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極悪龍

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「リュネ、お乳出るか?」

「…試してみます」

 マットに座り、二つのたわわをぽろんと出すと、赤ちゃんを浮かせて先っちょを口へと当てる。すると直ぐに、ちゅぱちゅぱと生きる為の活動を始めた。

「出てるか?」

「お乳は、出てませんね…けど…」

「魔力を吸っているな」

吸われているリュネと、ミーネがそれに気付いた。ほんの僅かな量なので俺は気付けなかったよ。

「魔力か…。我に足りるであろうか」

魔力と聞いてリームが声を落とす。

「大丈夫。姉さんでも問題無いでしょう。人の子だと、多少疲れるでしょうけど」

「魔力を糧とするなら男女問わず吸えるって事か」

「だろうな。だが、どれだけ吸うのか見極めて、人の子に託すのはそれからの方が良いだろう」

「ですねぇ」

誰彼構わずMPドレインする子なんて預けられんしな。

「とにかく、赤ちゃんのご飯の心配が無くなって良かったよ」

「カケル、名前、どすんの?」

さっきも聞いた言葉だ。ホントどうしよう。

「龍の中での、名前に関するタブーってあるか?」

「無いな」「知らん」「ですねぇ」「しらない」

「無いと言っても悪人…悪龍の名前とかはダメだったりしないか?」

「悪、ですかぁ…。強いて言うなら私ですけどぉ」

悪意無くても罪は罪、ってヤツか。

「この子は男の子だから問題無いだろう。極悪龍の二つ名を持つ者は居たが、名前は知らん」

極悪龍…、一体どんなワルなんだ…。

「…ぷえ」

 可愛い声が出て、赤ちゃんのご飯が終わったようだ。赤ちゃん語だから理解は出来ん。唯のゲップと思われる。

「カケルさん、抱いてあげてくださぁい」

「あ、ああ」

浮かせて寄越す赤ちゃんを、優しく腕に抱き止めて、色んな所を観察する。羽も尻尾も無く、スベスベのぷり尻。欠伸する小さなお口を覗いてみる。まだ歯は生えてない。女の子だったら生えてるのだろうか?ふわふわの猫っ毛はよく見ると黄色味を帯びていて、リュネの血を受け継いでいると分かる。まだ見えてないだろう瞳は紫のような、茶色のような。魔力は外には出てないが、内部を《感知》で見ると、リュネから吸った紫色が体の中をぐるぐるしてた。

「魔力操作出来るのか…。流石だな」

「魔石も無いようだし、早めに放出出来るようにせんとな」

魔石を持つ龍とは違い、溜め込む事が出来無いこの子は、定期的に魔力を放出しなければならないようだ。これは龍の知識では無く、人ならこうしなければ死ぬって話。この子に当て嵌るかどうかは分からんが、気を付けねばなるまい。

「俺は魔石無いけど溜め込み捲っちゃってるんだが…」

「我等が産んだら好きなだけ放出するが良い」

「私なら直ぐにでも~」

「リュネは安静にしててね?皆もだよ?」

「我は最後かその前だろうし、湯にでも浸かって来るとしよう」

「私、甘いの飲みたい」

様子見は助産婦達がしてくれているので取り敢えず解散。外に出るリーム達に付いて行き、寝室で寝た。

「ま…まあ、マーカンド、マーク、マーシー、マーチ、マーチャン、マーティン…」

「次は、まあ、まーな?」

「まあな。な…に…ぬ…マーヤ、……無いな。マイ…」

横になり、名前を考え今ま行。脇に食っ付き半分寝てるイゼッタが寝言みたいな合いの手を入れて来る。良さそうなのは幾つかあったが更に候補を出して行く。

「ろら、り…ロロノア、ロンドン、わあ、ワーカー、ワークマン…ワールド…」

「皆様、おはようございます。朝食の支度は整っております」

気付けば朝になっていた。

「カケル様、眠れなかったみたいですね」

呼びに来たシャリーに欠伸で返し、皆と共に朝食へ向かう。

「リームとネーヴェはこっちで食べるのか。部屋に持って行かせたのに」

「我はまだ時間が掛かるからな。寝ている必要は無い」

「私も。はぐ、はむ」

二人がそう言うのなら好きにさせよう。初産のリュネもスキルで超速無痛分娩してたし、人がどうこう言う事でも無いのかも知れない。
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