1,083 / 1,519
栄養袋
しおりを挟む「ならば我等も気にせねばなるまいな」
「お漏らしは御免だな」
「お漏らしでなく、破水です~っ」
「さ、リュネ様。脚を開いて息んでくださいましね。旦那さんは、そこで良いのかい?」
姦しい三人に産婆が割り込んだ。普通であれば男は退室するモノだそうで、見守る男は居ないと言う。
「名前はまだ決めてないが、覚悟は出来てるよ」
「名前も決めてくださいねぇ。では、行きますよ~」
リュネの背中を助産婦が二人で支え、その時を待つ。
此処からどれだけ待つのだろうか。そんな事を考える暇も無く、ブリンッと出て来て婆ちゃんもびっくりだ。
「ふふっ、スキルを使えばこのくらい、何の事もありませぇん」
「まだ動いちゃいけませんよ。胎盤が残ってますからね」
「カケルさぁん、たいばんって、何です?」
「赤ちゃんと母体を繋ぐ器官で、母体から栄養等を受け取ったりしてるんだ。赤ちゃんが産まれたら取れるんだよね?」
「旦那さん、よく知ってるね。…って、奥さん達に聞いてたかい」
「否、母に聞いたんだ。サミイの母の時も居合わせたしな」
「ああ、そう言えば居たねぇ。あ、出て来たよ」
「はぁい。出しちゃいますね~」
流石にこれは直視出来無い。目を閉じて天を仰いだ。
「旦那さんも頑張ったね、よしよし」
「よしよ~し」
産湯に浸かってキレイになった赤ちゃんが、リュネの隣に寝かされる。
「…泣かないのな」
「そんな子も居るさ」
「状態は問題無いな」「うむ」「ですねぇ」「かわいい」
そう言う子も居るのか。因みにお包みに包まれちゃって男女の判別は出来無かった。丸くて、おっきくて、しわしわ。白っぽく見える細い髪は猫っ毛と言うヤツか。男なら苦労しそうだが、果たしてどっちなのか。
「リュネ、やっぱり俺にはどっちの性別か分からんよ」
「全くぅ、仕方の無いお父さんですねぇ」
「男はそう言うモンさ。リュネ様は元気そうだけど、面通しが終わったらしっかり休んどくれよ?」
「はぁい」
助産婦が呼びに行き、暫くすると女達が入って来る。妻三人にカラクレナイ。メイドと性奴隷。その後にラビアンが続いた。
「カケル、名前、どすんの?」
一旦妊婦部屋を離れ、俺達の部屋に戻ると、お茶で口を潤したイゼッタが聞いて来る。
「まだ考えても無かったよ。と言うか男女か分からん」
「わたし達の時は仕方無かったですけど、今度は頑張ってくださいね!」
「本当に感謝しております」「心よりの感謝を…」
あの時は十日くらい寝たきり状態にされたからな。頭を垂れるカロとアルネスに手を挙げて制す。
「カラクレナイの時は龍の姿だったからイメージ湧いたけど、今回は人型だからなぁ。難しいよ」
「高々四人分さ、頑張りな」
「されど龍の方々の名前です。迂闊な事は出来ませんよ?」
「名付けのタブーを聞いておいた方が良いだろうな」
「だな。後で聞いて来るよ」
四人分なのも大変だし、アカン名前を付ける訳にもいかん。そもそも性別が分かって無いので話を聞いたりお包みを剥がさねばるまい。
「…ちょっと行って来る」
更に気になる事があるので直ぐに動く事にした。
「リュネ、起きてる?」
「はぁい?」
横になってるリュネが顔を向ける。赤ちゃんはモゾモゾしてるが寝てるかどうか分からんな。
「リュネ、お乳出るか?」
「カケルさぁ~ん。赤ちゃんが居るのですからぁ、それに、二人きりが良いでーす」
「人の子の姿の赤ちゃんだし、初乳は大事かと思ったんだ」
「しょにゅ…初乳ですか。確かに殻もありませんねぇ」
「栄養袋も無いな」
カラクレナイみたいに孵化する場合、臍の所に栄養袋なる物が付いていて、それが引っ込む迄の間は食事の必要が無いと母龍は言う。お包みをそっと捲って確認したが、そんな袋は付いてない。代わりに可愛いウインナーが付いていた。男の子だ。
「バレちゃいました」
教えてくれよ。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
RiCE CAkE ODySSEy
心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。
それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。
特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。
そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。
間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。
そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。
【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】
そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。
しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。
起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。
右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。
魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。
記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。
レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~
裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】
宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。
異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。
元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。
そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。
大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。
持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。
※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。
白紙の冒険譚 ~パーティーに裏切られた底辺冒険者は魔界から逃げてきた最弱魔王と共に成り上がる~
草乃葉オウル
ファンタジー
誰もが自分の魔法を記した魔本を持っている世界。
無能の証明である『白紙の魔本』を持つ冒険者エンデは、生活のため報酬の良い魔境調査のパーティーに参加するも、そこで捨て駒のように扱われ命の危機に晒される。
死の直前、彼を助けたのは今にも命が尽きようかという竜だった。
竜は残った命を魔力に変えてエンデの魔本に呪文を記す。
ただ一つ、『白紙の魔本』を持つ魔王の少女を守ることを条件に……。
エンデは竜の魔法と意思を受け継ぎ、覇権を争う他の魔王や迫りくる勇者に立ち向かう。
やがて二人のもとには仲間が集まり、世界にとって見逃せない存在へと成長していく。
これは種族は違えど不遇の人生を送ってきた二人の空白を埋める物語!
※完結済みの自作『PASTEL POISON ~パーティに毒の池に沈められた男、Sランクモンスターに転生し魔王少女とダンジョンで暮らす~』に多くの新要素を加えストーリーを再構成したフルリメイク作品です。本編は最初からすべて新規書き下ろしなので、前作を知ってる人も知らない人も楽しめます!
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる