上 下
1,041 / 1,519

名前何だっけ?

しおりを挟む


「ずいぶん可愛い騎龍じゃないか」

「遅いぞ!何処に行っていた!?」

 一階のエントランスにピエルタは居た。一人乗りと言うより、子供用って感じの騎龍を従えて。

「家は別の場所にあるんだよ。それより一人で来たのか?」

「リフレイムと一緒だ!卵から育てたんだぞ!?」

「グギャー」

いっちょ前に威嚇しよる。こんにゃろめ。

「じゃあ少し外に出るか。エンメロイは居るか?」

メイドに聞くと、呼んで来ると言って階段を上がって行った。宰相なのだから接待くらいしておけよ。

「お前、名前何だっけ?何処に行くんだ?」

「カケルだ。王らしい事な何一つして無いが、公の場では様か王を付けろよ?ピエルタ姫」

「そんな面倒臭いの出ないもん!それに姫なんて付けるな!俺の事はピエルタって呼べぃ」

「お待たせしました。早速仲良くなられたようで」

嫌味に聞こえる台詞に《威圧》を込めた視線を飛ばす。

「宰相。客を放ったらかしで何をしていた?」

「え…、歓待の指示を…」

「こんな所に放置してか?客間か庭に通して茶の一杯でも出すのが筋だろう?」

「はい…。申し訳ございません」

「外に出る。少し木を切るぞ」

「はい…」

冷や汗たらたらのエンメロイを無視して外に出る。リフレイムとピエルタも着いて来た。

「カケル、俺お茶なんて飲まないぜ?」

「搾った果物が良いってか?」

「お茶よりはそっちが良い。けどアレじゃ父様と一緒だぜ…」

「隣国からの客に対する対応じゃ無いだろアレは」

「俺は気にしないぜ?」

「お前は良い子だな」

「子供扱いすんな!」

「じゃあ良い女か?」

「男に生まれたかったよ。で、何処行くんだ?」

「ちょいと木を切りにな」

「樵の真似でもすんのかよ?」

「樵にゃ真似出来ん方法で切るんだ。空に上がれ~」

腹這いになったリフレイムにピエルタが騎乗すると、立ち上がり羽ばたいて、砂埃を巻き上げ浮き上がる。中々知能の高い騎龍だな。人と過ごす時間が長いと指示無しで乗せて浮く迄出来るのか。

「浮いてるっ!」

空に上がってリフレイムに並ぶとピエルタが驚いた。

「世の中には飛べる者も居るんだよ。行くぞ~」

飛ぶと言っても遠出する程の距離では無かったのだが、俺を追っ掛けるのが楽しいみたいで少しだけ遠出してしまった。

《感知》で人や魔物が居ないのを確認し、場所を決めると手を挙げてピエルタを止めた。やはり指示無しで止まってる。賢い。

「此処か?」

「あまり遠いとリフレイムが疲れてしまうからな」

「あ、ああ。そうだな。ごめんなリフレイム」

やはり良い子だ。

「ギョアー」

「直ぐ終わるから見てれ」

半径五十ハーンに生えてる木を根こそぎ《収納》すると、丸い空間がぽっかり空いて、茶色い地面が現れた。

「な、何をした!?」

「樵じゃ出来んだろ?」

「何をしたと聞いてんだ!」

「冒険者の秘密だ。まあスキルなんだけどな。降りて休憩すっぞ~」

下草が疎らに生える空間に降り立つと、雑木マットを厚く敷いて胡座をかき、水の棒で桶に水を注いでピエルタに渡してやる。

「こう言うのは飼い主からしか貰わないって聞くしな。飲ましてやれ」

「何だその魔道具…。それにそのふわふわした木…」

ブツブツ言いながら騎龍に水をやるピエルタ。ブシャブシャしながら飲んでるリフレイムはちょっと可愛いかも知れない。此方も休憩しよう。テーブル代わりの板を敷き、コップに水と皿におやつをセットする。

「水と菓子しか無いが、どうぞ」

「魔法の水を飲むのか…」

「普通に飲めるぞ?コレの有る無しでダンジョンでの荷物量が大きく変わるんだ」

「便利だなそれ。こっちのリッツの糞みたいなのは何だ?」

「リッツが何か分からんが、糞は食べないな。甘く煮た豆だよ」

「甘いのか!?」

俺っ娘でも女子。甘いと言う言葉には抗えず、リッツの糞を口に放り込んだ。

「甘~~いっ!」

良い反応だ。ハンバーグ食わせたら何て言うだろうか…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

病弱幼女は最強少女だった

如月花恋
ファンタジー
私は結菜(ゆいな) 一応…9歳なんだけど… 身長が全く伸びないっ!! 自分より年下の子に抜かされた!! ふぇぇん 私の身長伸びてよ~

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

竜焔の騎士

時雨青葉
ファンタジー
―――竜血剣《焔乱舞》。それは、ドラゴンと人間にかつてあった絆の証…… これは、人間とドラゴンの二種族が栄える世界で起こった一つの物語――― 田舎町の孤児院で暮らすキリハはある日、しゃべるぬいぐるみのフールと出会う。 会うなり目を輝かせたフールが取り出したのは―――サイコロ? マイペースな彼についていけないキリハだったが、彼との出会いがキリハの人生を大きく変える。 「フールに、選ばれたのでしょう?」 突然訪ねてきた彼女が告げた言葉の意味とは――!? この世にたった一つの剣を手にした少年が、ドラゴンにも人間にも体当たりで向き合っていく波瀾万丈ストーリー! 天然無自覚の最強剣士が、今ここに爆誕します!!

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...