1,113 / 1,519
正しいルート
しおりを挟む少し早いが昼飯休憩にして、飯を食べ食べマップを描く。上下の階段があるので最深では無さそうだし、道が細いので、そこまで深い階層では無さそうに思える。
「あんたって随分余裕よね」
「戻れるからな」
「なら戻りましょうよ。さっきの階、調査終わって無いんでしょ?」
正論なので折れる。マップだけ描いて、飯食ってトイレしたらさっきまで居た場所へと《転移》した。
「夢でも見てるようだわ…」
「夢の中なら漏れてないか?」
「漏れ…起きてるわ。現実よ」
夢から覚めたようなので調査を続けよう。敵と箱を回収し、罠を踏んでメモを取り、今日の目標である二十階のボス部屋にやって来た。
「此処も見るだけで良いのよね?」
「それが良いね」
中に入り、ドアが閉まる。すると今迄部屋だった景色が一変し、突然空となった。
「にゃっ!?」
突然の事に猫化する女が小さく丸まり落ちて行く。やっぱり、落ちたら死ぬのかなぁ。落ちてミンチになるより先に、彼奴に咀嚼されそうだ。
首が長く、尻尾も長く、翼を持ったドラゴンが、くねくねしながら飛んで来る。初めて見るタイプだな。落ちてる二人を浮かせて引き寄せた。
「おっ!落ちっ…て、無い。浮いてんの!?」
「普通の冒険者は此処迄のようだな」
「これじゃあ、前衛は無理よ。倒しても、死ぬかもだけど…」
「落ち切る前に倒したら元の場所に戻るかもな」
「盾に前衛、回復補助に、後衛火力多数のレイドで…って、あれ!」
初見ドラゴンが口を開けて突っ込んで来るのに気付いた女が慌てふためきワタワタするが、食われる寸前に攻撃を躱し、相手をじっくり観察する。
翼はあるが手足は無く、蛇みたいな奴だ。しかし背中側の鱗は大きくてゴツゴツし、ドラゴンっぽく見える。顔は比較的丸顔で、なんとなくイグアナ辺りを思わせる。俺達を食おうとしていた口には牙が並んでいた。
攻撃は主に噛み付きに、体当たりと尻尾の一撃。魔法の類は無さそうだ。単純だが動きに制限を受ける普通の冒険者では勝ち目は無いだろう。メモを取り終えた。
「早くっ、早く殺っちゃって!」
「落ちた先にも興味があるが、仕方無いな」
放たれた矢のように真っ直ぐ突っ込んで来る長い奴の周りを《威圧》の壁で囲った。長過ぎてそのままでは《収納》出来んのだ。
《威圧》の壁をギュッと狭めて丸くとぐろを巻いたのを《収納》すると、辺りの景色がさっき入ったボス部屋へと戻る。
「戻ったみたいだな」
「あんたが呼ばれた意味が凄く分かった…」
「流石にコレは偶々だろ」
地に足着いて落ち着いたのでメモを取る。
「魔法もブレスも吐いて来なかった。さっきお前が言ってたように、後衛火力で殺れるんでは?」
「アレが攻撃受けて止まってくれればね。それにさ、わたし等浮いてたじゃない?落ち続けてたら何リット迄持つか」
「やはり落ち切りたかったな」
「で、下には行くの?」
「行った所で普通の冒険者じゃ…あ」
「あ?」
気付いてしまった。
「転移罠使えば此処通らなくても下に行けるな」
「ああ~。並のパーティーが行ける程度の階なら、上に行けば戻れるって事ね」
「戻りの時、この部屋がどんな対応するかも調べておきたいし、もう少し降りよう」
「一泊やそこらで戻ったら、何も成果を得られなかったと思われそうだしね」
階段を降りた先の部屋で一泊し、目覚めて朝食を摂ったら準備を整え調査再開したのだが…。
「成程、そうなってたか」
「何よ」
「転移罠が正しいルートだったのかも知れん。転移した先はこの階だったよ」
《感知》を使い、板にマップを描こうとして前に描いたのと同じ事に気付く。全く同じ作りの違う階層かも知れないが、洞窟型に変わったこのフロアでそれがあるのだろうか?
「確認して来るから一旦階段部屋に戻ろう」
「仕方無いわね」
調査任務に慣れたのか、はたまた諦めただけなのか。女は素直に応じてくれる。タダ飯食わせた結果かも知れん。とにかく面倒無くて助かる。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜
田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。
謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった!
異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?
地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。
冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【無双】底辺農民学生の頑張り物語【してみた】
一樹
ファンタジー
貧乏農民出身、現某農業高校に通うスレ主は、休憩がてら息抜きにひょんなことから、名門校の受験をすることになった顛末をスレ立てをして語り始めた。
わりと強いはずの主人公がズタボロになります。
四肢欠損描写とか出てくるので、苦手な方はご注意を。
小説家になろうでも投稿しております。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる