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女子を見て食う飯

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 街道を行くホルスト車一行に動きがあったのは、それから四オコン程経った頃だろうか。先頭車両が草藪の中に停車すると、列を成していた後続も道の左右に分かれて草藪へ。ホルストの休憩と、俺達の昼飯だそうな。

「外に出るべ。体を解さんと尻に負担を掛け過ぎる」

「カケルさん、中に居た方が安全じゃないか?」

安全か?安全なんて何処にも無いぞ。そんなモン。引き篭もりたい男に答える。

「ホルストが殺られたら逃げる事もままならんだろ。それに飯食ったらどっちにしろ外に用足しに行くんだ。何時出ても変わらんよ」

「な、成程…」

「それに、女子を見て食う飯の方が美味い」

「降りるか…」「ああ」

現金なモンで、女と聞いて外に出だすお手頃価格達。

「飯が美味けりゃ尚良いんだが。翔よう、あの干し肉無いのか?」

「強くなって自分で作りたまえよ」

弥一を押し出して外に出ると、他の車両の奴等も外に出て伸びたり曲げたりしていた。青々と茂る雑草を食むホルストに、馭者が馭者台の横にある水樽から桶に注いで飲ませてる。

「翔よう、女子達反対側だったわ」

「残念だったな」

そう言って、草藪にマットを敷き、ローテーブルを置いて座る。さてさて飯飯。作り置きしといたスープにソーサー。奪われると嫌なのでゴーラの干し肉を出して頂きます。

「異次元収納か」

「アイテムだと高いから、スキルで何とかしたいよな」

「今はスープが欲しいぜ、翔くうん」

「手弁当だから上げたくないが、しゃーねーな。痩せろよ?」

「動けば痩せるべ」

この男、シルケに来てから結構経つけど痩せてるようには見えんのよな。この依頼を受けてる時点でブフリムは殺ってる筈なので、動いてはいる筈なのだが。向かいに座り、スープを啜る弥一は飽食時代に生きていた地球人には見えない食いっぷりであった。

「味には慣れたか?」

「食えるだけ良いさ。コレは格別に美味いが」

「戦争経験者みたいな事言いよる」

「知らんだろうが、家の親はメシマズでさ。外食ばっかだったんだ」

「今もだろ」

「まあな。好きなモン食ってればデブるってモンよ」

 飯を食い、ホルストの休憩待ちをしながら皆がそれぞれ倒した草の上で横になったりしてる。俺も休む前に一仕事するか。

「それ以上近付いたら、痛い目見るよ?」

女達の群れにお伺いを立てに行ったら足元に前後刃のダガー?が降って来た。背を向け口を開くヘンプシャーは、索敵にも長けているみたいだな。

「用があるのはお前だよ。ちと来てくれないか?」

ダガーを摘んで投げ返す。刺さると怪我する普通の投擲がヘンプシャーの尻を目指して飛んで行く。

「!?ヤる気!?」

ギリギリで腰を上げたヘンプシャーが驚きの声を上げたが、やった事は一緒だぞ?

「良いから来いって。話し合いだ」

「何だ?良からぬ話か?」

ヘンプシャーの声で他の面々も気付いたようだ。休んだ姿勢のままのグリオーソがニヤけて煽る。

「何方かと言うと良い話だな。皆の前で言うと嫌われそうだが」

「手早く済ませよ?」

そう言って寝に入った。絶対聞き耳立ててるだろうな。

 五号車からほんの五ハーン程離れた所で振り返ると、両手ダガーで構えてるヘンプシャー。警戒し過ぎだろ。

「力比べしたいなら相手してやっても良いが、今は後にしてくれ」

「…で、話って何だい」

「トイレ要るかどうか聞きたかったんだが」

「…は?」

「以前貴族の護衛した時さ。女達が道中ホルスト車を停らせて薮に入ってったのな?」

「で…?」

「その時作ってやったトイレが殊の外好評でな。まあ目隠しと穴程度の物なんだが。欲しいなら作ってやろうかと」

「何で、私だけに話すのよ」

「女達の前で言うとデリカシーが無いとか言われるからな」

「……はぁ。分かったわ。作りたければ作れば良いわ。使うかどうかは知らないけど」

「そうか。ならこの辺りに作っとく。女達に伝えておいてくれ。葉っぱは用意しろよ?」

「無駄に気が利くっ!」

ぷりぷりと尻を振って戻って行く尻を凝視したい。





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