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パンダ

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 弥一には、動画サイトのやり方を真似てそれっぽい事をしてもらう。受け皿の上に笊を置いて砂利を入れ、川の水で流しながら大きな砂利を捨てる。受け皿に溜まった軽い砂を水で流しながら、重い石を残して行く感じだ。

「これ、鉄…砂鉄か?」

「上手いモンだな」

受け皿に残った黒い砂粒を見て、弥一が呟く。

「本当に採れんだろうか…」

普通にやってたら採れんだろうな。なんせ金は地下にある。《感知》を高密度で地下に向け、昨日見付けた場所を見る。爆薬と重機を使って掘る場所だが、スキルを使えば一瞬だ。少し広い範囲で《収納》し、《散開》でスカスカにしたら金だけを《集結》させ、要らない石は固めて元の場所に戻す。
弥一の何度目かのチャレンジの中に一摘みの砂金をこっそり仕込み、本当にこんな方法で採れるのか確認してみた。

「おい翔、光ってっぞ?」

俺は光って無い。受け皿に沈む黒い砂の中に、ギラリと輝く砂が見えた。

「ちゃんと採れるモンなんだな。撮影しとけ」

「おおうっ」

スマホで撮って、SNSに上げて、弥一の仕事は一旦お休み。後は俺がスキルで掘る。片手の上にこんもりした山になった。

「幾らくらいすんだ、これ」

「売ってみんと何とも。百グラムくらいはあると思うが」

「で、コレを俺が売りに行く訳か」

「俺は国籍無いからなー」

「SNSに上げたのも、採った証拠を残すって訳だな?」

「だな」

「明日から此処は観光地だな」

「少しばら撒いといてやっか?」

「何も無いと怪しまれっしな。勿体無いが、仕方無し」

地下に眠る砂金を掘り出し、川の中に撒く。さあ、帰ろうか。家に戻って砂金の選別…してる風の写真を上げる。コツコツ採って、こんなに貯まった風を装う。昼に上げた書き込みに、ハートがそこそこ押されてる。返信には、何処でとか、くれとか馬鹿が集まって来てる。よしよし。

「翔、売り先と連絡付いたぞ。明日行って来るぁ」

「近くにあるのか?」

「否、東京。上野にあるってよ」

「いーなー東京。パンダ見たいぜ。昼に店に着くならボディガードしてやるよ」

「マジか、助かる。強盗されて異世界転移しかねんからな」

「死ななきゃ治してやるよ」


 翌日は午前の部を終えると食事もそこそこに地球へ飛んだ。弥一の部屋で、家主の存在を《白昼夢》で探すと大きな建物の中に居た。凄く都会、これが花の都大東京か。弥一の奴は買取りブースっぽい所でコーヒーしばきながら担当と思しき男と話をしてるのだが、《白昼夢》だと聞こえないし、飛んで行く訳にも行かないので待つしか無い。
紙に何か書いている…振込用紙か。現金払いなんてしてたらカモにされるだけだもんな。その後、担当と話をして店を出た弥一は、動物園に行って帰るようだ。俺もパンダ見たいぞっ!

シルケに戻り、午後の部を終わらせると再び地球へ移動する。天文学的な距離を二往復もするのだが、魔力は問題無さそうだ。凄く不思議。

「パンダ見たのかよ」

「うおっ、翔か。ハシビロコウも居たぞ」

金魚に餌やる弥一がビクりと跳ねる。雑多に置いた土産袋が目に入った。

「畜生め、土産寄越せよ」

「妹用だから開けんなよ?それにお前なら只見出来んだろうが」

妹用と言われたら手が出せん。

「動物達のご飯代にならねぇだろうが」

「律義者め。金の換金については何処迄見てた?」

「振込だっけか」

「んだ。一週間程度で振り込まれるってさ」

「すげ~ちょろまかされそうだよな」

「んだな。目の前で査定して欲しかったが、ゴネて目ぇ付けられても敵わんし、折れるしか無い。取り敢えず持ち込んだ時の重さがコレな」

ロール紙に印刷された数字を見せてもらう。あんな量でも金はやっぱり重いのな。採って来た砂金が純金であったとしても、コレより減るのは確実だろう。

「風呂屋で女抱くのは来週か。今から体作っとけよ?」

「俺は早く異世界転移したいぜ~」

それも含めて鍛えとけ。
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