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名前何だっけ?

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「ずいぶん可愛い騎龍じゃないか」

「遅いぞ!何処に行っていた!?」

 一階のエントランスにピエルタは居た。一人乗りと言うより、子供用って感じの騎龍を従えて。

「家は別の場所にあるんだよ。それより一人で来たのか?」

「リフレイムと一緒だ!卵から育てたんだぞ!?」

「グギャー」

いっちょ前に威嚇しよる。こんにゃろめ。

「じゃあ少し外に出るか。エンメロイは居るか?」

メイドに聞くと、呼んで来ると言って階段を上がって行った。宰相なのだから接待くらいしておけよ。

「お前、名前何だっけ?何処に行くんだ?」

「カケルだ。王らしい事な何一つして無いが、公の場では様か王を付けろよ?ピエルタ姫」

「そんな面倒臭いの出ないもん!それに姫なんて付けるな!俺の事はピエルタって呼べぃ」

「お待たせしました。早速仲良くなられたようで」

嫌味に聞こえる台詞に《威圧》を込めた視線を飛ばす。

「宰相。客を放ったらかしで何をしていた?」

「え…、歓待の指示を…」

「こんな所に放置してか?客間か庭に通して茶の一杯でも出すのが筋だろう?」

「はい…。申し訳ございません」

「外に出る。少し木を切るぞ」

「はい…」

冷や汗たらたらのエンメロイを無視して外に出る。リフレイムとピエルタも着いて来た。

「カケル、俺お茶なんて飲まないぜ?」

「搾った果物が良いってか?」

「お茶よりはそっちが良い。けどアレじゃ父様と一緒だぜ…」

「隣国からの客に対する対応じゃ無いだろアレは」

「俺は気にしないぜ?」

「お前は良い子だな」

「子供扱いすんな!」

「じゃあ良い女か?」

「男に生まれたかったよ。で、何処行くんだ?」

「ちょいと木を切りにな」

「樵の真似でもすんのかよ?」

「樵にゃ真似出来ん方法で切るんだ。空に上がれ~」

腹這いになったリフレイムにピエルタが騎乗すると、立ち上がり羽ばたいて、砂埃を巻き上げ浮き上がる。中々知能の高い騎龍だな。人と過ごす時間が長いと指示無しで乗せて浮く迄出来るのか。

「浮いてるっ!」

空に上がってリフレイムに並ぶとピエルタが驚いた。

「世の中には飛べる者も居るんだよ。行くぞ~」

飛ぶと言っても遠出する程の距離では無かったのだが、俺を追っ掛けるのが楽しいみたいで少しだけ遠出してしまった。

《感知》で人や魔物が居ないのを確認し、場所を決めると手を挙げてピエルタを止めた。やはり指示無しで止まってる。賢い。

「此処か?」

「あまり遠いとリフレイムが疲れてしまうからな」

「あ、ああ。そうだな。ごめんなリフレイム」

やはり良い子だ。

「ギョアー」

「直ぐ終わるから見てれ」

半径五十ハーンに生えてる木を根こそぎ《収納》すると、丸い空間がぽっかり空いて、茶色い地面が現れた。

「な、何をした!?」

「樵じゃ出来んだろ?」

「何をしたと聞いてんだ!」

「冒険者の秘密だ。まあスキルなんだけどな。降りて休憩すっぞ~」

下草が疎らに生える空間に降り立つと、雑木マットを厚く敷いて胡座をかき、水の棒で桶に水を注いでピエルタに渡してやる。

「こう言うのは飼い主からしか貰わないって聞くしな。飲ましてやれ」

「何だその魔道具…。それにそのふわふわした木…」

ブツブツ言いながら騎龍に水をやるピエルタ。ブシャブシャしながら飲んでるリフレイムはちょっと可愛いかも知れない。此方も休憩しよう。テーブル代わりの板を敷き、コップに水と皿におやつをセットする。

「水と菓子しか無いが、どうぞ」

「魔法の水を飲むのか…」

「普通に飲めるぞ?コレの有る無しでダンジョンでの荷物量が大きく変わるんだ」

「便利だなそれ。こっちのリッツの糞みたいなのは何だ?」

「リッツが何か分からんが、糞は食べないな。甘く煮た豆だよ」

「甘いのか!?」

俺っ娘でも女子。甘いと言う言葉には抗えず、リッツの糞を口に放り込んだ。

「甘~~いっ!」

良い反応だ。ハンバーグ食わせたら何て言うだろうか…。
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