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三日坊主
しおりを挟む夕飯食べて風呂に入り、最近気に入って飲んでいる黒糖アイスティーを持って二階に向かう。
「あ、カケル様」「要望は書き終えました」
先に二階で作業していた二人は作業を終えて外で待っていたようだ。
「待ってたのか?風呂に来たら良かったのに」
「待っていたのは十リットあるかないかですので行き違いになるかと」
待ってやるのも男の甲斐性なんだぜ?立ち話も勿体無いので二階に上がり、要望の書かれた雑木紙に目を通す。先程言ってた小分け用の普通の大きさの寸胴と、シロップ用の小さいお玉に餡子用の浅いお玉。更に、小さいトングに小さいスプーンが新規に追加されていた。
「試しに一つずつ作るから、直しがあったら教えてくれ」
「「はいっ」」
スプーンとトングは雑木を使って直ぐに出来たので二人に一つずつ渡して使用感を見てもらう。
「トングはこれで良いです」
「数が書いて無かったな。幾つ作る?」
「では…五十でお願いします」
「スプーンなんですが、もう少し薄く出来ませんか?」
「それは厚み?それとも容量を減らしたいのか?」
「すみません、容量です」
一口で沢山入った方が良いかと思ったが、小さいスプーンはそうでも無いようだ。聞くと甘味用だそうで、口に運ぶ回数を増やして長く楽しんでもらいたいと。
スプーンのつぼを浅く加工して検品してもらい、合格を得たら小さいお玉と浅いお玉に着手する。浅いお玉はデカいスプーンでOKが出た。小さいお玉は柄の角度で二回やり直して合格となる。
「客が使うのは二百、こっちで使うのは五十で良いか?」
「はい」「取り敢えずは」
足りなければまた作れば良いので小物はこれで増産しよう。練った雑木で型取りし、サラサラの雑木液を流し込んで固め、バリやランナーを切り落とす。
ラビアン達が仕上げをしてくれてる間に寸胴を作る。鉄はまだあるが、鉄貨用にも残しておきたいんだよなぁ。
「鉄をまた集めて来なきゃな~」
「保管庫に沢山入ってますよ?」
「鉄以外も色々とですね」
すっかり忘れていたが、プリキオーネに金属材を納めてもらってたんだった。最初は金銀ミスリルだったのが、鉄や銅も混ざってるモンで、選別するのが三日坊主になっていたのだ。
「…頂けるだけ有難いと思わないとな」
手持ちの鉄材を練り練り伸ばして鉄板にしたら、《威圧》の型に押し付けて、切った貼ったで出来上がり。蓋も一緒にどんどん作る。二十個作って充分となった。
「これだけ揃えば一先ずは充分ですね」
「食材はあるので何時でも作り始められます」
「なら七日後に開業するとして、宣伝しておいてもらおうかな」
いよいよ入浴施設の開業か。俺は服を《収納》し、二人にご褒美をあげた。手持ちの食料を消費しながら、多分二日くらいヤり捲った。
それでも外ではまだ当日で、湯上りの後発組が色っぽい腰付きで部屋に戻る最中であった。チンピクするのを我慢して寝室へ向かい、妻達とメイド達に開業予定と宣伝の依頼を告げる。
「いよいよ」
「宣伝は私達の役目ですね?」
「わたしもしますね!」
シャリー達にサミイが広報活動をしてくれるそうだ。
「貴方様、何も出来無くて申し訳御座いません」
「出来る事をやれば良いだけさ」
リアは手伝える事が無くて頭を下げるが、下げた頭をぽんぽん撫で撫でフォローする。
「カケル様、働き手についてですが」
シャリーが挙手して曰く。ラビアン達が交代で入り、それに各地の女子が施設内で四オコン程手伝いに入るそうだ。ルドエの子達だけで無く、島の兎女児やクリューエルシュタルトからも手伝いが来ると言う。
「そうだ、賃金は外貨の方が良いよな?少し引き出しとかないと…」
「ですね。ヒズラーはともかく、ノースバーのお金は必要ですね」
「鉄貨も要るんだよな…、ジョンに頼むかぁ」
施設の内外で時間を計らねばならないし、小銭集めで動き回る。明日は忙しくなりそうだ。
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