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サクサクよりホロホロ

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「話には聞いていたけれど、コート以外は中々の物ね」

 話を切り出す夫人が簡易コンロでお湯を沸かそうとするのを手で制し、鉄板を差し出した。

「上着は直し中なんですよ。お近付きの印にこれをどうぞ」

「あら、三千ヤンもするのに、良いの?」

「元手を聞いたら驚きますよ?それと、此方もつまらない物ですが」

「へぇ、あらお肉」

雑木紙に包まれた肉を見て、じっと見て、さらに見てる。

「フィル、大事に食べると良いわよ」

「何のお肉かしら…。南方のアングラーにも似てるけど赤身だし。カケル様、これは?」

「レッサードラゴンですよ」

アングラーこそ何ぞや。肉の正体を告げると俄にソワソワし始めた。王族ですら滅多に食卓に上らん食材だしな。

「あら…。それは、大事に頂かないといけないわね。ちょっと待ってらして」

俺達を置いて肉持って出てっちゃった。メッツ君がおねむなので、マットで包んで浮かせてゆらゆらさせてやろう。

「カケル様は座って」

「主人より先に座るのは流石に」

「あら、カケル様はマナーが出来てるのね?リア様達に仕込まれたのかしら」

「冒険者の前は公務の末端で働いていたのですよ」

前世の、だけどな。ポットのお湯がコトコト鳴り出した頃、夫人がメイドを連れて戻って来た。

「カケル様、あのような素晴らしい物を頂き、誠にありがとうございます。エツリ、お茶をお出しして」「はい奥様」

四人掛けの丸テーブルに勧められ、夫人とママ上殿の椅子を引いてやる。エージャは座らずママ上殿の後ろだ。

「エージャ、椅子が空いてるわ。カケル様を待たせたらなりませんよ」

「…では、お言葉に甘えて」

夫人の提案に、ママ上殿が頷いてエージャが折れる。椅子を引いてやり、俺も座る。少ししてメイドの淹れたお茶が振舞われ、焼き菓子と共にいただきます。マタル粉に黒糖を加え、油を繋ぎにして焼いてあるようだ。サクサクよりホロホロに近く、お茶に合うな。

「初めはね、どんな人が彼処を買うのかって興味だけだったのよ。メリダの話を信用して無い訳じゃ無かったのだけど」

口を湿らせた夫人が口を開く。

「魔石で買うと聞いて調べさせたらレッサードラゴンでしょ?けどあのお肉を見て偽りじゃ無いと確信出来たわ。カケル様はだいぶお強いのね」

「タマゲル以上、ドラゴン以下って所ですかね」

「ふふっ、それは殆どの人に当て嵌りますよ。それに、ドラゴンを狩れないと魔石もお肉も他に入れられないでしょう?」

「フィル、ドラゴンはレッサーとは違うわよ?」

「レッサーもドラゴン…よね?頭がこんがらがるわ」

ママ上殿の言葉に混乱してるな。助け舟を出してやるか。

「別物ですね。レッサードラゴンは一生に一度見ないじゃないですか?ドラゴンは偶に街に来ます」

「え?」

「人化して買い物したり、冒険者活動して遊んでますよ」

「ま、カケル様って、まさか…?」

益々混乱したようだ。

「ちゃんと人ですよ」

「お妾さんがドラゴンなの」

「は?え?待って?」

ママ上殿が混乱を重複させる。

「僭越ながら、カケル様は神様です」

「流石にそれは、言い過ぎよね?」

正気に戻ったようだ。

「いえ、私の傷付いた肉体を元以上の姿に戻し、女としての悦びを与えてくださいました」

「エージャは元戦闘奴隷でね?家で引き取ったのよ。以前行軍があったでしょう?」

「あの時の…。ドラゴンが空に浮かんだと傭兵達が言ってたけど、もしや…」

「俺の可愛い妾ですね」

「それは、それは…。家の人は渋い顔をしてたけど、これは断れないわね」

「断られても更地になんてしませんよ」

冷や汗垂らす夫人をフォローしとこ。

「けどねぇ、断られると困るのよ」

「それは?」

「カケル様が彼処にお風呂のある施設を建てるのだけどね?」

そう言うと椅子を俺に寄せ、ペニスケを抜き放つ。

「コレ、頂けるのよ」

「…………」

ゴクリ。夫人の喉が鳴った。背中側で見えないだろうがメイドも居るんだから早いトコ仕舞ってください。



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