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雨天決行

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「皆様、湯浴みの支度が出来ております」

夕食を頂き、客間でまったり持ち込んだお茶等飲んでいると、ノックと共にメイドが現れ湯浴みの時間を告げる。

「お風呂、どする?」

「盥のお湯で体を拭くだけなんだよな?」

「ん」

「それなら、夫人とメイドを連れて施設に行って来なよ。使用感も聞いておきたいしな」

「良いけど、良いの?」

「何が?」

「真似されちゃう」

「他国で真似られた所で俺達の財布に響かんよ。それに建物作るのに何年掛かるか」

「そだね」

「カケルさんはご一緒しないのですかぁ?」

「俺は島の風呂に行くよ。流石にコッチには呼べないからな」

「旦那様なら何食わぬ顔で来そうなのに」

  「明日は雨ですね」
「雨天決行だぞ?晴れるのを願え」

そんな訳で、夫人とメイド一同に、女衛兵迄が客間に集まった。皆イゼッタの説明を聞いて不安と嬉しさが混ざりあってる。
雑木タオルを大小リュネに渡しとく。

「済まないがよろしく頼むよ」

「はぁい」

「浴場に向かうのであればホルスト車を用意させなければ」

「ふふ、大丈夫です。皆さん固まってくださいねぇ~。行きますよぉ~」

一同の姿がフッと消える。リュネマジパナイ。俺も座標を固定して島へと《転移》した。

「カケル様、お一人ですか?」

「風呂入りに来たんだ」

複合施設の傍に到着すると、食堂からテイカが飛び出して来た。

「カケルーおかえりなの~」

テイカの後ろをすり抜けて飛び込んで来るカラクレナイを抱き止める。

「おちんぽ無いと変な感じなの」

「偶にはお休みしたい日もあるんだよ」

今日一日、アイツとペニスケはお休みだったのだ。ペニスケは仕舞われ、アイツは萎えさせて装備の隙間に収められ、腰に皮を巻いていた。何時もの姿だったならもっと門兵が警戒していた事だろうな。
風呂に入って温まり、二階で福利厚生して伯爵邸の客間に戻る。女達は長湯を楽しんでるみたいでまだ帰って来てない様子。ソファーに体を預けて目を閉じ、体力の消耗を極限迄抑える姿勢を取る。

ウトウトとしているとノックがあり、家令と伯爵が入って来た。

「カケル殿だけか。家内やメイド等が居らなんのだが、イゼッタ達も居らんのだな」

「女達は私が開業する予定の入浴施設に行きましたよ」

「こんな時間にか?」

「リュネの《転移》で一瞬です」

「さ、流石は龍の方…だな。んっ、それとカケル殿、公式の場でもあるまいし、口調を戻して構わんぞ?冒険者なのに丁寧な言葉遣いなのは立派ではあるがな」

「ありがとうございます。では少しだけ」

「所でだ。その入浴施設とやらには儂は連れて行ってはくれぬのか?」

「彼処は女性専用なんですよ。なので俺も行けません」

「男用のも欲しいのう」

「公共浴場の貴族版、みたいなのを作られてはどうです?若しくは今ある公共浴場を貴族でも入れるように建て増しするか」

「ふむ…。風呂の維持と移動の手間を秤に掛ける、か」

『カケルさぁん、人の子を避けてくださいなぁ~』

リュネからの《念話》が来たのを伝えて部屋の隅に退避すると、良い匂いと共に女達が現れた。

「うおっ、ミシュルキー、戻ったか」

「旦那様!聞いて!?凄いのよ!?」

余程楽しかったのだろう。夫人がはしゃいで伯爵に飛び付き、タジタジの伯爵を引っ張ってっちゃった。メイドや女衛兵達も満足気な顔で客間を出て行き、最後に家令の男が頭を下げて部屋を出た。

「満足してもらえたみたいだね」

「転移でキャーキャー」

「お風呂を見てキャーキャー、でした」

  「効能を聞いて、更に…」
「人の子にとって、長く生きるのは憧れなのでしょうねぇ」

彼女等にとってはちょっと違うんだけどな。
暫くして再びメイドがやって来て、客室へ連れて来てもらい、寝た。明日は朝から移動だってから早起きしないとな。



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