1,060 / 1,519
最初の一回は仲良く
しおりを挟む入浴施設の初日が終わり、翌日。今日も施設の前には人集りが出来ていた。昨日居た顔は見えないが、シルケ人は風呂に毎日入る習慣が無いのでそれもやむ無しである。街の住民より農民や冒険者の方が入るまであるからな。
けどその考えは違っていたようだ。
「組合でさ、順番をっ決めたのさっ」
「押し寄せたらあ、収まりがっ、付かないからって、ねっ」
「冒険者はともか、く。んっ、アタシ等は従ってるっよおおっおぁあっ」
組合員が押し寄せると俺の取り合いになるから、最初の一回は仲良く頂きましょうって事らしい。後はお財布と相談だそうで、明日迄はこの調子で安定した人数に来てもらえるようだ。働き手達も慣れて無いから、このくらいの数で慣れて行ければやり易かろう。
腰を振り、アイツを蠕動させながら、注文や苦情も聞く。洗濯機が足りてないとか、酒が欲しいとか。酒は夜に飲むモンだって事で断ったが、洗濯機は増やしても良いだろうな。そして営業時間の延長希望。これは朝食の片付けを終えた後と、食料の買い出しの時間。即ち主婦が外に出られる時間を営業時間にしてるので延長は難しい。三十リットで十オコン経つので、働き手の負担にもなるからな。だが店屋やギルド等、商売している者にとってはその時間も出られない訳で、出来れば夜もとお願いされた。確かに納得出来る提案なので、後で話し合いを持たねばならんだろう。
「…と、このようになりました」
午前の部が終わり、シャリーから売上等の報告を聞いて、あの提案が出てるのかを確認する。
「夜の部を設けて欲しいって注文?提案は聞いてるか?」
「ええ、昨日もありましたが何分初日でしたので直ぐには出来兼ねると返しました」
「そうだな。だが今のままでは昼間の商売の者が来店出来んのも事実だ。何とかしてやりたい」
「食事の提供で拘束時間が伸びるとローテーションが崩れてしまいます」
「夜はセルフサービスにするか?」
「せる、ふ?」
「ビュッフェスタイルなら分かるか?立食形式」
「ああ、それなら」
「多めには出さず、無くなったらそれまでか、俺が追加を出す事にすれば、作り置きを増やしてテーブルに用意しておくだけで済むだろう」
「それではアンミツ等此方で盛って提供する物が出せなくなりますね」
「夜の部用のメニューを作らんとなー。自分で好きなだけ盛って食べられる食事と飲み物」
「温かい物が出せなくなりませんか?」
温め過ぎると煮詰まってしまうと言う。確かに、十オコンも温めてたら煮物になるよな。飲み物も常温になってしまう事だろう。
「火加減の番をする者を一人か二人付けて、時折見てもらうのはどうだ?」
「皆さんと掛け合ってみます」
「鍋の番はエッチしながらでも出来るって言ってやれ。それと、専用の容器を作らなきゃな…」
「あの寸胴では大き過ぎますしね」
島に帰り、昼食を終えると二階に上がって作業に取り掛かる。テーブルの上に置ける保温容器を作るのだ。実際に使ってるテーブルを用意し、実際に作業するラビアン達にも来てもらった。
先ずは大きさを掴む為、雑木で四角い容器を深さを変えて幾つか作る。大きさだけ合わせて適当に作ったが、テーブルに五つ並べて二十ドン程余裕のある作りとなった。
「縦横はこれで良いかと」
「一番薄いのは食べ物を盛れませんね」
「お皿とか置くのに使えるのです」
「この深い物は…汁物でしょうかねー」
「飲み物でも良さそう」
「「蓋が欲しいです」」「「「あ~」」」
姦しい。直ぐにアイツにしゃぶり付くかと思っていたが、割と真面目に議論してくれた。とっとと終わらせて楽しもうって魂胆だな?その心意気や良し。
大中小の三種類と薄いのを使う事になったので仕上げて行こうか。先ずは三種類の木製容器を《散開》でスカスカにした後ガッチリと表面を固めた。この中に金属の容器を収めれば保温性を増す保温器となる。薄いのはこのまま木製で良いそうだ。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。
辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
洗脳され無理やり暗殺者にされ、無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる