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何故
しおりを挟むセカンドハウスに明かりが灯り、ブチ姉妹や世話係が起き出したのが分かる。まだ暗いがもう朝なのか。
「お前等、起きろ」
「寝てないよ」「俺も起きてる」「眠いが、何とか…」
寝ているのは弥一だけか。起きてる四人をハンドサインで黙らせると、弥一の口を《威圧》で塞いで湖の水を浮かせてぶっ掛けた。
「っ!?んぐんっ!!」
必死に笑いを堪えると、弥一を《洗浄》して乾かした。
「なっ、なんて事しやがる…。死ぬわ」
「寝たらマジで死ぬからな?」
「クッソ、一気に目が覚めたわ…」
顔を洗って飯の支度に勤しんだ。俺の居る六番は俺を見習い意外と動いてくれる。飯の支度もそうだ。腹が減ってるからとっとと準備したいってだけだろうが、やるとやらぬじゃ大違いである。
「カケルさん、アレ、どう起こせば良いんだ?」
アレとは女達である。近付くとヘンプシャーがキレるかも知れんって事で、怖くて近付け無いのだと。
「威圧か殺気を当ててやれ」
「他はともかく格上相手に抜けねーよ」
「抜いたつもりで斬り掛かれ。動くなよ?見えない自分が襲い掛かる感じだ」
盾役を前に一列に、五人並んで威圧なり殺気なりを放つ。放ってるようには見える。
「殺意が足りん。その辺の小虫を踏み躙るくらいの感覚だ。見下して、持ってる武器で目を抉れ。尻に得物を突き刺して、内臓を掻き回すんだ」
「飯前に、そんな事考えさせないでくれよ…」
「威圧や殺気は相手に恐怖感を与える技だ。野盗やギルドのチンピラも使えるんだから、お前等も使えるようになっとけ。但し、静かにだ」
「翔、心優しい俺には女子を殺すイメージが湧かない…、ぐぬぬ」
「じゃあぺろぺろしろ」
「っ!止めなさいっ!」
ヤる気になった五人が一生懸命ぺろぺろ思念を送ると、直ぐにテントから飛び出したヘンプシャーが俺にダガーを投げて来た。威圧とか放ってたのは俺じゃ無いのに。胴鎧にコツンと当たったダガーを落ちる前に捕まえる。
「ちっ、頑丈ね…」
「おはよう。誰かにぺろぺろされたか?」
「知らないわよ!皆、起きなさい!」
二組毎に交代で朝食を摂って、その他四組は移動の支度を整える。
「兄貴、おはよー」「「はよー」」
今朝の少年隊は友恋フレンズと同じ船に乗って来た。過積載じゃないか?
「旦那はメルタール?それとも黒の森?」
「それとも、オ・レ?」
「あたいだよね?」
「メルタール迄三十日で向かう予定だよ。帰って来たら島に来い」
「「「あ~い」」」
「普段の移動が早過ぎて、それだけ掛かるの忘れてたわ」
「仕事も良いけど、此処の間引きもしっかりな?」
「「「はーーい」」」
仕事に向かう魔道車に続き、湖畔を出発した。
「なあ翔、なんか遅くね?」
四人が静かに眠る中、目が冴えている弥一が口を開く。俺も眠いんだが、相手してやるか。
「今日からスタートみたいなもんだからな」
「ずっと平地みたいだし、野盗なんて出るのか?」
「野盗より野獣とかが先だな。感知スキル生えるように見張ってると良いぞ?」
「感知、察知、探知ってさ、どれが一番強えんだろな」
「今言った順だな。更に《罠感知》みたいな特化型がその上を行く」
「ふ~ん、今迄書いたり読んだりしてたけど、やっぱそうなるか」
《探知》は物や事象を自分の足や目で探す。《察知》は意識や理を頭で察する事が出来る。《感知》はその両方を感じる事の出来るスキルだ。
「感知、使ってみてくんね?」
「何故~」
「見れば分かる」
言われるがままに《感知》してみる。弥一は鞄からボールペンに、小さなメモっぽいのを取り出すと、此方をじっと見詰め、メモに纏める気のようだ。辺りに魔物は…少し居るな。
「…何書いてんだ?」
「ん…」
弥一が手に持つ、一見メモに見えたのは、メンコ程の大きさのカードみたいな厚紙で、それに絵?図?を描いていた。
「付与っ」
お、メンコが光った。それどんなスキルなん?
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