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最近の若いのは

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 どうやら弥一は、神様的な何かにスキルをもらったみたいだな。

「便利そうだな」

「バレたら檻の中だと思うぜ?」

そう言うと、メンコをビリッと破いてしまう。破いたメンコからモクモクと煙が立ち上り、弥一の中に吸われて行った。

「コレで《感知》が使えるようになった」

「マジかよ」

「同じ事いーっぱいやんないと使いモンにならんけどな…。ああ、驚いてんのが分かる」

「見りゃあ分かる程度か」

「んだ。《付与》をもらったのは良いんだが、自分が使えないヤツは使ってるトコを見なきゃならんから面倒なんだ。紙に《付与》して吸収するのは自分で探したぜ」

聞くと、地球から持って来たメモ帳は早々に使い切ってしまい、それからは自力で紙を作る事を始めたのだと。やはり紙は売ってないようだ。

「最初に覚えたのは何だ?《洗脳》か?《隷属化》か?」

「人前で使うモンじゃ無いし、見た事ねーよ。最初にやったのは《言語》だな」

「ん?持ってたろ?」

「スキルを見る機会が無かったからな。重複して効果が増すのか試したくて、持って来たメモ帳二冊使い切ったった」

「結果は?」

「ブフリム共の言ってる事が何となく分かったような気がする」

「つまりは誤差か。尻拭く紙持ってたじゃねーか」

「小さ過ぎて拭けねーよ。それに勿体無いだろ」

俺と弥一が駄弁って居ると、先頭の方でホルストが嘶く。荷車も止まって外にガチャガチャ出て行く音が聞こえて来た。

「ん…、敵か」「起きろ!敵だ!」

叫ぶ弥一に飛び起きた四人が得物を抱えて外に出る。後ろ迄囲まれては居ないが、前を扇状に囲ってるウォリスが十、奥に潜んでるのが二匹居るのが《感知》で見えた。

「俺達ゃどうすれば!?」

「ホルスト車の援護だな。あの程度なら前の二組だけで殺れんだろ。回り込むのを対応すれば良い」

「カケル、俺等もソレに倣うぞ」

六組の奴等に告げると、グリオーソの五組が続く。俺は馭者に、五組の荷車の横に着けさせ伸びた戦線を縮める。それを見たヘンプシャーが四番車を隣に着けさせ、空いた空間を詰めて行くと、二列縦隊を扇状に守る布陣が完成した。

 三十五対十二。殆どが雑兵であっても数の差には抗えず、前に出ていた半数を落とした所でウォリス達は逃げて行った。深追いはしない。肉はあるから。

「グリオーソ殿、頼む!」

それに怪我人も居るようだ。怪我人の元に急ぐグリオーソに着いて行く。

「おい、持ち場を離れるんじゃ無い」

二番車に居たダミヤンが俺達に注意を促すが、それより今は此方が大事だ。

「大丈夫だ。それより怪我したらどうなるかを見せてやれ」

「どう言う事だ?」

「実際依頼を受けた事もあるんだが、最近の若いのは支援や遠距離を蔑ろにしてる奴が多いそうなんだ。実際に傷を負って、治してもらう迄回復なんて要らねえとか抜かしよる。だからしっかり見させて、前衛と盾だけで行ける、なんて言わないようにさせたい」

「ほう、分かっとるじゃないか」

手を光らせたグリオーソが振り向いた。支援職のディワダは警戒に出てるのか姿は見えないが、ヘンプシャーは思う所があったみたいで女達を集めていた。

「確かに、思い当たる所はありますね」

「!?」

ディワダ、隣に居た。《感知》を外に向けてたが、それでも気付くだろ俺よ…。

怪我人は二人、何方も鎧の隙間から腕を噛まれた程度で済んだようだ。お手頃価格でもそれなりの効果はあるのな。皆乗り込んで、一列になって移動を再開する。

「翔よ、アレって光魔法なんだな」

「回復がか?」

「回復魔法で一系統あるのかと思ってたよ」

RPGに慣れてるとそう思うのかも知れないな。弥一は図画を描いたメンコをそっと鞄に仕舞った。皆起きてるし、モクモク出来んか。

「俺等もパーティー編成、考えなきゃですね」

一人が言葉を発すると、三人が頷いた。

「四人は元々同じパーティーなのか?」

「あ、俺と其奴で組んでます。二人共前衛なんで、盾職とか探してたんですけど…」

支援や遠距離を見落としてたそうだ。





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