1,011 / 1,519
王の仇
しおりを挟む「カケル様、屋根を」
「騎士達も元に戻してくれ」
話し合いは終わったようだ。今屋根をくっ付けたら飛んで帰れないんだが、まあ良いか。
「分かった。聞いたな?これで抜剣したら戦争だかんな?」
金属鎧共に声を掛け、《結界》を二人に纏わせる。フラフラと立ち上がるのを他所目に屋根をくっ付けた。流石に此処で斬り掛かって来る馬鹿は居ないようだな。作業の為浮いてるから届かないのもあるが。
「貴殿は、飛べるのか…」
「この世には数人居るぞ?俺の身内が殆どだが、それ以外で飛べる奴には気を付けろ。敵対すると国が滅ぶ」
「飛べるだけで、か?」
「ドラゴンが人に化けてる可能性があるんだ。何もしなけりゃ何もされない。引き込んで手足に…なんて、国が焼け野原になるだけだからな」
メイド二人に連れられて、城の外へ向かう。金属鎧が睨んでるみたいだが、バイザー越しでは分からない。階段を降りて更に進むと、静かな廊下に女の声が響いた。
「貴様等が賊かああ!?」
「おやおや、元気なお嬢さんだ」
「カケル様、物語の悪役みたいですよ?」
「成る可く優しく応えたつもりだったんだがなぁ。俺はカケル、コッチはエンメロイ。お嬢さんは何方様だい?」
「俺は王国第八王女!ピエルタ・ブラマハーンだ!」
「お嬢様!そのような言葉遣いは!その前にそのような者と口を聞いては!?」
「そうか。暇潰しにでもカケラントに遊びに来ると良い。これからは仲良くするってからな」
ピエルタちゃんの後ろから駆け付けて来るお婆ちゃんメイドを無視して話し掛ける。金髪ショートの天パがモコモコ。絵画の天使みたいな俺っ子だ。ドレス姿に抜き身のショートソードで武装してやる気満々マンだな。ちっちゃくて可愛い。
「カ、カケラントって何処だよ!?知らねえぞそんな国!」
「お嬢様っ!」
「元帝国だよ。成り行きで俺が今の王って感じ?」
「名実共に王ですよ。王として来たのですから」
「…だそうだ」
「おと、王の仇!」
「生きとるわい」
俺の言葉を聞かず剣を振り回して来るピエルタちゃん。俺の太腿に剣が当たってびっくりしてる。斬るつもりでやってんだろ?
「何で避けないんだよ!」
「斬れねーし。良い服なんだぜ?」
元皇帝の服だし、良い物だよな多分。
「そ…、そうかよ…。ふぅ」
「お父様にちゃんと断ってから遊びにおいで。じゃあね、ピエルタ姫」
ピエルタちゃんをお婆ちゃんメイドに渡し、メイドに連れられ城を出る。特にこれと言ったアクシデントも無く城の外に出られたが、折角だし観光でもして行くか。
「エンメロイ、宿を取って着替えたいんだが」
「他国に長居は怪しまれますよ?」
「日帰りはするけどさ、お土産買いたいし~」
「カケル様が帰らないと私も帰れないんですから。皆を心配させない為にも、早く買って帰りましょう」
「分かったよ」
「そうでないと、私がカケル様を独り占めしてると思われ兼ねません」
だからUFOの中で寝てても跨って来なかったのか。まあ、するならヤリ部屋の方が良いし、大通りの角地にある宿に休憩で入り、着替えを済ませた。この国もまた通貨のデザインが違うらしく、ギルド証で払えて助かった。
「ギルドに寄って金降ろしてからだな」
「帝国通貨も使えますよ?」
「デザイン違うのに?」
「重さを大陸全土で統一しているのですよ。数年に一度、新貨の計り直しをしています」
「へー。ブフリムの臭い小銭も?」
「元々はアレを自国の貨幣に鋳直すのが目的だったそうで、昔は重さで両替してからでないと使えなかったのですよ?」
「大きさマチマチだもんな、アレ」
何処の街でも大体壁の入口寄りにあるギルドに入り、事務処理と小銭を降ろして買い物へ。受付嬢に聞いた話だと、壁の下が大通りだそうで、内外を繋ぐのは唯の通りだそうな。この街には四つの壁があるので、六つの環状大通りがあるって事になる。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
俺と幼女とエクスカリバー
鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。
見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。
最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!?
しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!?
剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~
BIRD
ファンタジー
【転生者モチ編あらすじ】
異世界を再現したテーマパーク・プルミエタウンで働いていた兼業漫画家の俺。
原稿を仕上げた後、床で寝落ちた相方をベッドに引きずり上げて一緒に眠っていたら、本物の異世界に転移してしまった。
初めての異世界転移で容姿が変わり、日本での名前と姿は記憶から消えている。
転移先は前世で暮らした世界で、俺と相方の前世は双子だった。
前世の記憶は無いのに、時折感じる不安と哀しみ。
相方は眠っているだけなのに、何故か毎晩生存確認してしまう。
その原因は、相方の前世にあるような?
「ニンゲン」によって一度滅びた世界。
二足歩行の猫たちが文明を築いている時代。
それを見守る千年の寿命をもつ「世界樹の民」。
双子の勇者の転生者たちの物語です。
現世は親友、前世は双子の兄弟、2人の関係の変化と、異世界生活を書きました。
画像は作者が遊んでいるネトゲで作成したキャラや、石垣島の風景を使ったりしています。
AI生成した画像も合成に使うことがあります。
編集ソフトは全てフォトショップ使用です。
得られるスコア収益は「島猫たちのエピソード」と同じく、保護猫たちのために使わせて頂きます。
2024.4.19 モチ編スタート
5.14 モチ編完結。
5.15 イオ編スタート。
5.31 イオ編完結。
8.1 ファンタジー大賞エントリーに伴い、加筆開始
8.21 前世編開始
9.14 前世編完結
9.15 イオ視点のエピソード開始
9.20 イオ視点のエピソード完結
9.21 翔が書いた物語開始
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
お兄様のためならば、手段を選んでいられません!
山下真響
ファンタジー
伯爵令嬢のティラミスは実兄で病弱の美青年カカオを愛している。「お兄様のお相手(男性)は私が探します。お兄様を幸せするのはこの私!」暴走する妹を止められる人は誰もいない。
★魔力が出てきます。
★よくある中世ヨーロッパ風の世界観で冒険者や魔物も出てきます。
★BL要素はライトすぎるのでタグはつけていません。
★いずれまともな恋愛も出てくる予定です。どうぞ気長にお待ちください。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる