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興味が失せた
しおりを挟む土産物の野菜と、その種や苗について女達からの質問攻めに遭う。まあ、野菜自体は基本的にスープの具なので質問の多くは種苗の植え方育て方だ。レッグルートのように水植えの物は殆ど無いが、日当たりや水捌けを気にする物は多い。今更知った事ではあるのだが、島では四ヶ所のテスト畑で試作していたそうなのだ。リームの魔力を宛にし過ぎず、切磋琢磨する皆にちょっと感動。
「沼地迄ちょっと遠いですがやってみますね」
俺と少年隊をミーネズブートキャンプで泥だらけにした沼地は五ヶ所目の畑になるようだ。頑張っておいで。
暫くワチャワチャした後は、土産物を倉庫に仕舞う組と、新たな種苗を植える組、そして見慣れぬ野菜を試作する組に分かれた。ネーヴェとカラクレナイは食べる組、だって。バジャイはまだ寝てる。
板を片付け火の鉄板と鉄板を用意する。
「カケル、何作るの?」「肉、やく?」「食べるの?」
「肉じゃ無いけど、屋台で売ってたヤツを作るんだ」
「「「ふ~~ん」」」
肉じゃ無いので興味が失せたな?
一本確保しておいたレッグルートを俎に乗せ、考える。屋台では皮を剥いてざく切りにしたのを鉄板で焼いてたが、焼いてない面もあったんだよな。そこまで気にする事でも無いが、出来れば全面パリパリにしたい。それに薄切りにしたらって考えもある。
レッグルートは子供の脚程の大きさで、真ん中辺りでくの字に曲がっているのが特徴的な根菜だ。折れてる所で切り離し、丁寧にナイフで皮を剥いたら《収納》で薄く仕舞う。ある程度削いだら反対側、横、ひっくり返した反対側を削いで四角い芯を残した。これを一ドン程の厚みで切り、薄切りと角切りの二種類の食材となった。
先ずは角切りから焼いてみる。屋台で見た感じ、鉄板に油も付けず、そのまま焼いてたから問題無いだろう。鉄板に広い面を乗せると、ジューっと焼ける音がして、そのうち仄かに甘く匂って来る。
「「「カケル!」」」
さっき迄まるで興味の無かった三人が匂いに釣られて鉄板に集まって来た。
「まだ?」「もういいの?」「もう、いい」
「まだだよ。全面が焼ける迄待ってなされ」
耳の良いラビアンは鼻も良いのか、試作の面子もチラチラ此方を伺っているようだ。鉄板一つじゃ焼き切れないのでもう一セット用意し、此方は薄切りを焼く…のならもう一工夫。焼いた鉄板二枚に薄切りを挟んで焼く。この方が早く焼けるもんな。ジューって音と共に、角切りよりも強い匂いが放たれる。
「「「まだ?」」なの?」
音がしなくなったので鉄板を上げると、こんがり茶色くなった煎餅が湯気を上げた。熱いので皿に取って三人にお供えする。
パリパリパリパリカリカリむぐむぐ…。
何か言えよ。角切りをひっくり返しながら俺も薄切りを試食する。両面がカリカリで、糖がカラメル化してる感じ。そこそこ甘いポテチ風。ゆっくり火を通せばもっと甘くなるのかな?
「んまい」「もっとなの」「はよ」
ゆっくり火を通す暇は与えてくれそうに無い。角切りを焼きながらパリパリを振舞った。
「お腹に溜まる」
「私はもっと食べていい」「カララも食べていいの」
龍はともかく、人の子にとっては腹持ちの良い食べ物のようだ。芋っぽいし、分かる気がする。
「カケル様、戻りました」
「お疲れさん」
「なんか美味しそうな匂いがする~」「カララ様、何食べてんの?」「いーなー」
荷物を仕舞いに行っていた女達が帰って来る。女児三人がカララ達の食べてるパリパリを見て、俺を見る。上目遣いでうるうるさせて、可愛いなぁ~。
「焼いてやるから座ってなされ」
「「「はーーーい」」」
「カケル様、夕方迄バルタリンドで施設のドア等作りたいと思います」
「此奴等の分を焼いたら俺も行くから一緒に行こうか」
「支度をして来ます」
テイカは建具作りをするようだ。材料も要るだろうし、俺も着いてく事にする。
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