1,159 / 1,519
弥一の腹の音で敵にバレてしまう
しおりを挟む雑木で二十φ程のパイプを作り、内径に合わせたお椀と蓋、スプーンを作る。それを四十二セット。出来た傍から皆に七つずつ配り、鍋のスープをよそわせ筒に収めてもらう。そして薄肉巻きを三・四本とスプーンを入れて、上下を跨ぐよう紐で縛ればお弁当の完成だ。
「コレは馭者の分ね?」
「よろしく頼むよ」
「この容器、良いな。傾けたらスープが零れちまうが」
「密閉出来無いからソーサーで押さえ付けてるだけだし微妙だよ。昼飯迄持てば良いさ」
皆が弁当を抱えた所で床を仕舞って下に降りる。
「只今~」
「お、飯の匂いだ」
「昼飯は中で食う。弥一の提案が通ったぞ」
「そうか。飯くれよ」
「ヤイチィ、今食うと後で腹減るぞ?」
「俺なんて一日三回食えた事無かったんだかんな」
「ドカ食いは太るぞ?」
「太って無いだろ?量も無かったんだ」
「待て待て。取り敢えず弁当は俺が預かっとくから水でも飲んで落ち着け」
「ん…、すんません」「俺も心無い事言った。すまん」
皆に水を振舞って、喉を湿しお喋りしながら進んでく。そして昼に近付き弥一の《感知》にも反応があったようだ。
「居る…。多いな…………二十は居る」
「此処で来るなら出て行けば良いのか?」
「そう、なるよな」
「モンスターより、緊張するな…」
「食べ過ぎんなよ?吐いたら帰って来ないからな」
「「「おう」」」
小さな返事の後、暫く掛かって休憩地に到着した。車列は二列縦隊で出口近くに寄せられて、四五六号車は道側となっている。賊の群れは街道から離れた藪の中。援軍が出るのを見えないようにした配慮のようだ。
馭者が降り、ホルストの世話をする。水を汲んで飲ませ、辺りの草を刈って与えて、自分達はその後だ。
一方一二三組は外に出て、辺りの警戒。付き添い二人は皆の弁当を守る係のようで、一人は気配が無い。俺達も飯にしよう。弥一の腹の音で敵にバレてしまうからな。
「…んぐ。離れたな」
「夜か~」
「二十三対二十四。頭数で負けてるし、知恵があるなら来ないだろうな」
「二十三か。仲間集めんのかな?」
「じゃ無きゃ逃げっ放しだよな」
「ヤイチ、まだ斥候は居るか?」
「ちと待てー…、大丈夫、だと思う」
「チラチラ見んな」
「か~け~るくぅ~ん」
「しっかりしろし。独り立ち出来んぞ?」
「ちっ、その内俺強えしてやる……、居ない、筈だ」
「上下は見たか?」
「は?あの山か?スキルで見てんのか?」
「なあヤイチよ、野盗共はどっちに行ったんだ?」
「そりゃあ山の方だが……、うわぁ…」
「どうした?」
「一人、木に登ってやがる。外に出たくらいなら大丈夫だろうが、あっちと合流してたらバレるだろうな」
「良かったな、見付けられて」
俺の言葉に息を吐く弥一は馭者席で飯を食う男にこの後の道程を聞いている。どうやらこの山を迂回するルートらしい。何方かで昼休憩をしたらもう一つで寝る事となる。襲撃ポイントを二点に絞って活動してるみたいだな。
「カケル、少し良いですか?」
馭者の隣に居るだろう、ディワダから呼ばれる。声は聞こえど姿は見えずで馭者は固まってる。
「提案かな?」
「そうですね。このままだと夜襲で間違い無いでしょう。そこで提案です」
「聞きましょう?」
「野盗の塒を襲いませんか?」
「ディワダさん、それ、俺達も行くって事っすか?」
「全員でゾロゾロは、無理かもね。行くのは私とカケルだけになるでしょう」
「夜襲の内に皆の分確保出来れば二人で後片付けしに行っても良いが、今から行くんならちと遠慮したいかな」
「成程」
「塒を潰すのには賛成だ。夜更かしになるが、どうかな?」
「分かりました。では不寝番の順番を合わせましょう」
話を終えるとスッと小さな音を立て、ディワダは何処かへ移動した。
「なあ翔、賊のアジトに女が居たらどうすんだ?」
「そりゃあ街に連れて帰るだろ」
「敵の女だよ」
「……ヤるかっ?」
「ぐへへっ」
「「「悪党かよ」」」
冗談だぜ?
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!
日之影ソラ
ファンタジー
かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。
しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。
ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。
そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。
こちらの作品の連載版です。
https://ncode.syosetu.com/n8177jc/
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?
リオール
ファンタジー
俺は魔王を倒し世界を救った最強の勇者。
誰もが俺に憧れ崇拝し、金はもちろん女にも困らない。これぞ最高の余生!
まだまだ30代、人生これから。謳歌しなくて何が人生か!
──なんて思っていたのも今は昔。
40代とスッカリ年食ってオッサンになった俺は、すっかり田舎の農民になっていた。
このまま平穏に田畑を耕して生きていこうと思っていたのに……そんな俺の目論見を崩すかのように、いきなりやって来た女の子。
その子が俺のことを「パパ」と呼んで!?
ちょっと待ってくれ、俺はまだ父親になるつもりはない。
頼むから付きまとうな、パパと呼ぶな、俺の人生を邪魔するな!
これは魔王を倒した後、悠々自適にお気楽ライフを送っている勇者の人生が一変するお話。
その子供は、はたして勇者にとって救世主となるのか?
そして本当に勇者の子供なのだろうか?
もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~
ゆるり
ファンタジー
ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。
最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。
この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう!
……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは?
***
ゲーム生活をのんびり楽しむ話。
バトルもありますが、基本はスローライフ。
主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。
カクヨム様にて先行公開しております。
【完結】8私だけ本当の家族じゃないと、妹の身代わりで、辺境伯に嫁ぐことになった
華蓮
恋愛
次期辺境伯は、妹アリーサに求婚した。
でも、アリーサは、辺境伯に嫁ぎたいと父に頼み込んで、代わりに姉サマリーを、嫁がせた。
辺境伯に行くと、、、、、
亜人至上主義の魔物使い
栗原愁
ファンタジー
人生に疲れた高校生――天羽紫音は人生の終止符を打つために学校の屋上に忍び込み、自殺を図ろうと飛び降りる。
しかし、目を開けるとそこはさっきまでの光景とはガラリと変わって森の中。すぐに状況を把握できず、森の中を彷徨っていると空からドラゴンが現れ、襲われる事態に出くわしてしまう。
もうダメかもしれないと、改めて人生に終わりを迎えようと覚悟したとき紫音の未知の能力が発揮され、見事ドラゴンを倒すことに成功する。
倒したドラゴンは、人間の姿に変身することができる竜人族と呼ばれる種族だった。
竜人族の少女――フィリアより、この世界は数百年前に人間と亜人種との戦争が行われ、死闘の末、人間側が勝利した世界だと知ることになる。
その大戦以降、人間たちは亜人種を奴隷にするために異種族狩りというものが頻繁に行われ、亜人種たちが迫害を受けていた。
フィリアは、そのような被害にあっている亜人種たちを集め、いつしか多種多様な種族たちが住む国を創ろうとしていた。
彼女の目的と覚醒した自分の能力に興味を持った紫音はこの世界で生きていくことを決める。
この物語は、限定的な能力に目覚め、異世界に迷い込んだ少年と竜の少女による、世界を巻き込みながら亜人種たちの国を建国するまでの物語である。
「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です
リオール
恋愛
これは聖女が阿呆な婚約者(王太子)との婚約を解消して、惚れた大魔法使い(見た目若いイケメン…年齢は桁が違う)と結ばれるために奮闘する話。
でも周囲は認めてくれないし、婚約者はどこまでも阿呆だし、好きな人は塩対応だし、婚約者はやっぱり阿呆だし(二度言う)
はたして聖女は自身の望みを叶えられるのだろうか?
それとも聖女として辛い道を選ぶのか?
※筆者注※
基本、コメディな雰囲気なので、苦手な方はご注意ください。
(たまにシリアスが入ります)
勢いで書き始めて、駆け足で終わってます(汗
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる