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やっぱダメだったよ
しおりを挟む地球の神的な者との会話が終わると、真っ白な空間に以前見た姿が現れる。二代目と知っていてもこの顔を直視していたくない。目を逸らし、《念話》を飛ばす。
『話は聞いて居ましたよね?』
『肯定。北上弥一の、シルケへの順応化要請を受諾しました』
『過ぎた力は驕って破滅するので、スキルや魔法の能力に上限を設けてください。例を上げると、シルケ人の上位の二倍程迄で良いです』
『受諾。転移中に処置します』
『以上です。よろしくお願いします』
目を開けて、風呂の二階。神的な存在からの許可は降りた。降りてしまった。「悪ぃ悪ぃ、やっぱダメだったよ」と言ってやりたい。が、嘘吐いて迄拒絶したく無い。恩人だからな。しかし多少の援助はしてやるが、生きるか死ぬかは弥一の腕次第だ。迂闊に死んでくれるなよ?
午後の部の準備に向かうラビアン達と一緒に入浴施設に向かう。夜の部に使う道具を搬入する為だ。
「カケルさぁ~ん」
「リュネも来てたのか」
厨房の隅に保温器を搬入していると、二階の方、テラス席の奥からリュネの声。飲み物もらって近寄ると、リュネの周りに数人集まり四角い何かを作ってた。
「あ、洗濯機の増産してくれてんのか。ありがとうな」
「い~え~。私は魔石と、土を注いで固めるだけでぇす」
それ殆どじゃん。注いで固めるのを代わり、洗濯機作りを手伝った。出来上がった洗濯機は浴室の端にズラリと二段で並べられたが、それでも二百人が一気に使おうとすると全然足りない。一回一オコンしないので、何とか回し切って欲しい所だ。
「あ、カケル様。此方でしたか」
「どうしたシャリー、探してたのか?」
「夜の部を始める日取りを決めようかと思っていたので、相談にと」
報連相、大事だよね。
「簡易的な食事のメニューと料金の見直しはどうした?」
「立食形式だと誰がどれだけ食べたか分からないので入場料に含めてしまおうかと。これが一番の相談内容ですね」
「保温器は見たか?」
「ええ。画期的ですね。冷やし続ける属性魔石のもあれば蓋を変えるだけで…、お金の匂いがしますね」
「だな。しかし人の力で冷やす技術はまだ無いんだよなぁ」
「カケルさんなら魔力の放出で冷やせるでしょうけど、魔法を使えぬ子供には与えられませんねぇ」
「だな。魔法としての冷却を使えないと金に出来ん」
「ああ、話が逸れました。それで料金なのですが…」
「保温器に幾ら分入るかだよな」
「はい。単価の安いレッグルート料理やスープでしたらプラス百~二百ヤンでも良いかと。日中の二回で食事分の上がりは充分ですから。とは言え安いからと夜に集中されるのも困るので、ある程度は取った方が良いと考えます」
「宿替わりにはして欲しくないもんな」
「ええ。ですので食べ放題の付加価値を付けて千ヤンを頂こうかと」
「セルフで千か。なら多少の肉料理も出すか?」
「直ぐに無くなってしまいそうですが…、そうですよね」
「ゴーラで良いなら試作するぞ?」
「では厨房へどうぞ」
シャリーに連れられ厨房へ。作り置き組の女達が具材を切ったりデカい寸胴を掻き回してる。
「皆、疲れては居ないか?」
「普段から島で作ってますから、平気です」「「「でーす」」」
「終わったら仮眠だろ?その前にちょっとだけ可愛がってやる。頑張ってくれ」
「「「はーーいっ」」」
奮起した女達に混ざって俺も調理する。先ずは材料の調達だ。立ったまま《白昼夢》を使い、街の外を闊歩するゴーラを探して十匹《収納》した。そして皮、肉、腱、血、内臓、骨に分ける。調理に使うのは肉と骨と腱なので、残りは後で捨てる。
空いてる焼き場の一つを使わせてもらい、寸胴で腱と骨を炒める。腱はそのまま、骨は《散開》で細かく砕いて木篦で掻き混ぜながら炒める。女達が臭み消しのハーブやら香辛料をくれたので投入。ラビアン的に我慢し難い匂いだったのだろう。合格が出るまで臭み消しを入れた。
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