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ランクマウント
しおりを挟む商隊のホルスト車も、助太刀が来た事で安心したのか、俺達と擦れ違うと減速し、冒険者を寄越して来た。
「助太刀助かるっ」「降りられりゃコッチのもんだぜ!」
商隊から来た四人に分け前を持って行かれるのは嫌だな。
「野盗を殺った時と同じ状況だ。今度はヤイチ抜きで殺ってみろ!あんた等は見ていてくれ」
「「「おおおっ!」」」
俺の心を読んだのか、ダミヤンが代弁してくれた。
「ちょ!お前ぇ俺達の獲物だっ!」「横取りすんじゃねぇ!」
「逃げの一手が偉そうに。お前等のランク言ってみろ。俺はAランク、不可視の壁のダミヤンだ」
「え、Aランク…」
ランクマウントは好きでは無いが、今はとても有難い。不可視と言いつつ盾を持っている矛盾も、厳つい顔には反論出来ず、四人は黙ってしまった。
一方、ぶっ倒れてる弥一以外のお手頃価格達は隊を三つに分けて中央左右に展開し、チマチマ獲物を倒して行く。中央は粗人の壁。六組の四人が得物を振り振り牽制し、五組の五人は左右から漏れて来る少数に対応していた。
野盗よりは楽そうで、三十リット程で決着が着いた。半数程が倒れた所で敵が引いたのだ。移動方向は一緒だし、やる気があるならまた会えるだろう。追わずに戦闘を終了した。
「カケル手を貸してくれ!ヤイチもだっ」
怪我人出たのか。グリオーソが声を張り俺と弥一を呼ぶ。死に掛けの弥一に魔力を注ぎ、負傷者のケアに当たる。他の者は解体に剥ぎ取りだ。ディワダの手本を見ながらナイフでチマチマやるらしい。
商隊はと言うと、ダミヤンに礼を告げると、子供のお駄賃程の金を渡して去って行ったそうだ。
時間をだいぶロスしたおかげで夜は前回と同じ野営地となる。夜間の移動は危険だと言うので仕方無い。
「翔ぅ~、風呂作ってくれよぉ~」
「何だ?ちんちん痒くなったのか」
夕飯の片付けを終えて寝ようとしていると、弥一が風呂を所望する。
「一日三回はお風呂に入らないと気持ち悪くって」
「源さんちのお嬢さんかよ気持ち悪い。体を拭いて寝ちまいやがれ」
「ちいっ、明日は頼むぜ?」
「ちんちん良く拭けよ」
「あの、カケルさん。明日は、よろしくです…」
女子も入りたかったのか。先に言ってくれれば…。
その日の夜は夜襲無く、昼間のウォリスのリベンジも無かった。多勢に無勢だし、そんなもんだろう。
朝食を食べて二日目の出発。今日からまた弥一達は走るそうで、俺も外に出て、殿を走る振りして追い掛ける。
「皆、こまめに水を飲めよー」
「「「おう」」」
そこそこ速いホルストの足に着いて行く五人には、予め《抵抗》と回復は掛けてある。疲れはある程度抑えられるが、それでも汗はかくからな。塩を混ぜた不味い水を、チビチビ飲んで五人は走った。
汗をかくのはホルストも同じなようで、昼休憩では岩塩の塊をべろべろガリガリやっている。それを見たお手頃価格達も不味い水を飲む理由を理解したようで、それからは率先して飲むようになった。
野盗は居ないが野獣やモンスターは出る。夕飯の支度をしていたら、匂いに釣られてブフリムの群れが飛び込んで来た。が、多勢に無勢でボコにされ、耳と袋と鉄屑を剥ぎ取られていた。
「翔!風呂っ!」
「分かってる。飯が終わったら作ってやんよ」
その声に喜んだのは弥一だけじゃ無い。三組の女達から嬉声が上がる。
「ヤイチさんありがとー」
解せぬ。
しかし女達の笑顔には替えられん。食事を摂ると直ぐに階段付きの壁と床、浴槽に棚を作り湯を張った。後は好きに入るが良い。
女が上がり、男の数人が入って階段を降りて来る。明日の朝と昼飯を作り終えた俺は、自身に《洗浄》を掛けて寝るのであった。
「カケルさん、昨日はありがとうございました」
夜警を交代して暫く。朝焼けの中朝食の支度をしていると、三組の女達がやって来て頭を垂れる。
「また配膳の手伝いを頼むよ」
「「「はいっ」」」
女手があると男手が増える。良い事だ。
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