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求婚したい
しおりを挟む野盗共は夜襲かやらずに切り替えたようで、木に登った見張りを残して山間の谷間へ消えて行く。見張りが一人になったのを見計らい、《洗脳》を施した。
「良し。皆外に出ても良いぞ。糞の時間だ」
「見張りは殺ったのか?」
「そんなバレる事出来んよ。眠ったようにさせただけだ」
外に出て、組員達に他の組へ触れて回ってもらい、俺は便所作り。男はともかく女達には必要だろう。序に弁当箱も回収する。
「カケル、俺も塒に攻め込みたいぞ」
ディワダから話を聞いていたダミヤンは駄々を捏ねる。
「金属鎧だからダメって言われなかったか?それに付き添いの半分が居なくなるのは良くないぜ」
「だったら鎧は脱いで行く。代わってくれよ」
「俺は飛べるし死ななきゃ治せる。それに、この中で一番殲滅速度が早い。新手が来るかも知れんし、野営地を守るのは厳つい奴の方が良いんだ」
「そりゃあ、一番強えって事か?」
「外に居るレッサードラゴンをソロで殺れるんなら考えても良いぞ?」
「んな、出来もせん事を…」
「俺飛べるからさ、偶に襲われるんだよ。俺のテント見るか?」
信じてなさそうなダミヤンに、幸せの香り拡がるテントを見せてやる。
「うっ、なんて勿体無ぇ…」
「何よ、ドラゴンの皮なんて広げて」
トイレから出て来たヘンプシャーは一目でトカゲの皮と見抜いた。自分でも着てるし分かるよな。
「カケルの奴、ソロで狩れるんだとよ」
「あら素敵。本当なら求婚したいわね」
「残念だ。妻から増やすなって言われてんだ」
「冗談よ」
「規律を守れるダミヤンに紳士なムームード。回復の使えるグリオーソには残ってもらいたいんだ。分かるだろ?」
「ぬう…」
「ダミヤン、此処はカケルとディワダに任せよう」
「待機とは言え取り分は等分ですから、安心してくださいよ」
「そう言う事なら張り切る事ぁ無い。休むのも仕事だぜ?」
グリオーソの言葉に何とか納得したようで、糞しに行くと言ってトイレへと消えて行った。
野営地へ行く迄の間に皆の夕飯を準備する。四五六組は外に出られないので夕飯も弁当にしないとならんからだ。狭い荷車の中では作れないし、弥一に食われ兼ねんので、空に上がって煉瓦の床の上で一人、《洗浄》した容器に飯を詰める。
見張りは二人に増え、移動しては木に登りを繰り返している。野盗の本体は一ヶ所に集まり、動いたり動いてなかったりしているな。街道を挟んだ山の麓に、穴を開けたか洞窟なのかは分からんが、地下にアジトを構えてる。八十七人の男に十人の女。その内八人は動きが無い。寝てるのか、捕まってるのか。動いてる女は何方側か分からんな。要警戒としておこう。
夕方になり、野営地に着くと前三車両の連中が降りて警戒と設営に当たる。飯は前以て渡してあるからその辺は楽で良いだろう。
とっとと飯食って寝てしまった弥一は、他の者より肝が座っているようだ。
「此奴は長生きしそうだな」
「早死にすっかもしんねーぞ?」
「どっち道、長くは無いよな」
「楽しく生きられりゃ良いじゃ無えか。俺も楽しく行きたいぜ」
「皆、金貯めて女抱いとけよ?ヤらずに死んだら詰まらんからな」
「…そっすね」
「貯めなきゃなぁ~」
「洗濯してる女の前でちんぽ出してみ?気に入ってくれたらヤらせてくれっかもよ?」
「えー、母ちゃんの歳の女とは、ちょっと…」
「俺も、同い歳くらいのが良いです」
馬鹿な奴等め、美味い女を知らんようだな。
「ん…、また女の話か」
「おはよう弥一君。まだ賊は覗きに夢中だぜ?」
「…だろうな。見張りが一人になったし、呼びに行ってるっぽいな」
「ヤイチはどんな女が好きだ?」
「ん…、床上手だな」
初体験がプロ相手だし、上手い女が良いのだろう。
「カケル、そろそろ不寝番だ」
外から声がする。ディワダだ。《阻害》を掛けてそーっと外に出ると、空に上がって見張りに着いた。
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