺はAランク、不可視の壁のダミヤンだ」
「え、Aランク…」
ランクマウントは好きでは無いが、今はとても有難い。不可視と言いつつ盾を持っている矛盾も、厳つい顔には反論出来ず、四人は黙ってしまった。
一方、ぶっ倒れてる弥一以外のお手頃価格達は隊を三つに分けて中央左右に展開し、チマチマ獲物を倒して行く。中央は粗人の壁。六組の四人が得物を振り振り牽制し、五組の五人は左右から漏れて来る少数に対応していた。
野盗よりは楽そうで、三十リット程で決着が着いた。半数程が倒れた所で敵が引いたのだ。移動方向は一緒だし、やる気があるならまた会えるだろう。追わずに戦闘を終了した。
「カケル手を貸してくれ!ヤイチもだっ」
怪我人出たのか。グリオーソが声を張り俺と弥一を呼ぶ。死に掛けの弥一に魔力を注ぎ、負傷者のケアに当たる。他の者は解体に剥ぎ取りだ。ディワダの手本を見ながらナイフでチマチマやるらしい。
商隊はと言うと、ダミヤンに礼を告げると、子供のお駄賃程の金を渡して去って行ったそうだ。
時間をだいぶロスしたおかげで夜は前回と同じ野営地となる。夜間の移動は危険だと言うので仕方無い。
「翔ぅ~、風呂作ってくれよぉ~」
「何だ?ちんちん痒くなったのか」
夕飯の片付けを終えて寝ようとしていると、弥一が風呂を所望する。
「一日三回はお風呂に入らないと気持ち悪くって」
「源さんちのお嬢さんかよ気持ち悪い。体を拭いて寝ちまいやがれ」
「ちいっ、明日は頼むぜ?」
「ちんちん良く拭けよ」
「あの、カケルさん。明日は、よろしくです…」
女子も入りたかったのか。先に言ってくれれば…。
その日の夜は夜襲無く、昼間のウォリスのリベンジも無かった。多勢に無勢だし、そんなもんだろう。
朝食を食べて二日目の出発。今日からまた弥一達は走るそうで、俺も外に出て、殿を走る振りして追い掛ける。
「皆、こまめに水を飲めよー」
「「「おう」」」
そこそこ速いホルストの足に着いて行く五人には、予め《抵抗》と回復は掛けてある。疲れはある程度抑えられるが、それでも汗はかくからな。塩を混ぜた不味い水を、チビチビ飲んで五人は走った。
汗をかくのはホルストも同じなようで、昼休憩では岩塩の塊をべろべろガリガリやっている。それを見たお手頃価格達も不味い水を飲む理由を理解したようで、それからは率先して飲むようになった。
野盗は居ないが野獣やモンスターは出る。夕飯の支度をしていたら、匂いに釣られてブフリムの群れが飛び込んで来た。が、多勢に無勢でボコにされ、耳と袋と鉄屑を剥ぎ取られていた。
「翔!風呂っ!」
「分かってる。飯が終わったら作ってやんよ」
その声に喜んだのは弥一だけじゃ無い。三組の女達から嬉声が上がる。
「ヤイチさんありがとー」
解せぬ。
しかし女達の笑顔には替えられん。食事を摂ると直ぐに階段付きの壁と床、浴槽に棚を作り湯を張った。後は好きに入るが良い。
女が上がり、男の数人が入って階段を降りて来る。明日の朝と昼飯を作り終えた俺は、自身に《洗浄》を掛けて寝るのであった。
「カケルさん、昨日はありがとうございました」
夜警を交代して暫く。朝焼けの中朝食の支度をしていると、三組の女達がやって来て頭を垂れる。
「また配膳の手伝いを頼むよ」
「「「はいっ」」」
女手があると男手が増える。良い事だ。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~
白い彗星
ファンタジー
十年という年月が、彼の中から奪われた。
目覚めた少年、達志が目にしたのは、自分が今までに見たことのない世界。見知らぬ景色、人ならざる者……まるで、ファンタジーの中の異世界のような世界が、あった。
今流行りの『異世界召喚』!? そう予想するが、衝撃の真実が明かされる!
なんと達志は十年もの間眠り続け、その間に世界は魔法ありきのファンタジー世界になっていた!?
非日常が日常となった世界で、現実を生きていくことに。
大人になった幼なじみ、新しい仲間、そして……
十年もの時間が流れた世界で、世界に取り残された達志。しかし彼は、それでも動き出した時間を手に、己の足を進めていく。
エブリスタで投稿していたものを、中身を手直しして投稿しなおしていきます!
エブリスタ、小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも、投稿してます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる